ファッション産業に挑む合成生物学
衣食住のなかで、「食」では培養肉が話題になっています。
一方、「衣」はどうでしょうか。
アパレル・ファッション産業は、以下のように環境負荷が非常に大きい産業と指摘されており、国際的な課題となっています。
・製造にエネルギーや水を大量に使用
・染色や仕上げの工程で、水質汚染や大気汚染を引き起こす化学物質の排出
・大量の衣料廃棄物を発生
加えて、皮革製品は、家畜の飼育による温室効果ガスの発生、動物愛護の視点からなど、別の課題があります。
最近、ファッション産業が菌糸体から作ったバイオ素材を利用した皮革代替品を売り出すことに取り組んでいます。いわゆるブランドと共同で取り組むのは、菌糸体という素材の消費者に与えるイメージを改善するのと、ブランド側にとっても環境や先進性といったイメージを強化するのに役立つからでしょうか。
下の記事では、Adidas、Gucci、Hermès、Stella McCartney、lululemonといったブランド名を見ることができます。
そんなバイオ素材を扱う企業には、DANIELLE TROFE、MycoWorks、Ecovative、Bolt Threads、Moguといったところがあります。
先日、デンマークのブランドであるGANNI(ガニー)が、セリウム(Celium®)を使用したブレザーを開発し展示会で発表したということです。
動物由来でもプラスチックでもないバクテリア・セルロースから作られるセリウムは、メキシコの企業であるポリビオン(Polybion)が、農業廃棄物を使って培養したバクテリアから製造しています。
高強度、軽量性、通気性といった機能性があり、動物の皮革のような感触を併せ持つ持続可能なバイオテキスタイルとのこと。
その様子は、以下のプレスリリースで見ることができます。
https://www.polybion.bio/stories/polybionxganni
Copenhagen, Denmark (June 28, 2023)
「魅惑的な霜降りで黄色のセリウムに、バクテリア・セルロースならではの先進的な美学を取り入れたこのブレザーは、GANNIらしいデザイン要素を難なく取り入れ、この素材の卓越した性能とユニークな外観を持つ。。。この大胆な一歩は、ファッション産業が環境に与える影響を軽減する代替素材を探求し、支援するよう、消費者や業界関係者に呼びかけるものである。」
こういった取り組み、まだ単なる新しいバイオ素材といったものですが、将来的には本格的な合成生物学が利用できるところかもしれません。
🗝Take-home message
アパレル・ファッション産業でも、合成生物学の利用を考えてみることは価値があるものと思われます。
「合成生物学は新たな産業革命の鍵となるか?」担当:山形方人
【Twitter】 https://twitter.com/yamagatm3
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