大谷翔平が移籍するドジャースはスタートアップ投資もすごい

2023年12月11日
全体に公開

日本が誇る野球界のスーパースター、大谷翔平選手がロサンゼルス・ドジャースと10年で総額7億ドル(約1014億円)と、北米のプロスポーツで史上最高額の電撃契約を締結したことが発表されました

実は、このロサンゼルス・ドジャースはスタートアップ業界とも強い接点を持っているのです。

独立系VCと比べても引けを取らないベンチャーキャピタル「Elysian Park Ventures(エリシアン・パーク・ベンチャーズ)」を運営しており、スタートアップにも積極投資をしているのです。

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ドジャースは2004年以降、ボストンで不動産開発会社を手掛けるフランク・マッコート夫妻(のちに離婚)により運営されていました。

しかし、夫婦での所有権をめぐる法的争いや、財政難により2011年に破産申請を行っているのです。

そこに救世主として現れたのが、現在のオーナーである「Guggenheim Baseball Management(グッゲンハイム・ベースボール・マネジメント)」です。

グループの主要メンバーは米資産運用会社Guggenheim PartnersのCEO マーク・ウォルター氏を中心に、アトランタ・ブレーブス(メジャーリーグ)の元球団社長スタン・カステン氏、元プロバスケットボール(NBA)選手のマジック・ジョンソン氏、映画プロデューサーのピーター・グーバー氏などの著名人が名を連ねています。

グッゲンハイムは2012年に20億ドル(当時約1660億円)でドジャースを買収して以来、経営の立て直しを行いながら、それまでは十分な予算が確保されていなかった選手補強にも多額の資金を投じてきました。

その結果、2013年から10年連続で地区優勝、11年連続でプレーオフに進出、2020年にはワールドチャンピオンになるなど、強豪球団へと生まれ変わったのです。

大谷翔平が移籍するドジャースとは? 過去11年で地区優勝10回 野茂英雄、黒田博樹らもプレー|日テレNEWS NNN
メジャーリーグで今季FAの注目となっていた大谷翔平選手が日本時間10日、ドジャースへ移籍することが決まりました。大谷選手は、自身のインスタグラムで移籍が決まったことを報告。6年間プレーしたエンゼルスにも感謝の思いをつづりました。以前、大谷選手は「ヒリヒリするような9月を過ごしたい。正直ワールドシリーズに関しては出たことがないので、予想すらできないですけど、やっぱり短期決戦やりたいなという欲は自然と高まる」と発言。今季も地区優勝を果たした強豪に、活躍の場を移すこととなります。ロサンゼルスを本拠地とするドジャースは、ワールドシリーズ優勝7回を誇る名門球団。ここ11年では10度の地区優勝し、11年連続でプレーオフに進出。直近では2020年にワールドチャンピオンとなりました。アフリカ系アメリカ人、ジャッキー・ロビンソンさんがデビューしたチームとしても知られます。過去には日本人選手も多く所属。野茂英雄さんや石井一久さん、木田優夫さん、黒田博樹さん、中村紀洋さん、斎藤隆さんの名前が挙がり、現役選手でも前田健太投手やダルビッシュ投手、筒香嘉智選手などがプレー。日本のファンにとってもなじみのある球団です。今回チームメートとなる選手も豪華。3月のWBCで決勝戦を戦ったアメリカ代表のムーキー・ベッツ選手やフレディ・フリーマン選手は、大谷翔平選手も手にした最優秀選手(MVP)を過去に獲得しています。また投手には通算210勝のクレイトン・カーショウ投手がいます。今季のチーム成績は、リーグ3位の打率.257、2位の得点数を記録。高い攻撃力を誇る打線にホームランキングの大谷選手が加わることとなります。投手としては、リーグ5位の防御率4.06を記録。先発陣が9位の防御率4.57とやや高めですが、リリーフ陣は2位の防御率3.42を記録。100勝62敗でナ・リーグ西地区を制しました。新天地のドジャースで、大谷選手はどんな輝きを放つのでしょうか。
news.ntv.co.jp

そして2014年、グッゲンハイムは資産運用会社の強みを活かし、ドジャースの競争力を維持・ファン体験のさらなる向上を目的に、テクノロジースタートアップに投資するベンチャーキャピタル「Elysian Park Ventures」を設立したのです。

Elysian Park Venturesサイト スクリーンショット

このElysian Park Venturesは、2020年にドジャースがワールドチャンピオンになった際には投資先スタートアップのテクノロジーを導入したことが優勝につながったと言われるほど、実績を挙げているのです。

🍪もっとくわしく

これまでに約70社に投資しており、運用総額は4億ドル(約581億円)超え、IRR(内部収益率)は40%と、一般的な独立系VCと比べても引けを取らないほどの成果を挙げています。

これほどの規模まで拡大することになったのは2015年に始まった3ヵ月のアクセラレータープログラム「Los Angeles Dodgers Accelerator」がきっかけです。

初年度でも名門ドジャースの知名度で数十社はアクセラレーターへ応募がしてくれるだろう、と見込んでいたところ、なんと600社以上が応募したのです。

その中から厳選した10社を採択すると、同年シーズン中に半数の企業が提供するテクノロジーをドジャー・スタジアムに導入することに成功したのです。

この成果を受け、オーナーであるGuggenheim Baseball Managementはスタートアップ投資に大きな可能性があるとして、投資資金を確保。現在では1社あたり50万ドル〜1億ドルの投資が可能になっています。

これまでに投資したスタートアップのうち、特徴的な3社を見ていきましょう。

👉スポーツベッティング(賭博) で代表的な1社です。創業当初は数時間もしくは数日ごとに架空のチームを作り、トーナメント形式で競い合うゲーム「デイリー・ファンタジースポーツ」からスタート。現在ではファンタジースポーツ、スポーツベッティング、オンラインカジノの3事業を展開しており、2022年12月期の売上高は22億ドル(約2970億円)でした。

👉NFL(米プロアメリカンフットボールリーグ)の元プロ選手とElysian Park Venturesが合弁会社として設立。GPSデータをもとに選手の練習・試合データを一元管理して、選手個人に合わせたトレーニングプログラムの策定をサポートしています。2020年にドジャースのワールドシリーズ優勝に大きく貢献したと言われました。

👉音楽イベントからマラソン・自転車イベントまで、あらゆるライブイベントを3Dマッピングするツールを提供しています。主催者はリアルタイムの人流データをもとに会場の設営や誘導プランを策定することができます。2024年のパリオリンピック・パラリンピックでも公式スポンサーとして、ほぼ全ての会場で使用される予定です。

🍫ちなみに

Elysian Park Venturesは2022年にPGA of America(全米プロゴルフ協会)と共同で運営するベンチャーキャピタル、EP Golf Venturesも設立しました。

その他にもドジャースのオーナー陣は複数のプロスポーツ・チームを運営しています。

  • プレミアリーグ(サッカー):チェルシーFC
  • NBA(バスケ):ロサンゼルス・レイカーズ、ゴールデンステート・ウォリアーズ
  • WNBA(女子バスケ):ロサンゼルス・スパークス

野球だけでなく、こうしたチームとの連携もできることから、グループ全体のリソースも活用しながら、スポーツ産業の活性化に取り組んでいるのです。

サムネイル画像:Unsplash/ Tyler Nix「ドジャー・スタジアム」

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