日本の伝統文化が証明する、クリエイティブ思考の源泉
みなさん、こんにちは!
もうすぐ4月ですね。
2022年3月からこのトピックスコーナーで書く機会をいただき、2年が経ちました。
このトピックスでは、よく分からない、混沌としたカオスな状況でも確かで創造的なアクションに繋げるための思考法について、特に私自身のデンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTの留学経験や、日本での実践経験をもとにご紹介しています。
ところでみなさんは、日本は不確実な状況に対して回避する傾向は高い国だと思いますか?それとも、低い国だと思いますか?
日本では不確実性の高い自然災害も頻発するため、災害に備えるための準備や防災教育も積極的に進められています。また企業では、前例がなく、落とし所がない不確実で曖昧な状態を避ける傾向もあり、日本は不確実な状況を回避する傾向が高いと思う人も多いかもしれません。
実際に、オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士が開発した国民文化を測るモデルによると、日本は不確実性を回避する傾向が高く、世界で2番目に完璧さを好む国だそうです。逆に変化を恐れない傾向が顕著だったのは北欧です。
これまで10年以上に渡り、北欧の人々と共に学び働く中で、特にデンマークでは不確実な状況を積極的に受容し、実験的に取り組む環境や文化があると感じています。そして不確実な時代に発揮するクリエイティビティはデンマークから学ぶことが多いと私自身も強く感じていました。
しかし以前から、北欧出身のアーティストや起業家、大学教授などと話をしていると、むしろ禅や禅から影響を受けた日本の伝統文化を、クリエイティブ思考を高める上でヒントにしている人も多いのです。実際に、デンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTでも日本の“道”の文化からヒントを得たクリエイティブリーダーシップのトレーニングが行なわれています。
今回からのトピックスでは、禅や、禅から影響を受けた日本の伝統文化が証明する、クリエイティブ思考の源泉についての考察を展開したいと思います。それにより、よく分からない、混沌とした状況でも発揮するクリエイティブ思考のヒントは、実は私たちの身近なところにあることに気づくきっかけになれば幸いです。
クリエイティビティを高める日本の伝統文化とは
以前、「世界で最もクリエイティブな国 デンマークに学ぶ発想力の鍛え方」の著者で、現在はデンマークのデザインスクール・コリングの校長であるリーネ・タンゴー氏が2014年に来日した際、京都でのツアーを企画しました。1日かけて、陶器や扇子などを作る京都の職人の方々に会いに行きインタビューを行いました。
リーネはその後、著書の中で以下のように述べています。
日本文化に特徴的な手先の器用さ、伝統、ものごとを手際よく処理する能力、既存のものの完成度を高める力は、真のクリエイティビティに欠かせないものである。本書で述べているように、クリエイティビティというのは既存の枠の外でものごとを考えるのではなく、既存の枠の限界ぎりぎりのところで考え、活動することにかかわる能力である。限界ぎりぎりのところにすでに存在するものこそが、新たな発想の基礎となる。
以前、こちらのトピックスで、「カオスの縁」の概念についてご紹介しました。「複雑系とは何か」の著者である吉永良正氏は、カオスの縁は革新性を宿しつつ安定性を維持する場所であり、闘争と変革の場であり、そこに近づきすぎると散逸と分解の危険に見舞われ、逆に離れすぎると硬直と画一化に囚われてしまうような絶妙な均衡点である、と書かれています。またそれは、仏教でいう”二河白道(水と火の二つの川の間に挟まれ、どこまでも続く幅わずか四、五寸の白い道)のたとえ”のサイエンス版ではないか、と表現されていました。
リーネが語った“限界ぎりぎりのところ”は、まさにこの“カオスの縁”と繋がるのではないかと考えています。だからこそ日本の伝統文化の世界をより深く探索することは、不確実でカオスな状況における、クリエイティブ思考の獲得に貢献するのではないかと私は考えています。
次回のトピックスから、座禅や盆栽、茶道や合気道などの世界を通して、日本の伝統文化が証明する、不確実な時代のクリエイティブ思考についてご紹介したいと思います。お楽しみに!
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