【対談 #1】なぜメタバースをやるのか?脳科学者に聞いてみた 2/3

2023年2月13日
全体に公開

「メタバースって何の略?の”次”を語る会(最近一部では”メタツギ”と呼んでます)」の新しいモデレーター藤井さん紹介の第二回目です。前回は脳科学者の藤井さんがXR事業を始めるまでの話でしたが、今回は昨年始められたメタバース事業についてのお話です。ちなみに、1記事目をまだ読んでない方は、こちらもぜひご覧ください。

ハコスコは「現実科学」の実験カンパニー

角田:ハコスコは昨年「メタストア」をリリースしました。今後メタバースに脳科学の技術をどう落とし込んで、どう生かしていきたいか、展望などがあれば教えてください。

藤井:メタバースと脳科学は相性が良いです。それに僕自身「脳の外側と内側から攻めると脳がわかる」という立場でいます。

「脳の外から攻めている」のがメタバースです。「視覚・聴覚のようないろいろな刺激をコントロールし、現実の地続きの延長のように見れる状態にする」ことこそが、メタバースだと思っていて。

ハコスコは「VR」「メタバース」「ブレインテック」の3種類を事業でやってますけど、とくにブレインテックに関して「なんでそんな色んなことやってるの?バラバラですよね」って言われます。一見すると好きなことを勝手にやっているように見えると思います。

でも僕からすると、脳の内側と外側の両方から攻めてるつもりなんです。ブレインテックも今とは異なる非侵襲の新しい技術開発を始めようとしています。メタストアは、そういう色々な試みの一つで、リアルのつながり空間をメタバースで再現することをめざしています。

メタバースは、時間と空間の制限を取り払ってくれるもの

角田:メタバースと脳科学の技術が進むことで、私達のような一般の方々がどのようなメリットが得られると考えていますか?

藤井:メタバースは、「時間と空間の制限を取り払ってくれる」ものだと思っています。僕自身は「今ここ」をすごく大事にしたほうがいいと思っていて。

僕らはこの身体から離れられません。意識をどこかにアップロードして自分と違うところでその意識が勝手に生活していたら、もはやそれは別人で自分じゃないです。

だから「今ここの自分」、つまり「この場所から地続きにつながる新しい世界」こそがメタバースであるべきだと思ってます。そうしないと単なる「ここじゃないどこか」「よく出来たどこかの世界」になってしまうので。

もちろん今後なにか新しいデバイスが開発されて、メタバース内で本当に自分の身体そのものを動かしてるのと同じような体験が得られるようになればいいけど、現実的にそうじゃないですよね。だから現実と地続きで現実と区別がつかないけれども、その先にある新しい人工的な世界を、僕は作っていきたいと思ってます。

では、その先をなぜ作らなきゃいけないか。今の所そういう世界はなくても生きていけるものですよね。しかし、そういう世界を作ることでこれまでにないゆたかさが提供できると思っていて。現実世界のリソースには制限があるので誰かが持っていたら奪い取るしかありません。でもそんなことはしたくないじゃないですか。

地続きの向こう側が、「制限のない世界」もしくは「制限がすごく低い世界」がつながっている。それがメタバースなんです。今のデジタル技術は電気的なものなので、デジタル化することで、太陽からのエネルギーが来る限りずっとそれを維持できるはず。それが無尽蔵のゆたかさであって、テクノロジーが僕らに与えてくれるゆたかさとはそこだと思っています。

あともう一つのゆたかさは、太陽から来るだけじゃなくて、僕らの脳の中のイマジネーションは誰にも邪魔されないことです。「自由にいろんなことを考えて実現するための場所」がメタバースだと考えたら、脳から無限にリソースが出てくるので低コストですよね。もしみんながちゃんと考えて「何かを作ろう」という気持ちがあれば、それは誰にも邪魔されません。

その2つがあるから僕らはそのメタバースを使うことで、また地続きのメタバースを作ることによって、社会にゆたかさを届けられると信じてます。

角田:メタバースをやる理由は人それぞれですが、藤井さんはは「資源とかリソースを低コストで用意できるから」なんですね。だから人や社会にゆたかさを提供できる。なぜかというとリソースをどんどん用意できるから奪い合いがなくなるから。おもしろいですね。それが言語化されて体系化された話がもっと世に出れば、共感してくれる人も増えていくんじゃないかな。

藤井:それはまさに僕がライフワークとして提唱している「現実科学」という考え方です。現実科学とは今僕らが現実から地続きにデジタルの豊かな世界を作っていけば、新しい現実が出来上がります。でもそのときに嘘も混ざってくるし、悪意のある人がいたらそこで騙されることも大いにあり得ます。まず自分の現実を定義することが一番大事なんです。そこから現実とは何か、どうやったら現実を操作できるかを考えるのが現実科学です。それによって、社会にゆたかさを提供することができるはずです。

角田:地続きのメタバースを作ることで、「物質的なコストが下がってゆたかさは上がっていく」と考えると、メタバースって本質的には資本主義ベースのビジネスには向いてない、という考え方もできますね。

「社会的なゆたかさ」や「情緒的なゆたかさ」を増幅させるのに、コストが下がって分け合うことができれば、そういった部分を増幅させる方向に傾倒できます。メタバースで「リソース自体が低いコストでどんどん準備できる状況」が整えば、社会的な欲求を満たすことも可能です。

それはビジネスや資本主義とはまた違うんですけど、「お金があればあるほどゆたか」じゃなくて、「社会がリソースで満たされれば色んな人が満たされるからゆたか」という状態になっていくのかなと思います。

藤井先生が「なぜメタバースをやるのか」ということを言語していただく貴重な機会となりました。次回は、現在メタバース業界がぶつかっている『実用化の壁』について、議論していきます。

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