大人の成長はプレミアム

2023年9月1日
全体に公開

 長年、苦手だったことやできなかったことが、うまくできた瞬間―。何かを習得する喜びは、大人になっても興奮を覚えます。

 私は生まれつき視覚に障害があり、弱視です。障害があるがゆえに、苦手なことやできないことが幾つもあります。苦手なことは努力や方法を工夫して緩和させ、どうしてもできないことは時間の経過と共に柔らかく諦めてきました。

 一方で、いつのまにかダメもとで挑戦する精神力が大人の私に宿っていました。なぜなら、挑戦をした末にできなかったという結果になっても、長年諦めてきたことだからか、案外痛くもかゆくもないからです。

 障害を理由に諦めてきたことに挑戦をするたびに、大人だからこそ成長できる瞬間があると感じざるを得ません。

 これは、私に障害があるからなのだろうか―。いいえ、そんなことはないはずです。

 障害の有無に関係なく、誰にだって得手不得手や難しいことがあります。苦手なこと、できないことがあるのだと認識してきた大人世代だからこそ、挑戦できる瞬間があるのではないでしょうか。

子どもの頃は、日々成長の連続でした。大人になってからの成長は、プレミアムではありますが、その瞬間の興奮は子どもの頃に味わった以上に栄養がたっぷりです。

「たっぷりの栄養」

 釣り場に着くと、強い日差しと穏やかな海が出迎えてくれた。視覚に障害がある私は、糸と針が見えないのでエサを付けたり、魚を針から外したりすることはできない。しかし、海に糸を垂らしてもらった竿を握れば、振動でリールを巻くタイミングがわかる。私らしい楽しみ方で、海釣りを堪能した。イワシの群れに遭遇できたので、あっという間にクーラーボックスがいっぱいになった。

 料理が趣味で三食欠かさず作っているが、視覚障害を理由に魚をさばくことをしてこなかった。しかし、竿から伝わってきた命の振動を思い出すと、いてもたってもいられなくなった。イワシについて調べてみると手でさばけることがわかったので、挑戦してみることにした。

 動画で勉強した通りにやってみると、クーラーボックスが殻になるころには慣れた手つきでさばいていた。骨は見えないので取り除けない。骨ごと食べられるなめろうにして、日本酒と味わった。自分で釣った魚をさばくことで、食べることのありがたみについて、より一層考えられた。今まで食べたイワシの中で、一番美味しくて味わい深かった。

 長年、できなかったことができるようになった瞬間、私の心が大きく成長できたのを感じた。自分で釣ってさばいた新鮮なイワシが、心も身体もたっぷりの栄養で満たしてくれた。

 ※イワシを釣ったときと手でさばいたときの動画は下記をご覧ください。

 また、障害理解啓発活動や私の略歴の詳細は、下記の公式HPからご確認ください。(各SNSの活動は、公式HPトップ画面の下部から閲覧できます)

Lululima branch 公式HP

https://lululima-branch.com/

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
宮崎 千香さん、他175人がフォローしています