拡大するイーロン・マスクの世界的影響力

2024年5月30日
全体に公開

トピックスオーナーの前田謙一郎です。

今年に入ってからQ1決算発表、低価格モデルの前倒し、人型ロボットオプティマスなど様々な話題を提供してくれるテスラですが、一方でイーロン自身も多くの世界各国の要人や首脳と会談を行ったり、国際会議に参加するニュースを目にするようになりました。ちょうど今朝もトランプが政策顧問にイーロン起用かも、といういニュースもありました。

今週もxAIが60億ドルの資金調達をしたり、インドネシアを訪問したりというニュースがありましたが、イーロンはテスラ、スペースX、X、そしてxAIなど多くのテック企業を率い、そのイノベーションと事業インパクト、発言力の大きさからビジネスだけではない世界的影響力を様々な分野で持ち始めています。

国際会議、各国首脳からラブコールを受けるイーロン 画像:Getty Images 

最近Xではホワイトハウスの官僚より外国要人と会っている影の大統領なんて言うポストもあったりと、今回はそんな、国際的影響力を持ち始めたイーロンの昨今の動きや会談について追ってみたいと思います。

イーロンとその企業は地球規模での貢献を目指す

アメリカの大手メディアから色々ネガティブなことを書かれ、あまり良くないイメージを持っている方も多いかもしれませんが、イーロンは本気で人類の未来を考え、様々な事業を一から作り成功させたビジネスリーダーです。

テスラやエナジーで持続可能なエネルギー社会への移行を進め、スペースXでは「マルチプラネタリー」として、人類を火星に送り込む日を本気で考える。Xでは言論の自由を実現し、人型ロボットやNeuralinkなどもそうですが、人間と機械の融合を目指しています。

最近ではChatGPTに代表されるようなAI分野での投資も加速してきましたし(元々Open AIはイーロンが作ったため、並々ならぬ想いがあると思います)また、スターリンクは辺境地国の経済や教育、医療のインフラとして機能するだけでなく、ウクライナの戦争の行方も左右していました。

以上にように簡単にまとめるだけでも、世界的影響力を持つ企業を次々立ち上げ、新しい戦いに挑んでいくリーダーであることは間違いありません。そして、彼とその企業は環境政策、投資、地政学などグローバルに大きな影響力を持ち始めているのです。

ここ最近だけでも、フランス、イタリア、インド、アルゼンチン、イスラエルなど、多くのリーダーが、経済成長や技術発展の可能性を期待し、イーロンとの会合をしてきました。まさに色々な国のトップからラブコールを受けています。

一方、イーロンにとっても地球規模かつ誰も成し遂げたことのないビジネスを有利に進めるには各国首脳との戦略的な合意形成が必要です。(今回は国際的な影響という観点で纏めるので、イーロンのバイデン政権やアメリカ国内の政治に対するスタンスは一旦おいておきましょう)

事業規模が大きいテスラ関連

テスラに纏わる自動車関連では、先月4月の終わりにイーロンは突然中国を訪問します。李強首相と会談を行い、テスラのFSD(自動運転機能)について、中国での展開を行うための承認を得ることに成功します。ご存じの通り、中国は世界最大の自動車市場であり、中国メーカーと熾烈な争いを行なっているテスラです。

テスラのModel 3とModel Yが中国のデータセキュリティ規制に準拠、そして中国の大手テック企業である百度(Baidu)と、データ収集のための地図ライセンスの使用に関する合意に達したことで、FSDを展開する準備が整ったと考えられます。

以前のトピックスでも書いていますが、テスラは今後ロボタクシーや自動運転をさらに強化していき、北米や欧州でのFSDのロールアウトから今後は中国でも配信が続きます。

そもそも、李強首相や中国側もこれまでテスラがギガ上海で中国に投資をしてきた背景や今後の自動運転関連のテクノロジーを享受できるなど、メリットがあるのですが、プライベートジェットで中国に飛んで首相と会うというのは、世界の首脳でもできる人は多くありません。まさしく相当な影響力がないとできない芸当です。

もちろん、投資を呼び込んだり、自国の経済産業発展は様々な国で重要課題です。例えば、昨年もイーロンは「Choose France」サミットの一環でフランスのマクロン大統領と会合を持ち、テスラの新しいギガファクトリーをフランスに設立する可能性についても議論していました。

ちなみに以下が昨年の会合の様子ですが、前日の夜はメキシコのクラブで踊った後に、そのままプライベートジェットでフランスに行ってスーツで会談という、、凄まじい行動が報道がイギリスのTelegraphで報道されていました。

テスラ誘致による国内での雇用創出や経済成長を熱望するのは欧州だけではありません。

例えば、最近ではインドのモディ首相とイーロンは何回か会談を重ねています。残念ながら今年の4月に予定されていた、イーロンのインド訪問はテスラの色々な案件でキャンセルとなりましたが、昨年6月にはアメリカでイーロンとモディ首相は会談を持ちました。

テスラのインド市場参入に関する話し合いの一環として行われており、この打ち合わせでギガ・インディアの話が進み、インド政府は今年の3月に新しいEV政策を導入したのは記憶に新しいでしょう。5億ドルの国内投資を行い、3年以内にインドでの製造を始める企業には特定の電気自動車の輸入関税が70~100%から15%!に引き下げられることが決定しました。

昨年のインド訪問 画像: x.com/Narendra Modi

インドは中国の次に成長が見込まれる市場であり、もしギガファクトリーが実現した際にはモデル2もしくはRedwoodの低価格モデルが製造されるのでは、と予想されています。

ロボタクシー 画像:https://electrek.co

Xも大きな影響を持ちつつある

ツイッターを買収し、Xを立ち上げたことも影響力の増大に寄与していると言えるでしょう。最近ではアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領とギガ・テキサスで会合を持っていて、とても意気投合したようでした笑

そもそも、SNSのXアカウント停止をめぐるイーロンとブラジル最高裁判所判事との一件で「必要な援助は何でもする!」と支援を表明したのが、ミレイ大統領。

インフレと財政赤字の課題があるアルゼンチンは政府も国内雇用創出につながる投資を模索している最中で、ミレイ大統領は市場志向の経済政策を掲げ、政府の規制を減らし、民間セクターを経済成長の主役にするとしています。

イーロンにとってはミレイ大統領からのX支援や、世界有数のリチウムの埋蔵量を誇るアルゼンチンに注目していて、正しく相思相愛と言ったところだと思います。

もちろん、イーロンのXでの言動が炎上することもあり、皆さんも記憶に新しいのはXで昨年の11月に反ユダヤ的な投稿に対する賛同を表明し、大きな批判を浴びました。この出来事を受けて、アップルやディズニーを含む多くの企業がXでの広告を停止したりもしました。もちろんイーロンはその後、謝罪をしイスラエルを訪問します。

2023年11月の会合 画像:Getty Images 

ハマスの攻撃を受けたキブツを視察したり、ネタニヤフ首相と面談をして反ユダヤ主義に対する姿勢を明確にし、憎悪の拡散を防ぐための取り組みについて議論したり、スターリンクの使用について話し合ったりもしていました。

地球規模での視点とインフラ貢献

イーロンやその企業を必要としているのは自動車関連だけでなく国の発展の根源であるインフラ関連においても同様です。

今月にはイーロンはインドネシアを訪れ、バリ島でスターリンクによる衛星インターネットサービスの開始を発表しました。インドネシアは17,000以上の島々からなる群島国家であり、人口は2億7,000万人。私も昨年旅行で訪れましたが、経済成長が著しく、人口も増加しておりエネルギーが溢れる国でした。

しかし、インドネシアの1万を超える病院施設のうち、約2,700がまだインターネットアクセスを持っていない!という事実があったり、インターネットがない学校があるなど、スターリンクの導入により医療と教育の質を向上することができます。

10th World Water Forum 画像:Getty Images

インドネシア政府と協業し国の重要なインフラニーズに貢献するとともに、第10回世界水フォーラムへの参加もしていました。

このようなインフラ観点で言うと、ウクライナへのスターリンクの提供や救援も人類視点での貢献と言う点では取り上げられます。数多くのスターリンクや軍用サービスのスタージールドなどによりイーロンはウクライナの防御に貢献しました。

一方でウクライナの攻撃利用には制限をかけるなど、、詳細はさておき、スターリンクの事業規模はただネットフリックスを離島で見たりするインターネットサービス以上のインパクトがあるのです。(そもそもイーロンはスターリンクを戦争ではなく、楽しい使い方をして欲しいと伝記で述べていますが)

アメリカ国内でも影響力は増大、今後に注目

アメリカ国内においてもバイデン政権のEV政策やIRA、そして移民政策には特に批判的であったり、3月にはマイアミでトランプと朝食をしたりと、政治的、国際的な影響力がますます出てきたなという印象です。

最近では毎週のようにイーロンや関連企業のニュースがあり、フォローするだけでもとてもエキサイティングなのは私だけ!?かもしれませんが、引き続きニュースとしてお届けしていきたいと思います。それでは、次の記事でお会いしましょう!

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TOP画像:Getty Images 

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