【テスラ】Q1決算発表とAI・ロボティクスカンパニーへの変革

2024年4月24日
全体に公開

トピックスオーナーの前田謙一郎です。

先ほどアメリカ時間の23日午後にテスラの2024年Q1の決算発表が行われましたので、解説したいと思います。今回は減益が予想される中、AI・ロボティクスカンパニーへ変革を遂げるテスラにとって、とても重要な決算発表とされていました。結果は減収・減益にも関わらず株価は時間外取引で12%近く上昇し、今後のポジティブな見通しが多くあった発表となりました。

テスラはAI・テクノロジーカンパニーへ変革 https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

2025年後半に予定されていた低価格モデルの前倒しや自動運転の実現、ロボタクシーなど決算のハイライトと合わせて紹介します。

決算は予想通り減収・減益、今後の見通しが期待されていた

テスラのIR資料はこちらから確認することができます。Q1の市場概況としては紅海での紛争やギガベルリン工場の放火、フリーモントのモデル3の増産準備、さらには市場のEV需要の低下によりテスラは多くの課題に直面。

3月には放火のあったギガ・ベルリンを訪れていたイーロン 画像:Getty Images 

世界のEV販売は、多くの自動車メーカーがハイブリッド車を優先するため、引き続きプレッシャーを受けています。この環境はテスラの規制クレジット事業にとっては大きなプラスなのですが、EVの普及という観点では停滞している状況。

納車台数は386,000台で前年度対比マイナス9%、生産台数も433,000台で前年度と比べ減少、収益については213億ドルで前年度比マイナス9%グロスマージンも7%で2%減、オペレーティングマージンも5%で6%減となり、全体的な減収・減益、実績値も市場予想を下回りました。

フリーキャッシュフローについても25億ドルのマイナスとなっていますが、CFOのタネハはQ2に在庫が一掃されると黒字に改善されると述べています。全社的なコスト削減は継続しながら、AIインフラへの設備投資は10億ドルを行なっています。

これら減収はある程度以前より予測されており、大きなサプライズではなく、それ以上に市場やアナリストからは今後の売り上げを伸ばすための方向性を期待されていました。

テスラの Q4 IR資料 https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

前回の2023年Q4の決算発表での見通しとは異なる、今回テスラが示した将来のポジティブな見通しには以下のようなものが挙げられます。

低価格モデルを2024年後半へ前倒しへ

今回のテスラの見通しの中で一番大きかったのは、以前よりアナウンスされていた2025年後半に投入予定であった低価格コンパクトEVを2024年後半に前倒しするということでしょう。

これまでは新しい生産ラインでこのモデルを作るとされていましたが、現行の生産ラインで新しいプラットフォームの車を作る。これにより劇的なコストダウンはできないが、生産台数を増やすことが可能で300万台の生産キャパシティーに近づくことができるとしています。これにより2024年も継続的な成長が可能になり、とてもポジティブな材料だと思います。

テスラはCapex Efficientと説明していますが、投資リターンを最大化するために、高いリターンをもたらすプロジェクトを選択、集中し、効率化、全体的の製品戦略と整合させるということでしょう。

自動運転FSD・ロボタクシー・CyberCab

ここからがテスラが従来の自動車会社ではなく、AI・ロボティクスカンパニーへ進むフレームワークとなります。

FSD12の進化

イーロンも今回のQ&Aやこれまでも何度か述べていますが、とにかくFSDを試して見るとテスラの完全自動運転の実現が可能であり、その価値と将来が理解できると説明しています。(もし株を購入するのに躊躇っていたらFSDを試してみてとも)

FSD12がロールアウトされてからも改善のペースは非常に速く、すでにテスラの180万台の車両に対応しており、約50%のユーザーが使用、週を追うごとにその数は増えています。決算資料でも、FSD12による走行距離は3億マイル(赤い部分)を超えていると説明されています。

https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

これだけの走行データを持っている自動車会社また自動運転サービスの会社は他にないでしょう。そしてイーロンはFSDのライセンシングにも言及しており、一つのメジャーな自動車会社(フォード?)とライセンシングについて協議していると述べています。

決算資料の中にテスラNACS(North American Charging Standard)の写真も入っている通り、プラットフォーマーとしてのビジネスも着実に進めています。2月末からは北米のスーパーチャージャーネットワークをより多くの非テスラEV所有者に開放しています。

NACSを使用する他ブランドのEV https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

ロボタクシー=サイバーキャブ!?

これまでテスラは、低価格コンパクトEVのプラットフォームを使ったロボタクシーを将来的に発表することを述べており、それは低価格モデルの後、2026年くらいではと予測されていました。しかし、先日はそれも前倒しで8月8日に発表するとXにポストして話題を呼んでいました。

今回、興味深かったのはQ&Aでイーロンがロボタクシーの事を「Cyber Cab」と呼んでいたことでした。以前よりロボタクシーはサイバートラックにインスピレーションを受けているとされており、このプロトタイプの発表はとても期待ができます。

Tesla Ride Hailing App

そして、ロボタクシーの展開をサポートするであろう新しいティーザーが以下の「Tesla Ride Hailing App」です。

https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

おそらく、テスラの車が完全自動運転機能を搭載した将来において、既存のテスラ・モバイル・アプリに統合されるアプリになると思われます。テスラオーナーが車を呼び出すサモン機能、車内の温度設定、車を追跡する機能などがあるようで、UberやLyftなどの既存のライド・ヘイリング・サービスに対抗。詳細なリリース時期などには言及されていませんが、今後の方向性をよく表してます。

サイバートラックやオプティマスについても

上記のトピックス以外にもサイバートラック関連では週生産台数が1000台を超えたことや、4680セルの生産も進んでおりコスト削減を進めていることも回答していました。また、開発を進めるオプティマスについては、今年の終わりには工場内で「意味のある」タスクをこなし、来年の終わりには外部へ販売ができるかも、と述べています。

サイバートラックのプロダクションライン https://ir.tesla.com/#quarterly-disclosure

2024年のテスラの動向が見逃せなくなってきた

今年1月に行われた2023年Q4の決算発表では、イーロンからテスラは成長曲線の間に位置しており、2024年は大きな成長は見込まれないと発言し、投資家からは落胆されていました。同時に株主からもあまり多くのニュースは期待できないと見られていましたが、ここにきて急展開です。

8月8日にはロボタクシーの発表があり、そこで今年の後半に投入されるであろう2万5000ドルの低価格モデルについての具体的な話をするとのこと、以前には次期ロードスターも今年に何らかのニュースがあるとされていましたね。

先日はイーロンがXでテスラの車にGrokも搭載される予定だと述べており、2024年もテスラはたくさんのエキサイティングなニュースを届けてくれそうです!

x.com @AdrianDitmann

それでは次のトピックスでお会いしましょう。

TOP画像:Getty Images

トピックスオーナー:前田謙一郎 マーケティングコンサルタント&自動車業界アドバイザリー。テスラ・ポルシェなどの外資系自動車メーカーで執行役員等を経験後、2023年Undertones Consultingを設立。

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