【第2期 Student Picker 投稿開始!】コロナ禍は若者の生命とどう向き合うべきか。

2022年7月7日
全体に公開

 皆さん、初めまして。第2期 NewsPicks Student Picker の小林雅幸です。

 普段は糸井さんとNewsPicksインターンの方々の偏愛や問いかけが展開される「GenZのたまり場」ですが、今週から毎週木曜日に第2期Student Pickerよる投稿が行われます。ちなみに、前回のトピックスでは糸井さんがNP新卒入社として6月を振り返る投稿をしてくれました。(…同世代が奮闘する姿はやはり格好良くて憧れます!)

 この貴重な機会で皆さんに何を問いかけようか、本当に悩みました。私の大学生活を表す2つの言葉は「教育」「研究」です。教育についての思いは【学生あるある】の第1で自身の原点を紹介する機会を頂いたので、今回は一人のひよっこ研究者🐥を自覚する者として、コロナ禍への思いを語ります。

(以下の内容は個人的な見解で、所属する組織等を代表するものでは全くありません。)

疫学の未来とコロナ禍を考える 

 私の専門は母子保健の疫学ですが、ヘルスビッグデータのクリーニングを得意としていたこともあり、自治体公表情報をもとにした新型コロナウイルス感染者データベースの作成に携わる機会を頂きました(2021.1-)。

 疫学(Epideimology)は、人の集団あるいは個人を対象として、疾患とその規定因子との関連を明らかにする科学である。
[1] 栗山進一 (2020)『分子疫学入門~精密医療の基礎知識~』東北大学出版会

 疫学では、曝露(Exposure)アウトカム(Outcome)との関係を明らかにし、曝露の制御により疾患の頻度をコントロールしようとします[1] 。

Figure 1. 疫学の考え方。図は[1]を参考に小林が作成。実際の解析では曝露の他に交絡因子や媒介因子なども考慮する。

Withコロナと非感染者の疫学

 ここで、曝露の制御は目的外の変化を及ぼす危険性があることに留意せねばなりません。特に感染対策に伴う行動制限が社会・個人に及ぼすハザード(危険性/有害性)は、現代で感染症疫学の守備範囲を超えてしまっていると私は感じています。

 一方で私は第3波の真っ只中で感染症疫学の現場を垣間見ていましたが、当時は急激に増加していく感染者の情報を正確に漏れなく遅れずに収集することで精一杯で、非感染者の健康問題を評価する仕組みやリソースの余裕はありませんでした。

コロナ禍でGenZは声を上げづらい

 さて、ここからはGenZも含む若者の目線で考えてみます。

 「重症化リスクを持つ人々や高齢者の命を守るため」の感染対策に対し、非専門家や若者は予備知識が高度なため解釈が厳しい上に、何より命に替えるものが存在しないことで、反論の余地がないように思えてしまいます。

 この意味で、若者は弱い立場にあります。しかし、感染症疫学の目的を「感染に伴う重症者数・死者数のコントロール」とするのであれば、同時に疫学は「行動制限に伴う非感染者の健康状態の変化」を考えなければならないと私は思います。

答えの無い問いだから、みんなで議論を続けよう

Figure 2. 2022年3月末、Student Pickerの顔合わせの1分間自己紹介で本投稿の元となった話をしている小林の様子。

 コロナ禍で若者が受けた精神的ストレスは未知数であり、長期的には自殺のリスクを高めているかもしれません。あるいは運動機能の低下により、健康寿命が短くなっている危険性もあります。しかし、これらの仮説に対して数理モデルを作るには現状では実態調査が不十分です。

 今後 With コロナを考えるためには、行動制限がもたらす潜在的な有害性を列挙し、そのデータを集めて解析することが欠かせません。いずれは定量的なモデルに落とし込み、政治判断に委ねるのが議論の理想形でしょう。

 ぜひコメント欄を、皆さん自身がコロナ禍で被った実害や失った機会を共有する場とさせてください。皆さんの経験を知ることから、疫学の未来の共創を始めてみたいと思っています。

 最後でお読みいただき、ありがとうございました。

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