スニーカーD2CのAllbirdsが上場廃止の警告
4月2日、サステナブルな天然素材由来のスニーカーやアパレルを展開する米D2Cブランド「Allbirds(オールバーズ)」が、上場するナスダック市場から上場廃止の警告を受けました。
AllbirdsはD2Cで最も成功した1社として知られています。
そんな企業がなぜ今、上場廃止の警告を受けているのでしょうか。
サムネイル画像:©︎Allbirds合同会社
☕️coffee break
Allbirdsは2014年にサッカー元ニュージーランド代表キャプテンのティム・ブラウン氏、バイオテック企業で働くジョーイ・ズウィリンガー氏により設立されました。
ブラウン氏は、選手時代に目にしたほとんどのスニーカーが、大きなブランドロゴと派手な色をまとっている上、大量生産・大量廃棄が行われていることに疑問を持ちました。
そこで、デザイン専攻だった大学時代の経験を活かし、シンプルなデザインでありながら、天然素材のスニーカーを作るべく、デザイン画を描いてはプロトタイプを作りあげる、を繰り返していたのです。
選手引退後にはビジネススクールに通い始め、アイデアの実現に本格的に動いている過程で、メリノ種の羊毛、メリノウールに目をつけたのです。
メリノウールは細かい繊維のため、肌触りが柔らかいことに加え、通気性・吸湿性なども優れており、環境負荷も低いことが特徴です。
「メリノ種羊」
このタイミングで妻同士が知り合いだったことから、バイオテック技術により再生可能な原料を製造するSolazyme(現:TerraVia)で勤めていたズウィリンガー氏に出会ったのです。
こうした出会いから立ち上がったAllbirdsは、履き心地の良さやブランド哲学に魅了される人が相次ぎ顧客(ファン)となり、急成長を遂げていきました。
参考:ジョーイ・ズウィリンガー氏インタビュー
🍪もっとくわしく
Allbirdsは2021年11月に米ナスダックにIPOを遂げました。
20年の通期は売上高2億1929万ドル、純損失2586万ドルだったにも関わらず、上場初日の時価総額は41億ドル(当時=4674億円)と、高い評価をされていました。
しかし今、株価の低迷に苦しんでいます。
上場初日(21年11月3日)の終値は26ドルでしたが、24年4月10日の終値は0.63ドルにまで株価が低下しているのです。
しかも30日間連続で株価が1ドルを下回っているため、ナスダックから警告を受けました。
つまり、今後180日以内(9月30日まで)に株価が1ドルを超えなければ、上場規則を満たすことができなくなり、強制的に上場廃止となるのです。
この株価低迷は、最初の決算発表で投資家の期待を裏切ってしまったことが発端です。
上場直後の第三四半期決算発表で赤字が拡大すると共に、通期の売上見通しも市場予想を下回ったのです。その結果、上場して2ヵ月が経った22年1月には株価が50%も低下の事態に...。
赤字を縮小しようと投資を縮小→売上が市場予想を下回る、売上を成長させる→赤字が縮小しない、といったことを繰り返してきました。
上場までの販路はECがメインでしたが、上場後には販売地域の拡大、実店舗数を増やすことに取り組もうとしていました。
しかし、デジタル広告は高騰が止まらず、顧客獲得コストは増加、実店舗も軌道に乗るまでは時間がかかる上、固定費が重くのしかかっていたのです。
こうした状況でも、大胆な改革を行うことができず、新規採用・出店を取りやめ、商品ラインナップを削減しながら、立て直しを目指した結果、後手に回った意思決定が続いてしまいました。
・2022年8月:全従業員の8%を解雇
・23年3月:CFOが退社
・23年4月:業績不振が止まらず、投資家から誤解を招く説明を行ったとして証券集団訴訟が提起される
・23年5月:ティム・ブラウン氏がCEOを退任し、ジョーイ・ズウィリンガー氏が単独CEOに
・24年3月:ジョーイ・ズウィリンガー氏がCEOを退任、米国内の不採算店舗15店を閉鎖
🍫ちなみに
日本に進出したのは2020年1月のこと。Allbirdsにとって7カ国目、15店目での上陸です。
2024年3月に「ザ・ノース・フェイス」を展開するゴールドウインと⽇本国内における独占販売契約を締結し、6月から販売を開始します。
2023年からカナダや韓国で、パートナーシップによる事業拡大に注力し始めていたことに加え、日本1号店の原宿は2020年に売上NO.1を記録したため、最重要市場の1つと捉えているのです。
ゴールドウインもAllbirdsとのコラボは、2030年までの中期経営計画の推進ドライバーと位置付けていることから、今後の動向には注目です。
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