あなたの口臭は大丈夫?口臭で確認すべき4つのポイントとは?

2024年4月8日
全体に公開

「あなたの口臭は大丈夫?」

この質問を目にして、不安を感じませんでしたか?少しでも不安を感じたあなたには、今回の記事がお役立ていただけるかもしれません。

私たちの生活の中で、口臭は意外と見過ごされがちな問題です。しかし、第一印象を大きく左右する要素の一つであり、自信を持ってコミュニケーションを取る上で、口臭は重要な役割を果たすでしょう。

ここでは、口臭の原因を正しく理解し、自分自身で確認できる4つのポイントをご紹介します。これらのポイントを押さえることで、口臭に対する理解を深め、より自信を持って日々のコミュニケーションを楽しむことができるようになるかもしれません。

一般的に、口臭は、生理的口臭、病的口臭、主観的口臭の3つに分けられます。それぞれどのようなものでしょうか。

生理的口臭とは?

まず1つ目は、生理的口臭と呼ばれるもので、基本的に心配のいらないものです。これは多くの方が経験していると思いますが、朝起きた時に強い臭いを感じるというものです。でも朝歯みがきをすればそれ以降はスッキリ。そんな経験、ありませんか?これは、皆にありうる「生理的」な口臭で、病的なものではありません。朝起きた後に歯ブラシをしたり、朝食を食べたりすることで消えていく一時的なものです。

寝ている間というのは、唾液の流れが少なくなり、細菌が口の中で繁殖しやすくなります。口臭は、この細菌によって作られる化学物質によって生じると考えられています。実際、全体で見ても、口臭の8割以上は口から由来であることが知られています(1)。

舌の上の細かな溝の間や歯の間などに食物が残っていると、細菌が臭いを作るもととなり、臭いがより悪化することも知られています。寝る前の入念なブラッシングが口臭を防ぐために大切なことがわかります。

しかし、どんなに口臭が強くても、朝食を取ったり、ブラッシングをしたりすることで、再び唾液が出るようになり、細菌が洗い出され、口臭はおさまります。このように、朝にだけ感じられ、ブラッシング後に消える口臭はあまり心配のいらない口臭と言えます。

なお、女性の場合には、月経中に唾液分泌が減りやすくなり、月経中だけ口臭が気になる場合があることも知られています(2)。

また、生理的な口臭には他にも原因があります。これもわかりやすいと思いますが、タバコやアルコール、食品で言えばニンニクや玉ねぎなどを摂取した後にも口臭は生じえます。これは摂取したもの自体の臭いによるものであり、上のメカニズムとは異なりますが、これもあまり心配のいらない口臭といえるでしょう。

Gettyimagesより

病的口臭とは?

裏を返せば、時間帯や食事摂取によらず口臭が続く場合には、少し心配すべきかもしれません。

この心配すべき口臭は、病的口臭と呼ばれます。病的口臭は、特定の病気によって生じる口臭で、生理的口臭との大きな相違点は、タバコなどの嗜好がなくても存在し、ブラッシングなどをしても消えない点です。そこに病気があり続ける限り、臭いも続くというわけです。

この病的口臭は、原因となっている体の部位によってさらに細かく分類することができます。中でもとりわけ多いのは、口由来の病的口臭です。

例えば、歯周病など口の中で細菌感染が起こっており、歯肉でたくさんの細菌が繁殖してしまっているケースでは、強い臭いが出ることがあります。また、虫歯があったり、歯並びが悪く歯間に食べ物が詰まってしまったりというような方も強い口臭が出ることがあります。つまり、口の中のケアを怠ってしまっている場合、虫歯が目立つというような場合にはそれが口臭の原因かもしれません。

また、「ドライマウス」と呼ばれる病態でも口臭が厳しくなることがあります。この「ドライマウス」は、読んで字の如く、口が乾くという状態を指しますが、シェーグレン症候群と呼ばれる病気や、花粉症薬、うつ病の薬などでも生じることがあります。例えば花粉症の薬を飲み始めてから口臭が気になるようになったという場合、薬をやめて元に戻るかを試すのも手です。このドライマウスは、虫歯の原因にもなりえます。口が乾きやすい、すぐに水が欲しくなる、などといった症状がある場合には注意が必要と言えます。

さらに重篤なケースとして、口の奥の扁桃という場所の細菌感染症や口や喉のがんでも口臭をきたすことがあります(3)。このような原因がある場合には、痛みや発熱、首にしこりを触れる、体重が減るなどの症状が見られることも多くなります。このように、口の臭いだけでなく痛みやしこり、体重減少といった症状もある場合には病気が隠れている可能性があり、病院受診が勧められます。特に口の中や喉の奥のがんはタバコが強い危険因子となりますので、喫煙者では注意が必要です。

口以外の病気が原因になることは比較的稀ですが、そのようなこともあり得ます。口以外で多いのは、口と距離の近い鼻の病気です。特に、副鼻腔炎と呼ばれる、鼻の奥の構造に生じる炎症、感染症で、口臭が出やすくなることが知られています。強い鼻づまりや顔面の痛み、熱が続くという場合には、このような病気を疑う必要があります。

それ以外に、肺の感染症や食道・胃の病気でも口臭が生じることがありますが、とても稀です。咳や痰が続くという場合には肺の病気の存在が示唆され、胸焼けや胃の痛みが続く場合には食道・胃の病気の存在が考えられますので、あわせて注意すべき症状と言えるかもしれません。

最後に、全身の病気でも口臭が出ることがある(4)ので、ご紹介します。例えば、よく知られているのが、肝硬変という病気です。これは、ウイルスの感染症や長期にわたる飲酒で生じることのある病気です。肝硬変で生じる口臭は「肝性口臭」と呼ばれており、独特な臭いがするので、内科医ならすぐに気がつくかもしれません。また、腎臓病や糖尿病の悪化でも口臭につながることがあります。糖尿病の悪化の場合にはどこか甘い匂いがするので、口臭とは捉えられないかもしれません。肝臓や腎臓の病気では、強い足のむくみが出る、息苦しさが出る場合があり、病気を疑うきっかけになりえます。

このように、口臭に加えて、その他の全身の症状がある場合には注意が必要です。

主観的口臭とは?

もう一つ、最後にご紹介するのが、主観的口臭あるいは偽口臭と呼ばれる口臭です。これは、実際には臭いはせず、他人からは確認できないものの、主観的に口臭があると気になってしまっている状態のことを指します。実は、口臭を理由に病院受診する方の約1/4がこれに該当すると報告されています(5)。

これは多くの場合、精神心理的な認知の問題であり、歯ブラシを過剰に行なったり、うがいやブレスケアの使用を頻繁にしたりといった行動変容につながっていることも多いという特徴があります(6)。

また、稀に神経の病気やビタミンの欠乏でも、本当は臭いがないのに臭いがあると錯覚してしまう症状が出ることがあります。さらに言えば、現在流行中の新型コロナウイルス感染症でも、このような錯覚が出ることがありえます。ただし、コロナウイルス感染症でこのような症状が出る場合、多くは同時か先行して発熱や咳といった他の症状が見られますので、そのような症状なしに不用意に感染を心配する必要はありません。

いずれにせよ、口臭が気になる場合に、同居のご家族やよく一緒にいる恋人、友人に確認し、臭いが気にならないと言われたら、それは主観的口臭の可能性があります。そのような場合には、病的口臭ではないと言えます。

Gettyimagesより

病的口臭を見分けるポイント

ここまで見てきた病的口臭を見分けるポイントをまとめておきます。

①   時間帯や食事摂取、思考品によらない口臭があるか?

②   口の中のケアを怠っていないか?

③   喉の痛み、鼻づまり、発熱や体重減少といった口臭以外の症状があるか?

④   その口臭は、家族や友人にも指摘されるか?

これらの質問に該当する場合には注意が必要で、病院への受診が勧められます。あなたの口臭は大丈夫でしたか?

口臭を防ぐためのポイント

最後に、口臭を防ぐためのポイントを共有させていただきます。

まず、病的口臭の場合には、原因の病気が解決しない限り口臭が解決することはありません。このため、先にご紹介した4つのポイントに該当した場合には、病気がないかを確認し、その治療を行うことが先決となります。

また、主観的口臭の場合には、多くの場合、「認知の問題」ということになるので、認識を変えるということが解決につながります。ご自身でそれが難しい場合には、精神科の医師の助けが必要になる場合もあります。

その上で、該当する原因がない場合、すなわち生理的口臭の場合には、十分なエビデンスが確立しているわけではないものの、改善策としていくつかの方法を試すことができます(7)。

まず、唾液の分泌や口の中の潤いが口臭を防ぐ助けになるので、砂糖不使用のガムを噛んだり、こまめに水分を取ったりすることが有効となります。

また、口の中の細菌の繁殖を防ぐため、口のケア、食後のブラッシングや歯間ブラシ、舌の掃除が重要となります。口の中は常に清潔にしておきたいものです。

朝の強い臭いを防ぐためには、寝る前のマウス・ウォッシュも有効です。寝ている間は唾液分泌が少ないので、マウス・ウォッシュの香りが残りやすくなります。また、多くのマウス・ウォッシュには細菌の繁殖を抑える有効成分が含まれていますので、菌の繁殖を防ぐ効果も期待できるのです。

嗜好品という意味では、寝酒や夜のコーヒー、喫煙を避けるのも口臭の改善に有効です。

今から追加でできそうなものはあったでしょうか。もしあれば、少しずつでも試してみてください。口臭が気になり始めたあなたも、明日から爽やかな毎日を送れるようになるかもしれません。

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参考文献

1.        Fedorowicz Z, Aljufairi H, Nasser M, Outhouse TL, Pedrazzi V. Mouthrinses for the treatment of halitosis. Cochrane Database Syst. Rev. 2008;

2.        Tonzetich J. Production and Origin of Oral Malodor: A Review of Mechanisms and Methods of Analysis. J Periodontol 1977;

3.        Ferguson M, Aydin M, Mickel J. Halitosis and the tonsils: A review of management. Otolaryngol. - Head Neck Surg. (United States). 2014;

4.        Preti G, Clark L, Cowart BJ, et al. Non-Oral Etiologies of Oral Malodor and Altered Chemosensation. J Periodontol 1992;

5.        Rosenberg M, Kozlovsky A, Gelernter I, et al. Self-estimation of Oral Malodor. J Dent Res 1995;

6.        Falcão DP, Vieira CN, Batista De Amorim RF. Breaking paradigms: A new definition for halitosis in the context of pseudo-halitosis and halitophobia. J. Breath Res. 2012;

7.        Kumbargere Nagraj S, Eachempati P, Uma E, Singh VP, Ismail NM, Varghese E. Interventions for managing halitosis. Cochrane database Syst. Rev. 2019;

初出/WEBマガジン「mi-mollet」(講談社)

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