SpotifyのCEOが立ち上げた新会社、94億円を調達

2023年7月6日
全体に公開

2018年、Spotify(スポティファイ)の創業者兼CEOのダニエル・エク(Daniel Ek)氏と、連続起業家のヒャルマー・ニルソンネ(Hjalmar Nilsonne)氏が、スウェーデンでとあるスタートアップを共同創業しました。

それは、予防医療テックのNeko Health(ネコ・ヘルス)」です。

今年2月に正式リリースをしたところ、あまりにも需要があり、現在1万人以上がウェイティングリストで待機しているなど、高い期待を寄せています。

☕️coffee break

昨日、Neko Healthは初の外部資金調達として、シリーズAで欧州の大手VC、Lakestar (レイクスター)、Atomico(アトミコ)をリード投資家に、6,000万ユーロ(約94億円)を調達したと発表しました。

この資金調達を機に、スウェーデンだけでなく、ヨーロッパ全土への事業拡大に向けて備えるようです。

昨今、世界的に人件費・コスト高騰などにより、医療費の高騰が続いています。

Neko Healthは医療費の高騰に歯止めをかけるべく、気軽に予防医療を受けられるシステムを作ることで、病気の早期発見とより多くの人が医療サービスを受けられる世界を目指しています。

医療費だけではありません。スウェーデンは世界的にも医療施設や技術の水準は高いものの、診察予約が取れないことが大きな課題になっています。

救急外来でも、重症者以外は3~5時間待たされるなど、気軽に診察を受けることはできません。

高齢化社会では特に病気の早期の発見が重要です。かくしてNeko Healthは、全身ボディスキャンの予防医療を普及させようとしているようです。

🍪もっとくわしく

Neko Healthのボディスキャンは、1回あたり250ユーロ(約39,000円)で、以下のような流れになっています。

Neko Health プレスキット

医師による簡単な診察と、10分ほどの全身ボディスキャンを実施

70以上のセンサーが5,000満点のデータを収集し、0.2mmの皮膚の変化を検出

皮膚疾患、皮膚がん、心血管疾患、糖尿病といった代謝症候群(主に生活習慣病が原因)を中心とした疾患を早期発見

患者はアプリで健康データを確認しながら、日常生活などを改善

サービス動画:https://youtu.be/76gF-6WEszc

今年2月にスウェーデン・ストックホルムにてサービスを開始したところ、2時間も経たないうちに予約枠が全て埋まりました。

すでに1000件以上の初回スキャンを行っているようですが、そのうち約80%が翌年の予約を前払いしたそうです。

現在では1万人以上がボディスキャンを求めてウェイティングリストに登録するなど、驚くほど強い需要があることがうかがえます。

もっとも、メディア露出はこれまで極めて慎重でした。実は創業から5年間は、秘密裏に研究開発を行っています。

スタートアップが病気の早期発見に取り組んでいると言うと、血液1滴であらゆる病気の早期発見できると謳い、史上最大の詐欺会社とも呼ばれる事件になった米Theranosが想起されてしまうわけですね。

参考:【深刻】医療ベンチャーの成長を阻む「セラノス事件」の後遺症

満を持して、2月にサービスを開始した際も、Spotifyの現CEOと、連続起業家による創業のため、実績以上に報道をされることを恐れて、海外メディアのインタビューは拒否していたほど。

なので、Neko Healthはかなり経営の透明性にこだわっている上、欧州の大手VC2社を株主、取締役会にも迎え入れたわけです。なお、取締役会に加わった1人は、Skypeの共同創業者です。

今回の資金調達目的は、まずイギリス・ロンドンへの進出に向けて動くなど、欧州全土への事業拡大が第一。

ですが、引き続き研究開発・臨床研究にも積極投資をしていくようです。皮膚画像を確認するためだけに皮膚科医を雇うなど、看護師、医師、研究者まで技術開発に関わっています。

サムネイル画像:Unsplash/Hush Naidoo Jade Photography

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