AIで医療相談は可能?比較検証で驚く結果に
こちらのトピックス“生成AI最前線「IKIGAI lab.」”は、学び合うことを目的としたオンラインビジネスコミュニティ「OUTPUT CAMP meets AI」のメンバーで運営しています。
今日は老若男女にとって身近な「生成AIと医療相談」について比較検証結果を解説しようと思います。
有用ツール、便利ツールも紹介していきますのでぜひ最後までお付き合いください。
# 背景
現場で働く医師&生成AIに携わるものとして、生成AI×医療はかなり意識して情報を追い、導入を進めています。
というのも、生成AIが出現して以降、すべての分野で専門知識や専門技術に対してのアクセスが容易になりました。
結果、「専門家」と「AIを使う非専門家」の距離が急速に縮まってきています。
医療分野においても大量の医療データを学習しているため、ユーザーの症状や疾患に関する情報を分析することができます。
これにより、症状や疾患に関する一般的な情報を提供するだけでなく、個別の状態に合わせてたパーソナライズされたアドバイスや医療相談も理論上可能になりました。
しかし一方で、生成AIを利用した医療相談には注意が必要です。
生成AIは学習データに基づいて情報を提供するため、その学習データの品質や適用範囲によって正確性が左右される可能性があります。
また、ハルシネーション(幻覚)と呼ばれる情報の出力についても十分検証が必要でしょう。
そのため、生成AIの提供する情報を参考にする際には、医師や専門家の意見を優先するべきです。
とはいえ、気軽に医療相談したい、医師には聞きにくいことも聞いてみたい。そんな思いがあることも事実です。
そこで、日本で利用可能な主な生成AIは、果たしてどこまで対応できるのか?検証してみました。
# やってみた
私は普段循環器内科専門医として仕事をしていますので、今回は私の専門領域でもある「胸痛」に対して、どのようなアプローチを取ってくるのか、検証してみました。
1. ChatGPT
まずは生成AIの王者から。GPT-3.5とGPT-4 turboをそれぞれ比較しています。
結果はこちら。
GPT-3.5ですと最近ポリシーが変更になったためか、回答すらしてもらえず。ただ「お大事に」と寄り添う姿勢は見せてくれていますね。
GPT-4になるとステップを提示し、会話を継続することで続きを書いてくれそうです。ステップバイステップで回答を得るタイプはChatGPTらしさが出ていますね。
2. Google Bard(Gemini)
天下の検索エンジンを持つGoogleのAIはどうでしょうか?
こちらもBardらしさが出ています。Bardは対話の中で回答を得るというより、検索システムのように一発回答を狙って全て書いてくることが多い印象です。
ユーザーに寄り添った上で、鑑別診断まで記載してきました。ただ、重篤な病気から順に記載しているだけで、この情報だけを与えられると不安になりますよね。
3. Claude2
こちらはAnthropic社のClaudeですが、Bardと似たような出力になりました。しかし.
かなり抽象的で、比較するとBardの回答の方が詳細ですね。
4. Perplexity AI
こちらは、Perplexity AIといって、大手3社とはまた別の生成AIですが、今回の出力に関しては他の追従を許さぬくらい秀逸でした。
IKIGAI lab.のリーダー、高橋和馬さんの記事 でも紹介していますが、非常に使い勝手の良いAIです。ぜひこちらも読んでみてください。
Perplexityは質問に対して、次の質問(症状の場所や性質)を投げかけて、最終的に導き出された結果を出力しています。
Perplexityの有用な点は回答に「検索リファレンス」がつくこと。さらにそのリファレンスのリンク先をすぐに確認できることです。そして、関連情報も回答以下に提示されます。
出力された文章の内容に大きな差はありませんが、その他の機能がサポートしている印象ですね。
# さらに深掘り
1. 比較便利ツール「ChatHub」
4種類の結果をみてわかるように、一言で「生成AI」と言ってもかなり出力が違うことがわかりました。
もちろん、指示(プロンプト)内容にも大きく左右されると思いますが、これまでの結果をみると、それぞれ得意不得意がありそうです。
そんな時「便利ツールを使って答えを比較しながらいいとこ取りしたいな」と思いませんか?
今回はそれができるツールを1つ紹介します。
ChatHubと呼ばれるGoogle chromeの拡張機能を利用することで、同時に会話を続けて、AIの出力同士を比較させることができます。
設定方法はとても簡単!
Chromeウェブストアにアクセスして、右上のChromeに追加をクリックするだけで完了です。
無料版では2つのAIを比較することができ、有料版だと最大6個のAIを同時に起動できます。
有料(プレミアムライセンス)はサブスクではなく、買い切り型なのも嬉しいところです。
ちなみに、有料版(私が課金している)の画面はこちら。
4画面で比較すると、生成内容や生成時間など比較でき、大変興味深いです。
興味のある方は、ぜひ無料版から試してみてください。
2. ChatGPTをカスタマイズして医療相談をしてみる
※現在、OpenAIでは利用規約Usage policies で、
• 資格のある専門家による審査や AI 支援の使用とその潜在的な制限の開示なしに、カスタマイズされた法律、医療/健康、財務上のアドバイスを提供すること
を行わないようにと明記しています。そのためGPTsでも全体公開ができません。ご注意ください。
さて、ChatGPTでは、あらかじめコンテキストのインプット情報を詳細に書くと精度が上昇することが知られています。
そのため、記事で紹介したようなシンプルな問いではなく、きちんとCustom instractionsに構造化したプロンプト情報を与えることで、医療相談が可能かどうか検証しました。
ここは、私のプロンプトデザイナーとしての腕の見せ所(笑)
あくまで、プロンプトシミュレーションとして作成しただけですので、実際の医療相談としては絶対に利用しないようにしてください。
上記の対話をシェアしますので、参考にしてみてください。
プロンプトをコントロールすると、ChatGPTもこのような問診のような形で会話を進めて、症状を分析するAIとなります。
プロンプト作成方法については2023年12月30日の記事 や、私のnote記事 も参考にしてみてください。
# まとめ
いかがでしたか?
医療相談というかなりナイーブな分野ですが、各種生成AIの現時点の立ち位置を確認することができました。
しかし、現状はハルシネーションなどのリスクを完全に拭えないことが課題になります。また、最終的な判断や治療方針は医師や専門家によるものでなければなりません。
生成AIはあくまで補助的な存在であり、医師や専門家の経験と判断力で補完することが求められます。
今後医師や専門家は、生成AIが提供する情報を総合的に判断して、状態に応じてパーソナライズされた最適な治療方針を決定する役割を果たす必要が出てくるでしょう。
一方で、生成AIを利用した医療相談は、医療現場において負担を軽減し、診療の効率化に寄与する可能性があります。まだまだ日本では利用率の低い生成AIですが、ガイドラインなどとともに医療での活用も整備されることを期待しています。
最後になりましたが、実際の救急相談は生成AIではなく、現時点では総務省消防庁が進める救急安心センター事業 #7119 を利用してくださいね(※)。
※一部対象地域のみ。#7119以外の番号で救急電話相談等を行っている地域もあります。各自治体に問い合わせてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ、IKIGAI lab.のフォローそして、コメント・Pickをお待ちしています!
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