インドは如何にしてスタートアップ大国になった?

2023年10月14日
全体に公開

久しぶりにインドを訪問しました。コロナ前が最後だったので4年ぶりくらいです。

これまでの訪問はほとんどバンガロールでしたが、今回は初めてムンバイに来ました。ムンバイで現地育ちのインドのローカルメンバーにあったのですが、ボンベイと呼んでいたのでムンバイとの違いはなんなの?、と気になって聞きました。

曰く、幼い頃からボンベイで、ムンバイというのは最近の変化だとのこと。気になって調べたところ、これは過去の歴史に依るようですね。ボンベイは植民地時代のポルトガル語から来ているようで、いま30代以後の人はだいたいボンベイという呼び名で育ったのでみんな普通にボンベイと呼ぶそうです。もう数十年経つと皆ムンバイと呼ぶのかもしれません。空港のスリーレターがBOMだったことにも合点がいきました。

ムンバイでは現地の投資先のオフィスに訪問をしたり面談を沢山しました。インドは水やトイレのアクセス事情が良くない印象がまだあるので、基本街の散策などはせず仕事をしているかホテルにいるかという滞在になります。

さすが人口14億人の国だけあり、街の中もオフィスも凄まじい活気でした。投資先は数百人の社員がいるのですが、今はもう全員出社で仕事をしているとのことでオフィスは活気に溢れていました。

街の中の渋滞は相変わらずですが、変化も感じます。10年前にデリーに行った時は誰もバックミラーなど使わずにクラクションを連打しながら車線変更をしていましたが、最近はミラーもウインカーも使っていました。

まだスラム街のような場所は残っていましたが、データを見るとこの5年で貧困率は半分くらいに減っており、国全体はどんどん豊かになってきているようです。中間層以上の人口割合が増え、目に見える形で街の様子も変わってきているのでしょう。

そして特徴的な事はなんと言ってもデジタル化です。日本では政府が旗を振ってもなかなか進まないマイナンバーですが、インドでは「アドハー」というマイナンバー制度が、すでに浸透率90%超です。アドハーを持ってないと銀行口座も作れないし、生活かできないためほとんどの人が取得しています。また、とにかく通信費が安く、日本の5分の1くらいのイメージです。故に誰もがスマートフォンを持っており、フィンテックなどのデジタルサービスが一気に広がれる土台ができました。

そこにさらにインド政府は、アクセルを踏みました。インド政府は国民を経済的に豊かにするための重要なツールとしてデジタル技術に着目し、特に金融のデジタル化を進めることに投資をしました。インドの中央政府が標準化されたデジタル・インフラを開発したうえで、それを官民に開放するという手法が採られ、政府主導でデジタル化が一気に進む事になりました。そして登場したデジタルインフラのなかでも大きな効果があったものが、統合決済インターフェース(Unified Payments Interface=UPI)です。

UPIとはスマホを利用して24時間365日、銀行口座間の即時送金を可能とする相互運用性を確立した電子送金システムです。世界的にも最先端であるこのシステムは2016年にインド決済公社(NPCI)によって開発され民間事業者に開放されました。誰でも使えます。それによってUPI を活用した電子決済サービスの提供が相次ぎ、瞬く間にクレジットカード・デビットカードやプリペイド支払い、電子マネーなどを上回って利用されるようになりました。

有名なツールで言うと、日本のPayPayの技術の基盤になっているインドのPayTmですね。今や5億人近いアクティブユーザーがいます。街の中の小さな小売店でもスマホさえあれば使えます。お店も端末は要らないので導入は簡単です。簡単に決済ができると、みんな消費をしやすくなり、経済が早いスピードで回るようになり、国はどんどん豊かになります。ムンバイから日本の新幹線路線が建設も進んでいるようです。

インドはまだまだこれから伸びそうですし、実際そうした勢いを感じるインドのムンバイ訪問でした。なお、インドでもっともスタートアップが多いのはやはりバンガロールです。JALの直行便があるので一度訪問されてみてはいかがでしょうか。

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