ドラクエ7つの勝利条件とプロジェクトの目標設定。「毎日やるぞ」が目標設定としてまずい訳

2023年6月12日
全体に公開

何かプロジェクトをはじめるとき、勝利条件(クリア条件)を7つぐらい設定する。いわば目標設定だ。

7つって多いですね。とよく言われるが、ゲームデザインするときは、つねに7つぐらいの勝利条件を意識するのでクセになっている。

ドラゴンクエスト7つの勝利条件

たとえば、ドラゴンクエスト的なRPGだと以下のような勝利条件が設定されている。

【1】攻撃が成功する失敗する(「クリティカルヒット」とか「攻撃が外れた」というヤツだ。くじ引き的な要素だが、ここで小さく一喜一憂させることでゲームの楽しさが維持される)

【2】敵を倒す(スライムを倒した!ってヤツね。これをできるだけ速く体験させて「よしやるぞ!」とノセることが大切)

【3】レベルアップ(敵を倒すと経験値が入り、それが一定数たまるとレベルアップする。「あともう少しでレベルアップするから、もう少しプレイしよう」)

【4】アイテム購入(敵を倒すとゴールドを入手し、アイテムを購入できるようになる。「あともう少しであのアイテムが買えるから、もう少しプレイしよう」)

【5】次の町や次の洞窟へ進む(遠くにいけばいくほど敵は強く設定されていて、1~4の積み重ねでプレイヤーは強くなり、遠くの場所に行けるようになる)

【6】ボスを倒す(ボスや中ボスを倒す。四天王がいたりとか、7つの秘宝を7匹のボスを倒すことで入手したりとか。物語的にも大きな節目となる)

【7】エンディングを目指す

こういった短期長期の目標が絡み合って、楽しさを生み出し、プレイヤーのモチベーションを維持する。

これをプロジェクトに応用しない手はない。自分をのせて、モチベーションを維持するためにプロジェクトの勝利条件を設定する。

プロジェクト7つの勝利条件具体例

たとえば、この「米光一成の世界を読み解くゲーム学」でも7つの勝利条件を設定している。

【1】コメントがつく(レベル1の勝利条件は短期で必ず達成できるぞ、っていうぐらい軽いものに設定するのがコツ。1つもクリアできなかったらくじけちゃうからね。前回の記事で、最後に「みなさんChatGTPをどのように活用してるんだろう。教えてください!」と書いたのも、この勝利条件が脳裏によぎったからだ。コメントありがとうございます&今回もコメントよろしく!)

【2】フォロワー100超え(記事10個めぐらいで達成できるといいなーぐらいの勝利条件だったのだけど、現時点でフォロワー73人! もう少し。ありがとうございます&フォローよろしく!)

【3】「米光一成の世界を読み解くゲーム学」オンラインイベント開催(このあたりになると漠然としている。どういうイベントが良いのか明確にはイメージできてない。ぼんやりとでも設定すると、その楽しいイベントをやるにはどういう連載をすればいいんだろうという意識が生まれて、方向性がブレない)

【4】「米光一成の世界を読み解くゲーム学」リアルイベント開催(リアルイベントをするには協力者が必要になってくる。そのためにも、どういう記事を書いていけばいいのか考えるきっかけになる。内容や規模についてはぼんやりと夢想する程度)

【5】「米光一成の世界を読み解くゲーム学」異言語版も同時掲載(最初は、英語版だろうか。3年後には技術革新で簡単にできるかもしれないから、そのころまで継続することが大切になってくる)

【6】書籍に代わる「ひとまとめにした」何かを出版する(後半の目標は、超ぼんやりでいい。最初は「書籍化」という目標設定を思いついたが、やりたい内容が「書籍化」に向かないから違うなと気づく。こういうことに気づくことも勝利条件を設定することのメリットだ)

【7】「ゲーム的視点」という技術を使いこなせる人が増えて、より楽しい世界になる(ラストは、もう世界規模な社会的意義を設定する。現時点では、茫洋とした条件になっているけれど、これは継続して、他の6つの勝利条件がクリアされるころには明確になってくるだろうなという心意気で書く)

という感じ。

勝利条件7を作るコツ3

勝利条件を設定するコツを3つ紹介する。

1:最初の目標は短期で達成できるものにする

勝利条件1と2は、短期具体的目標を設定する。「スタート時の勢いで達成して自分をノセるんだ」というつもりで。スライムを倒した!ぐらいのイメージだ。達成できたかどうかが具体的なほうが良い。

2:失敗してもリカバーできる目標にすること。

これ重要。目標設定で失敗する人は、ここを間違える。
「毎日腕立て100回するぞ」なんていう目標設定が典型的な「リカバーできない目標設定」だ。
これ、1日やらない日が出てきちゃうと、目標失敗になり、リカバーできない。もうダメだ、もうやめよう、に繋がってしまう。
未来志向に転換した目標にすることが大切。

たとえば「毎週、記事を書く」は、一度失敗すると取り返しがつかない。だから勝利条件を未来志向に変換する。たとえば「連載100回を目指す」なら、一ヶ月更新しなかったけど、これからがんばろうとリカバーを考えることができる。

3:後半の目標は社会的意義を設定する

全部が全部、すぐに達成できる条件だと、チャレンジしがいがない。そうなると手を抜いてしまう。
だから、勝利条件6や7は、世界的規模に影響力がある内容にする。短期間には達成できない壮大なものがいい。
勝利条件の内容も、現時点ではざっくりとしていてもいい。
プロジェクトを進めていった未来の自分なら明確化できるだろうという期待を込めて設定する。
序盤の短期的具体目標と、終盤の社会的意義を設定したら、それをつなぐ中盤の目標設定を作るといい。

社会的意義を設定する重要さについては、GOETHEの連載「ゲーム開発裏話(仮題)」の初回【「ぷよぷよ」誕生秘話。テーマは「人類愛」、リーダーは社会的意義を語れ。】について詳しく書いた。
ぜひ読んでください。

あああ、そうだ。自己紹介もせずに記事を書いていた。
米光一成と申します。
コンピュータゲーム『ぷよぷよ』(初代ぷよ)のディレクションや、パーティーゲーム『はぁって言うゲーム』『あいうえバトル』『言いまちがい人狼』などを作っているゲーム作家です。

あいうえバトル第二版
「はぁって言うゲーム」「ぷよぷよ」のゲームデザイナー、米光一成さんとAnagumaの初コラボ作品! シンプルなのにスリリング! お題に沿った単語を決めて、一文字ずつ当てっこしあおう! 最後まで文字を当てられることなく、生き残ったプレイヤーの勝ち! 子どもから大人まで、わいわい盛り上がること間違いなしのワードゲームの決定版。 全42体の「ちょっかんくん」、日英対応の両面印刷「あいうえボード」、木製「ちょっかんチップ」など豪華コンポーネントも見所です。 ■プレイ内容 プレイ人数:2〜6人 プレイ時間:15分〜 対象年齢:10歳〜 ■内容物 ・ちょっかんくん…6種×7体 ・ちょっかんチップ…47枚 ・あいうえボード(両面印刷)…1枚 ・ホワイトボードマーカー…6本 ・説明書…1枚 ■クレジット ゲームデザイン:米光一成 アートワーク:クボナオ ゲーム監修:朝倉道宏、秋山乃佑 スペシャルサンクス:IKE、テレゲーム研究所、かみコップ(Ryota Kawanishi)、鵜木彩 ■テレビ・媒体等露出 2021.11.26 読売テレビ「任意同行願えますか?」にて紹介されました!(NETFLIXでも配信中!) https://www.ytv.co.jp/ninidoukou/ 番組Twitter https://twitter.com/ninidoko_ytv/status/1464070500930314245?s=20
anagumagames.stores.jp

この連載では、ゲーム作家的な視点であれこれ書いていこうと思っています。よろしく!

(みなさん、『ぷよぷよ』を遊ばれたことありますか? ゲームを遊んだ思い出とか教えてください)(あと、目標設定ってみんなどうしてるか気になる。教えてー)

初代『ぷよぷよ』は、ファミリーコンピュータ:ディスクシステム対応版、MSX2/2+対応版として1991年に登場した。

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