書き続けるのは(本当に)大変だ

2024年5月27日
全体に公開

こんにちは!

この連載を始めて6カ月が経ちました。雨の日も風の日も雪の日も「毎週月曜日、朝7時に投稿」を死守して、今回で25回目になります。

「死守して」と書きましたが、別に編集部からせっつかれているわけでも、誰かからお金をもらっているわけでもなくて、あくまで自分が決めたことだからという理由で続けています。やると決めたからには簡単に引き下がりたくない。そういう性格なんです。

ただ最近しみじみと感じるのですが、毎週記事をアップするって、本当に大変なんですね。半年続けてきて、ようやく気づきました。

「なに当たり前のことを」と思ったかもしれませんが、ぼくはこの連載を始める前まで「週1本なんて余裕でしょ」を思っていましたし、「毎週連載なんてすごいですね」なんて言われるようになってからも、「まあふだんから文章に触れていますし、簡単なもんですよ」と人差し指で鼻をすんと持ち上げながら答えていました。

でも告白すると、かなり大変です。強がってすみません。浅はかでした。

このNewsPicksトピックスでも、継続できるオーナーは少数だと耳にしました。最初にそれを聞いたとき、「やるんだったら、しっかり投稿すればいいのに」と思ったものです。記事を書くなんて簡単なことじゃないか。毎週せいぜい3、4時間確保すればいいだけ。そんなこともできないなんて甘ちゃんだな、と。

でも、今では更新が止まってしまう理由がよくわかります。それどころか、極めて自分ごととして共感できます。とりわけ本業がある人にとって、しかも文章を書き慣れていない人にとって、毎週ではないにせよ、定期的にテーマを考え、記事を書き続けるというのは簡単なことではない。きっと大半の人は、休日を返上したり寝る時間を削ったりして、頭を悩ませながら書いているのではないでしょうか。

それに加えて、苦労して書いた記事の反応がほぼなかったら? 手厳しい、あるいは自分の意図を汲んでくれていないコメントがついたら? 「なにが好きでこんなことを続けなくちゃいけないんだろう」と思うのも当然です。ビジネスパーソンなら、そろばんを弾いて「投資対効果が悪いからここにリソースを注ぐのはやめて、もっと効率のいいマーケティングをしよう」と判断するのももっともでしょう。いったい誰が責められるでしょうか。

リングに上がり続けることがなにより難しい。これが、たったの半年ですが、毎週投稿を続けてきた感想です。

でもだからこそ、定期かつ無償で記事を書き続けている人には、尊敬の念を抱かずにはいられません。たとえ、構成が煮詰まっていなくても、内容が濃くなくても、雑な文章があっても、です。そこには経験者としか共有できない、純度の高いリスペクトがあります。ぼくはまだ連載を始めて日が浅いですが、黙ってうなずきながら給水ボトルを渡せるくらいの精神的なつながりを感じます。

* * * * * * * * * * *

先日、久しぶりにランニングをしました。4、5年ぶりくらいでしょうか。

大学3、4年のときは走るのが趣味で、月間250〜300kmくらいは走っていました。フルマラソンだと3時間20分台。社会人になっても、2、3回ランニングブームの時期はあったのですが、今回はだいぶ間が空きました。

家を出たときは、軽く1時間は走ろうと思っていました。公園までの道を軽くストレッチしながら歩きます。体力は申し分ない。親の声より聞いたデレク・トラックスのギターも気分を上げてくれます。靴はジム用のトレーニングシューズだけれど、調子はすこぶるいい。

公園に着いて走り始めます。よかった。まだ走り方は忘れてないみたいだ。風を切る感覚も、景色が流れていく感覚も、昔と変わりません。

雲ひとつない青空が広がり、いろいろな種類の犬もうれしそうに散歩している。老若男女たくさんのランナーが走っている。自分も恥ずかしくないペースでいけそうだ。そう思うと、地面を蹴り出す力も自然と強くなります。

しかし、ものの10分も走り続けていると、太ももがこわばりを見せてきました。おかしいなと思ったのも束の間、どんどん硬くなって、あっという間に言うことを聞かなくなりました。気持ちは昂ったままだし、もっとスピードを出せると思っている。かつての光景は見えている。なのに、脚が動かない。こんな経験は初めてでした。

飛ばしすぎたのかなと反省し、ペースを落とすものの、太ももは断固として硬いまま。むしろ痛みも伴ってきました。腕の振りを強くして全身を使って走ろうと試みたら、すでに腰の上部もこわばっていることに気づきました。

一度抜いた人たちに、次々と抜き返されていく。「そら見たことか」と鼻で笑われている気がします。すれ違う人からも、冷たい目で見られている気がします。30分を過ぎると、スピードを出していないのに呼吸が乱れ、肺が苦しくなっていきました。

ショックでした。ここ2年くらい、週4、5日はジムで筋トレをしているし、トレッドミルで15度の傾斜をつけてウォーキングをすることも週1回はあります。体力には自信があるし、むしろそこが(仕事においても)自分の強みであり、長所だと思っていました。

ところが、いざ久しぶりに走ったらこのありさま。どんどん走るのが苦しくなり、音楽を聞く余裕もなくなりました。足元はふらつき、景色の彩りは失われ、もはや早歩きと変わらないペースまで落とさなければなりませんでした。

ちょうどそのとき、1人のランナーに追い抜かれました。きれいに日焼けした、50代か60代前半の男性で、見るからに走り慣れている筋肉のつき方でした。

その人が着ていた青色のTシャツに、こんな言葉が書かれていました。

「人間 本気になれば 大差なし」

その言葉を見て、意識がぼんやりするなか、考え込んでしまいました。

人間は、本気になれば、大差がないのだろうか? 本気になれば、みんな同じような結果を出せるのだろうか?

結局、40分走るのが限界でした。さすがに倒れるわけにはいかず、ウォーキングに切り替えて30分ほど歩きました。太ももと腰の上部は相変わらず硬くこわばったままでしたが、胸の苦しさは少しずつやわらぎました。

帰りに、公園内にあるセブンティーンアイスを見つけて、少し迷った末、グレープを買いました。この味を食べるのは、30年ぶりくらいです。近くにある野外バスケットコート脇の階段に座り、子どもたちがシュートを打つ姿を見ながら黙々とアイスを食べました。

そのアイスは、人生で食べたアイスのなかで、一番ともいえるくらいおいしかったです。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他1788人がフォローしています