わたしたちの当たり前を、わたしたちで変えられる社会に。

2023年7月14日
全体に公開

あなたがいた学校のルール、覚えていますか?

みなさま、はじめまして。

この度、新たにトピックスオーナーに就任しました、認定NPO法人カタリバ職員の古野香織です。

こちらのトピックスに関心を寄せていただき、ありがとうございます。

認定NPO法人カタリバ 高円寺オフィスにて撮影

突然ですがみなさんは「ルールメイキング」と聞いて、どんなイメージを持っていますか?

わたしは今、認定NPOの職員として全国の学校と連携しながら、子どもたちの身近な社会で「ルールメイキング」のための一歩をサポートする仕事をしています。

みなさんも経験があるかもしれませんが、学校にはいまだに数多くのルールがあります。

「靴下の色は白」「男子は長髪禁止」「メイク禁止」「前髪は眉にかかる長さにする」「シャープペンシルは禁止」など、数えだしたらきりがありません。

これまで、こういった校則やルールなどについて、ひとりが疑問の声を上げても、なかなか変えることは困難でした。校則に疑問を持つ高校生に、学校に提案してみてはというと、たいていの場合は「どうせ変えられないから、そのまま守ってる方がラク」「言ってもムダだから」という答えが返ってきます。

こういった環境で育った子どもたちは、「自ら動いて、何かを変えることができた」「自分の意見を受け入れてもらえた」という成功体験がないまま、大人になっていきます。そうなると当然のことながら、自分の所属するコミュニティをよりよくするために行動したり、新たなアイディアを提案するモチベーションも、徐々に失われてしまいます。

日本は、諸外国と比較して、社会参画意識や、自己効力感が低い国であると言われています。選挙の度に、若者の投票率の低さが話題となりますが、私個人としては、それは「小さな成功体験がないから」だと思っています。

※1 社会参加意識(各国n=1,000、各項目に「はい」と答えた人の割合)※2 日本財団18歳意識調査「成人年齢引下げ」「国や社会に対する意識6カ国比較」についての調査結果(https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2022/03/new_pr_20220323_03.pdf)

この国で「ルール適応型」ではなく「ルール形成型」の人々を増やしていくためには、自分の所属するコミュニティで、小さな成功体験を積み重ねていくことが重要です。

わたしたちと連携してルールメイキングを実践している学校現場では、生徒たちが自ら動いて、先生や保護者と対話を重ね、学校の当たり前(ルール)を少しずつ変えてきました。

たとえば、制服の男女別の廃止や、髪形、服装、持ち物のルール、スマートフォンの使い方や放課後の過ごし方に関するルールなど、子どもたちの生活に直結するさまざまなルールについて、見直しが図られています。さらに子どもたちの声から、行事やカリキュラム、学校目標まで変えた学校もあります。

このように、「もっと過ごしやすい学校にしたい」と願う子どもたちや先生の声から、学校の当たり前が変わり、当事者の小さな成功体験に繋がっていきます。

学校でルールメイキングに取り組む子どもたちの姿を見て、日本全体で小さなルールメイカーが増えていけば、さらによりよい社会へとアップデートすることができるのでは、と考えるようになりました。

ルールメイキングことはじめ

「ルールメイキング」という言葉は、新たに市場形成を目指すスタートアップなどの界隈で、ここ数年話題になっています。イノベーションのスピードに対し、法制度や規制緩和などが追いついていないため、公共政策などの分野にビジネスサイドも積極的に参入し、各セクターとの協働を進めながらルール・市場の形成をおこなう取り組みです。

こういった動きには個人的に注目を寄せつつも、このトピックスで扱いたいのは、こういった大義の「ルールメイキング」ではありません。もっと手触り感があり、日常生活に根差した「ルールメイキング」です。

わたしたちは日々、さまざまなルールに囲まれて暮らしています。

「赤信号では通行禁止」「物を盗んではいけない」などは、道路交通法や刑法で罰則規定が明確に定められているルールですが、限りなくマナーに近いような、“見えないルール”も存在します。

たとえば、職場での「有給の翌日は、ありがとうございましたと言わなければいけない」といった暗黙の慣習や、公共交通機関での「優先席が空いていても、座ってはいけない」といった空気など。ルールとは呼べないけれども、空気を読んでそうしなくてはいけないといったようなことまで、さまざまあるような気がします。

さらに企業、地域、家族など、特定のコミュニティの中だけに適用されるルールも無数に存在します。このように無数のルールに囲まれた状況に、息苦しさを感じてしまう方もいるのではないでしょうか。

しかし、そもそもルールとはわたしたちを縛るためのものではなく、社会で暮らすなかでお互いの自由を守りあうために生まれたものだと、哲学者・教育学者の苫野一徳先生は話します。(これは近代社会の根本原理としてルソーやヘーゲルなどの哲学者が提唱し、一般的に「自由の相互承認」と呼ばれています)

そうであれば、わたしたちがいかに幸せに、自由に生きていくことができるかという問いを考えるために、この「ルールメイキング」がヒントになるのではと考えました。

こちらのトピックスでは、みなさんを既存コミュニティにおける「小さなルールメイカー」として捉え、自分の半径50センチをどうやってより良いものにしていけるか、一緒に考えてみたいと思います。

こんな「ことはじめ」をお届けします

このトピックスを「ことはじめ」と名付けたのは「ルールメイキング」という言葉に聞き馴染みがまだないこと、そして皆さんと共に、身近なところからルールメイキングをはじめていきたいという想いがあります。

「ルールメイキングとはなんのことだろう?」とネットで検索をすれば、市場形成力やロビイングなどの言葉がセットで語られています。「法律やシステムを変えていくことで、わたしには関係ない」と思われても仕方がないのが現状です。

どんなに小さなことでも、みんなの暮らしをよりよくするための提案や合意形成へのプロセスはルールメイキングの種になり、自分で物事を変えていく力を獲得していくことにも繋がっていきます。

そんなルールメイキングをより日常的なものとして捉えていただくために、つぎのような発信を心がけていきたいと考えています。

・ルールメイキングでつくり変える未来

社会で活躍するルールメイカーや、これから何かを変えていきたいと考えている方々との対談・インタビューです。さまざまな角度からルールメイクされている方々を追います。

・みんなの学校づくり

学校で生徒主体の校則見直し=ルールメイキングに取り組んでいる先生・生徒のみなさんの事例をお伝えしていきます。わたしが勤めている認定NPO法人カタリバを通じて、出会った全国の多種多様な学校の取り組み事例を発信します。

・よもやまコラム

ルールメイキングに関わらず、例えばNPOで働くことについてや、広く教育に関係するテーマ、主権者教育の動向についてなど、ざっくばらんに私自身が気になったトピックについて、コラム形式で皆さんと一緒に考えていきます。

まずスタートとしては、こういった角度のトピックス発信をしていこうと考えています。今後発信をしていくなかで方向性が変わることもあるかと思いますが、どうぞみなさまあたたかくお付き合いいただけたら幸いです。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他80人がフォローしています