親子で生成AIを【いっしょ】に学ぶ大切さ

2024年3月1日
全体に公開

こちらのトピックス“生成AI最前線「IKIGAI lab.」”は、学び合うことを目的としたオンラインビジネスコミュニティ「OUTPUT CAMP meets AI」のメンバーで運営しています。

私、伊藤は普段、生成AIの導入・活用支援を行い、親子向けの生成AI体験イベントを開催しています。生成AIの情報を常にキャッチアップし、新しいツールに興味があれば実際に使ってみるのが私のスタイルです。

前回の記事はこちら。

私は一児の父として、また地方で生成AIをビジネスに活用する生成AI人材として、時にはクリエイティブに全振りしたAIアーティストとして、いくつかの目線で生成AIの世界を皆さんにご案内できればと思います。

今回は、実際に親子で学ぶ生成AI体験イベントを運営する「AIみらいの冒険家(略称:あいぼう)」としての目線でも執筆していきます。

さて、今回は今更感があるのかもしれませんが、「生成AIEXPO in 犬山のレポート」と私が考える最新の子育て世代が考える生成AIの向き合い方についてフォーカスします。

つまり、以前書いた記事の続編です。

「生成AI-EXPO in 犬山」で大切にしたこと、できたこと

まず、「生成AI-EXPO in 犬山」について紹介します。

「生成AI-EXPO in 犬山」とは、犬山市教育委員会が後援と産官学連携で行われた、愛知県初の全国的にも非常に珍しい生成AIイベントです。

2023年12月10日にオンラインとオフラインで開催され、私は運営の一人として、参加しました。

ただ、私だけの特別なミッションが2つありました。
そのミッションは以下の2点です。

1.前夜祭として、画像生成AI体験イベントを開催する事
2.本番当日に現地枠で開催する事

2つの項目を順を追って解説しますが、まずは何故、そのミッションを実施する事にしたのか、その前提条件から書かせてください。

なぜ、親子で学ぶのが大切なのか

前提条件として忘れていけないのは「生成AIは世間的に見れば突如現れた謎の技術である」ということです。
これまでの大人たちは何かの技術の延長で出てきた新しいものに常に順応してきました。

例えば、
・スーパーファミコンではなくPlayStationをプレイするようになった時
・CDウォークマンからMDウォークマンに買い替えた時
・ガラケーからスマホに機種変更した時
など、多少の戸惑いはありつつもすんなり使えた方がほとんどではないでしょうか。

ただ、生成AIは世間からの警戒心がかなり強いように感じています。
実際にこれまで開催したイベントでも「生成AIについてはどう向き合えばよいかわからない」という声をよく聞きました。

ここで、1つの仮説に辿り着きます。
「子どもに生成AIをどう教えたらいいのかわからない」と困っている人は少なくないのではないか。
この仮説は、2023年6月に恐らく日本で初めて「生成AIを親子で学ぶ無料体験イベント」を名古屋市で開催した結果、確信に変わりました。

私がイベントを開催する時、いつも問いかける1つの質問があります。

「子どもにどうやって生成AIを教えたら良いかイメージはありますか?」

2023年6月から独自に集計した n数=47

上記の97%の数字はこれまでに「生成AI-EXPO in 犬山」をはじめとするオフラインイベントで、参加者に直接ヒアリングした結果です。
これは、以下の項目が原因だと考えています。

・生成AIが未知のもの過ぎること
・正しいと思える情報を収集できる場がわからない
・周りに生成AIに精通した人がいない
・生成AIを体験できる場がない

この4つの原因を解決するのに最も早いのが「一緒に親子で学ぶ機会を提供すること」と考えました。

生成AIに関する親子間での共通の認識をつくる機会があれば、今後親子で生成AIと向き合うためのヒントになります。

そう強く感じ、2023年6月から始めた活動に自信も付きはじめていた頃、生成AI-EXPO in 犬山の運営リーダーの田中悠介さんと「一緒にやりましょう」と言う話になり、開催に至ります。

前夜祭:画像生成AI体験イベントの開催

前夜祭として開催したオンラインイベントのテーマは「実践!!みらいの職業体験」にしました。
なぜ、このテーマにしたのか。それには3つの理由があります。

1.画像生成体験イベントだけではつまらないため
2.明確なゴールが伝わることで記憶に残るようにすため
3.近い将来、画像生成を使って仕事をする機会が出てくると確信しているため

◆画像生成体験イベントだけではつまらないため

これは既に画像生成AIを体験するだけイベントを開催している事例があったからです。
開催するだけで充分珍しいのですが、真のゴールの相手は「子どもたち」でなくてはなりません。
だからこそ、ただ親子で体験するイベントではダメだと考えていました。

◆明確なゴールが伝わることで記憶に残るようにすため

体験しても「すごい」で終わってしまっては、その真価が発揮できません。
なんでもファーストインプレッションが大事です。

数年後、社会に出てそれぞれの人生を歩んで働くようになる子どもたちに、場所または条件付けで、強烈に記憶に残る体験が重要だと考えました。

そこで着目したのが、職業体験というテーマです。

◆近い将来、画像生成を使って仕事をする機会が出てくると確信しているため

職業体験というテーマは、かなり慎重に考えました。

・これからも画像生成は急速に発展していくこと
・もっと手軽にできるようになること
・しかし、世間ではゆっくり浸透していくため、技術の進歩の速さとのギャップが今より更に広がっていること
・イラストレーターや写真家の方が出力する成果物に対する引き出しが多いため、画像生成に適応しやすい職業を例に出すこと
・生成AIが普及してもクリエイティブ系が苦手な人、業種、会社は当たり前に存在している可能性が高いこと
・ごく近い将来と仮定し「自分ごと」として捉えてもらうこと

これらを考えた時に、今から「3年後のみらい」として予想を立てて以下のように場面を設定しました。

導入はこのように話をして、町のキャラクターデザインをしてもらうことにしました。

・共通したゴールを持つこと成果物のクオリティを上げやすくする
・キャラクターデザインについての知識もレクチャーすること
大人でも学びたくなる超実践的な画像生成体験を通じて、楽しく学びながらスキルをモノにできる

この2つを特に意識しました。

初めは生成するまで、少し手こずりましたが、徐々に参加者の皆さんから生成物が出てくるようになりました。

そして、出てきた成果物に対して、画像生成がわかるだけの講師では絶対にできないことをしました。

・投稿された全ての画像をキャッチアップする
・まずは褒める
・主観かつ即興で制作者が考えそうなナラティブをつける
・その後は制作者が考える良かった点、悪かった点を聞く
・共感した後、キャラクターデザインとしての改善点を提示する

この5つの流れを徹底しました。

前夜祭では、これが本質だと考えました。

ワークショップでは、この4点に絞って解説した後、実際に体験してもらいました。

・基本操作
・プロンプトの考え方
・キャラクターデザイン
・著作権

大人たちからも非常に好評で、子どもにどう向き合わせたらよいのか理解できたと嬉しいお言葉をいただきました。

本番:唯一の現地イベント開催

イベント当日の様子

ここで大切にしたのは以下の通りです。

・現地だからできることに絞る
・ツールを組み合わせた制作を体験してもらう
・親子で一緒に話し合いながら成果物を作ってもらう
・その場で手元に残る成果物を提供する
・家でもすぐできるようにしておく

上記の条件を満たすものとして、ここで選んだのは
ChatGPTとCanvaでオリジナルカードを創るワークショップでした。

理由として、

ChatGPTは利用規約で13歳以上なら保護者の許可があれば利用できます。
Canvaは学校教育で使っている小学校もあります。

上記の2点を組み合わせてできることの好例として、カード制作を選びました。

もちろん、プロンプトやCanvaテンプレートはこちらで用意しました。
ここではプロンプトを「ひみつのじゅもん」、テンプレートを「ひみつのテンプレート」と呼ばせてもらいました。
「ひみつ」をつける事で特別感と一体感をつくる
ことが目的です。

プロンプトはChatGPT3.5で使う前提で、完成してから50回テストして90%前後の確率で、求める動きをするものにしました。
テンプレートはカード制作用でオリジナルデザインを作りました。

現地イベントでは、

・ChatGPTは勉強でどう使うべきか
・著作権はどういうものか
・画像生成をどう使ってほしいのか
・なぜ組み合わせは大事なのか

この4点を重点的に話をして、親子での共通認識を持っていただきました。

イベントの目的について
ChatGPTについて
画像生成について

個人的にはゲーム感覚で学んだ方が頭に入りやすいと感じているので、上記のようにスライドの見た目をゲーム風にし、ChatGPTと画像生成の説明は極限まで言葉を分解して引き算してから子どもたちに伝えました。

現地でイベントを開催する事で熱量を見ることができ、進行状況もリアル把握できるので困ったらすぐにフォローもできます。

逆に、オンライン開催よりはネット環境に詳しくない方も来られるので、その辺りの対応はしっかりしておく必要があると改めて感じました。

スタートラインは大人も子どもも同じ

冒頭にも記載した通り、生成AIは突然現れました。
子どもも大人も同じスタートラインに立たされているからこそ、できるだけ早く行動する事をおすすめしています。
その第一歩としてのイベントを、私は開催しています。

ツールの使い方の吸収力は子どもの方が早いかもしれないですが、
本質の理解度は人生経験を積んでいる大人の方が早いはずです。

生成AIについては
・子どもが先に理解して使って何かトラブルが起きる前に、親子で一緒に学ぶ
・大人が先に理解して、子どもに対して先導して正しい使い方をナビゲートをする

どちらかをすることが大人の責務だと考えています。

パソコンが苦手だから…などと言って避けるのは、ナンセンスです。
苦手なら子どもと一緒に学べばいいので、ぜひ考えだけでも理解できるようになってほしいと切に願います。

また、生成AIに精通している我々大人も、目先の業務効率や、マネタイズを優先してしまう人が目立ちます。

そのような短期的な使い方ではなく、利他的、あるいは社会貢献的な活動を通じて、世間に対する生成AIの理解を促進した方が、長期的には自身に還元され、ひいては国益になるのではないかと考えています。

生成AIを使い倒している数少ない人間だからこそ、広く伝播させる義務があると、いわば知的なノブレスオブリージュだと私は考え、次回のイベントをどうしようと日々考えています。

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