元JAXAの若田光一氏が参画するスタートアップ「Axiom Space」とは

2024年4月9日
全体に公開

3月末をもってJAXAを退職した若田光一氏が、米「Axiom Space(アクシオム・スペース)」に参画することが発表されました

今回は、最も活躍した日本人宇宙飛行士の1人である若田氏が参画するAxiom Spaceは、一体どのようなスタートアップなのか、紹介します。

サムネイル画像:©︎Axiom Space

☕️coffee break

Axiom Spaceは、世界初の民間宇宙ステーション「Axiom Station」構築を目指しているスタートアップです。

現在、国際宇宙ステーション(ISS)はアメリカ・ロシア・欧州・日本・カナダ政府主導で運営されていますが、2030年に運用を終了することが決定しています。

ISSは1998年に宇宙での建設が始まり、2011年に完成して以来、3000件以上の研究プロジェクトや宇宙飛行士の滞在を支えてきました。

しかし、構造やシステムの老朽化により、管理コストが増加し、予算制約のある各国の宇宙機関にとって運用の継続が困難になったのです。

この問題を解決すべく、Axiom Spaceは2026年までに宇宙ステーション「Axiom Station」を打ち上げることを予定しています。民間運営になると、無重力・極限環境での医療・材料科学の研究・実験など、さまざまな活動が可能になるため、大きな期待が寄せられています。

この野心的なプロジェクトを実現すべく、招聘したのが、3月末にJAXA(宇宙航空研究開発機構)を60歳で定年退職した宇宙飛行士の若田光一氏です。

若田氏は計5回・通算504日と、日本人として最多・最長の宇宙滞在記録を有しており、ISSの船長として、ISS・「きぼう」日本実験棟の建設・運用に携わりました。

こうした実績を受け、Axiom Spaceはアジア太平洋地域で事業拡大において、若田氏を宇宙飛行士兼最高技術責任者に任命したのです。

「若田光一 宇宙飛行士」

©︎JAXA

宇宙は過酷な環境であるがゆえに、宇宙飛行士にはずば抜けた精神力と体力が求められますが、個々の状況や経験により、活動を続けることが可能です。

ゆえに、民間宇宙ステーションの運用、民間宇宙飛行士の育成を目指すAxiom Spaceにとって、若田氏は将来の民間宇宙飛行士の指揮官候補として、この上なく適任だったのです。

🍪もっとくわしく

そもそもAxiom Spaceはどのような会社なのでしょうか。

同社は2016年に宇宙ビジネス・宇宙開発のベテラン2人により、「宇宙を繁栄させ、全ての場所で全ての人類に恩恵をあたえる」をビジョンに創業されました。

・会長:カム・ガファリン

1994年にStinger Ghaffarian Technologiesを設立し、NASAで2番目に大きなエンジニアリングサービス請負業者として、国際宇宙ステーション(ISS)の運用と宇宙飛行士の訓練をサポート。その後もロッキード・マーティンや、フォード・エアロスペースなどで宇宙事業に関与していました。

・CEO:マイケル・T・サフレディーニ

NASAで30年以上のキャリア。2005〜2015 年までは国際宇宙ステーション(ISS)・ プログラムマネージャーとして、15カ国のISS計画を組立完了から研究・商業利用へと導きました。

主な事業内容は以下のようになっています。

・民間宇宙ステーション「Axiom Station」の建設

・NASA/民間の宇宙飛行士育成

・民間人向け宇宙旅行ミッションの企画・運営

・次世代宇宙服「AxEMU」の開発

・宇宙環境での共同研究

同社の強みは、経験豊富な経営陣や専門家が集まっていることで、NASAをはじめ、さまざま企業などと強力なパートナーシップを結んでいることです。

昨年8月時点で、民間宇宙ステーションや宇宙服開発において、NASAと12.6億ドルの契約を結んでいることを筆頭に、顧客との契約額は計22億ドルを突破しており、ユニコーン企業にふさわしい実績を積み上げています(評価額は非開示ですが10億ドルは超えているとのこと)。

©︎Axiom Space

また、イタリアのプラダと共同開発している宇宙服、船外活動用の宇宙服は、2025年にNASAが予定している月面着陸ミッション「Artemis III」において使用される予定です。

このミッションにおいては、世界初の女性宇宙飛行士による月面着陸が計画されているため、これまでと同じような耐久性でありながら、より優れた機能性・デザイン性が求められていました。

「船外活動用の宇宙服を着用して宇宙センターで試験をしている様子」

©︎Axiom Space

このようにAxiom Spaceは、宇宙開発をさらに加速させるべく、全方位での事業展開を行っています。

同社の挑戦は、これからの宇宙開発における民間企業の台頭を象徴するものと言えるでしょう。

そうした中で、若田光一氏の参画が、世界初の民間宇宙ステーションの計画を大きく前進させることに期待が膨らみます。

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