4月の国内スタートアップ調達額トップ5はサステナビリティ一色

2024年4月30日
全体に公開

4月、日本では5社のスタートアップが、大手企業・金融機関などから大型の資金調達を実施したことを発表しました。

調達額トップのSpiberは、これまでに数百億円規模の資金調達を行ってきましたが、海外での生産・販売の加速を目的にさらに100億円超の資金調達を実施。

その他の4社もサステナビリティ(持続可能性)をテーマに事業展開していることが共通点として挙げられます。

サムネイル画像:Unsplash/Francesco Gallarotti

☕️coffee break

1. Spiber(スパイバー):構造タンパク質「Brewed Protein」素材の開発

  • 資金調達額:100億円超
  • 投資家:兼松、小松マテーレ、関西ペイント、既存株主など

ここに注目👉これまで年産数トン規模の国内工場のみでしたが、2021年に最大500トンの生産が可能なタイの工場を立ち上げ、現在本格的に量産体制に移行しています。加えて、米国でArcher Daniels Midland社と共同で、年産数千トン規模の工場稼働を進めています。

また、バイオスフィア・サーキュレーション(生物圏循環)システムの研究開発プロジェクトには、新たにグッチ、バレンシアガなどを展開するKeringも参画するなど、環境負荷の低減に注目が集まっていることがわかります。

今回の資金調達を機に、さらに量産体制を拡大し、海外での販売を加速させます。

2.  SANU(サヌ):セカンドホームのサブスクサービス

  • 資金調達額:70億円(アセットファイナンス、コーポレートローン、スタートアップ向けファイナンスなど)
  • 参加金融機関:商工組合中央金庫、みずほ銀行、りそな銀行など

ここに注目👉自然豊かな地域に月額5.5万円からのサブスクでセカンドホームを所有できるサービスを、個人・法人に展開しています。

2月には新たに共同オーナー型のセカンドホームサービスをリリースしたところ、わずか2.5時間で全200口が完売に。

現在は16拠点ですが、2025年までに全国30拠点に拡大し、国内最大拠点数の会員制別荘事業者になる見込みです。

3. enechain(エネチェイン):エネルギー卸取引マーケットプレイス

  • シリーズB
  • 資金調達額:60億円(借入含む)
  • 投資家:DCMベンチャーズ、Minerva Growth Partners、JPインベストメント、米Soros Capital Managementなど

ここに注目👉2016年に電力、17年にガス小売の自由化がされて以来、新電力会社が台頭するようになりました。しかし、電力市場は価格変動が大きく、各社はリスクの低減・経営の安定が課題となっています。

enechainは取引マーケットプレイスで取引コストの削減だけでなく、リスク管理、価格・エネルギー関連情報の分析サービスまで、エネルギー市場のインフラとなるべく、事業展開しています。

著名投資家のジョージ・ソロス氏のファミリーオフィス、VC・金融機関に加え、電力・ガス会社・商社などから資金調達をして、採用・開発強化に向けて積極投資を行います。

4. シェアリングエネルギー:分散型エネルギーシステム

  • シリーズBエクステンションラウンド
  • 資金調達額:40億円(融資含む)
  • 投資家:東芝テック、三菱UFJ信託銀行、K4 Ventures(関西電力)、GMO Venture Partnersなど11社、金融機関4社

ここに注目👉2020年にじげんが買収したアイアンドシー・クルーズの創業者、上村一行氏が創業。太陽光発電のPPA(電力販売契約)事業者として、初期費用無料で太陽光発電システムを自宅に設置できる「シェア電気」を提供しています。

2018年にサービスをリリースして以来、1600社以上と提携して、全国展開することで、契約申し込み数は17,000件を突破しています(2024年3月時点)

この実績、ノウハウをもとに(提携先企業が自社ブランドとして展開できる)ホワイトラベルでの展開や、ESG経営を推進する大手企業の法人契約も加速しています。

5. Ubie(ユビー):AI症状検索エンジン「ユビー」

  • 資金調達額:35億円(融資含む)
  • 投資家:三井住友信託銀行、JA三井リース、三菱UFJ銀行、みずほ銀行

ここに注目👉月間約1000万人が利用するAI症状検索エンジン「ユビー」を中心に、医療現場の業務効率化をサポートする「ユビーメディカルナビ」などを提供しています。

4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用されたことで、「ユビーメディカルナビ」には追い風が。患者の来院前の症状チェックから、問診、カルテ作成・転記における業務効率化を支援することから、すでに1700以上の医療機関が導入しています。

2022年には米国拠点も設立して、製薬企業向けにデータプラットフォームを提供するなど、国内外の医療業界の課題解決を目指します。

3月の調達額トップ5はこちら

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