反対意見も創造的な発想に活かす「クリエイティブ合気道」とは

2024年3月27日
全体に公開

みなさん、こんにちは!

前回のトピックスでは、「日本の伝統文化が証明する、クリエイティブ思考の源泉」についてご紹介しました。

みなさんは、日本の伝統文化についてどんなイメージをお持ちですか?

染物や着物などの伝統工芸、茶道や書道の諸芸、短歌や俳句、日本庭園をはじめ、歌舞伎や能楽などをイメージする方も多いと思います。また、日本の伝統文化は世界で高く評価されている一方で、国内では需要の減少、高齢化と後継者不足が課題になっていますよね。

最近読んだ本で、日本の伝統文化について興味深いことが書かれていました。京都大学 人と社会の未来研究院の教授で「科学と資本主義の未来」の著者である広井良典氏は、実は私たちにとって身近な日本の伝統文化や自然観は、環境保全やSDGsの実践において重要であると主張されています。

広井氏が執筆されたこちらの記事にもありますが、自然資本への対応には日本の伝統文化が重要であり、日本の経済が低迷している根本的な背景として、“めぐりめぐって”という日本語でいう循環の思想が失われていることが指摘されています。

壊れた器を捨ててしまわずに直して長く使い続ける金継ぎは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方にも合致している (GettyImages) 

全てが短期的な視点で把握されて“コスト・カット”が進み、結果として負のスパイラルに陥るのではなく、コミュニティの思想を持ってプラスの経済循環を作り出すことが重要であると語られています。

実は私自身が留学していたデンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTでは、日本の伝統文化で、特に合気道からヒントを得た、クリエイティブ リーダーシップのトレーニングを行なっています。今回は、クリエイティブ リーダーシップのスキルについて、またその中でも特にコミュニティの思想やプラスの循環を生み出す「クリエイティブ合気道」についてご紹介したいと思います。

デンマークで多くの起業家を輩出しているビジネスデザインスクール、KAOSPILOTでは、クリエイティブ合気道と呼ばれるメソッドを教える“クリエイティブ リーダーシップ”というプログラムがあります。

クリエイティブ リーダーシップとは、組織の一部だけではなく、組織の全体がクリエイティブだと自覚し、多種多様な背景の人々と協働することで創造的な結果をもたらすスキルです。

クリエイティブ リーダーシップでは、次の3つを満たして初めて、予想以上の結果をもたらすことができると言われています。

⚫︎ 自分をリードする(自分という人間をよく知る)

⚫︎ チームをリードすること(自分が今、どういう人と仕事をしているのかに注目する)

⚫︎ 結果をリードすること(最終的にチームが求めるゴールに注目する)

特に自分をリードするという観点が、クリエイティブリーダーシップを習得する最初のステップとして重要なのですが、その際に、KAOSPILOTでは、クリエイティブ合気道というマインドを教えています。

日本の合気道からヒント得た、「クリエイティブ合気道」とは

みなさんは「合気道」について、どんなイメージをお持ちでしょうか。

合気道道主で「合気道 稽古とこころ」の著者である植芝守央氏は、以下のように合気道を紹介されています。

“合気道は、対立した者を腕力や技でおさえつけるのではなく、相手と和することによってすべてを包み込み、敵そのものを無くしてしまう。一切の対立を超越した近代武道として完成したのです。合気道の戦後の発展の鍵はここにこそある、と私は信じています。”
「合気道 稽古とこころ」植芝守央氏
GettyImages

こうした合気道の考え方は、クリエイティブな思考を高める上でも参考になります。

クリエイティブ合気道とは何か説明する際、KAOSPILOTの講師は、デンマークの首都、コペンハーゲンの緑地に大きなアパートを建てようとした建築家と反対派のリーダーとの間に起きた対話を例に説明しています。

仮に反対意見を持つ相手との対話でも、まず「YES」と受け入れること。ただし意見をそのまま言葉通りに解釈せず、相手の意見を自分の中で練り上げ、そこから得た自分のアイデアを構築し、「提案」という形で返すこと。

その際に重要なことは、自分とは異なるアイデアでも心から聴き、受け入れることで好きなポイントを見つけ、そのアイデアをよりよくするための可能性を秘めた提案をもって返すことです。

なぜなら、それにより相手の「心の壁」を壊し、新たにお互いの違う城に橋をかけ、初めから敵などいなかったかのように新たな城という「共創する場」を作り上げることができるからです。

自分に向かってくる外側のエネルギーをいかに、自分の中に取り入れて、リーダーとしてポジティブな循環へと発展させるのか、これがクリエイティブ合気道で学ぶ内容なのです。

クリエイティブ合気道を体感を通して学ぶ様子

留学中にこのクリエイティブ合気道について学んだ時、そうきたか!と驚きました。慣れ親しんでいたはずの日本の伝統文化に、実はクリエイティブな思考を育てる可能性が大いにあると実感しました。伝統文化の奥底にある思想を深掘りすることが、持続可能な未来に向けて日本がより一層、世界をリードするポテンシャルがあると考えています。

2015年から日本でKAOSPILOTのクリエイティブリーダーシップのプログラムを開講していますが、プログラムを受講した方からは以下のようなコメントをいただいています。

「Creative Leadership」を受講することで、私は新しい眼鏡を手に入れることができました。それは「新たな世界の見方ができる眼鏡」です。受講中はさまざまな人の価値観や大切にしていることを知り、視野が広がりました。それにより、それまで「研究者」や「経営者」といった限定した職業の見方ではなく、より広く世界を見られるようになったのです。(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 
イノベーション人材部 小島一浩さん)

私にとっての「Creative Leadership」は、エンパワメントという言葉に行きつくと感じます。日本語で訳しにくい言葉ですが、人間には自立する力が備わっているという前提で、個人も、組織も、本来持っている力が最大限引き出される環境作りを支援し、協働していく。そう信じて、諦めないで進んでいくための手法を教えてくれるのが「Creative Leadership」だと思うのです。(富山県議会議員 藤井大輔さん)

自分とは反対の意見を持った人と出会った時、“なぜ理解してもらえないのだろう。どうすれば相手を説得できるのだろうか”、と考えることがあると思います。クリエイティブ合気道は、相手と議論ではなく、対話することで、AでもBでもなくZのようなオルタナティブな方向性を見つけることを促します。そしてそれは、クリエイティブな発想を引き出すための“運動”のようなものと捉えることもできます。

「クリエイティブ合気道」について実践的に学ぶ、デンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTによるクリエイティブリーダーシップのプログラムにご興味を持ってくださった方は、ぜひ以下のページからのプログラムの説明会もチェックしてみてくださいね。

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