イノベーションの「大ピンチずかん」:新しい価値を生み出す変革は失敗を恐れず、失敗を認め、そこから学ぶこと。

2024年2月2日
全体に公開

鈴木のりたけさんの「大ピンチずかん」は、大人でも笑える面白さがありますね。自分の子供時代を振り返ると、鈴木さんの天才的な発想に驚かされます。お子さんがいる方は、一緒に楽しんで笑い転げたでしょう。

鈴木のりたけさんのフォーマット(©︎鈴木 のりたけ)を使えば、大人編や社内編などの「大ピンチずかん」も浮かびますね。例えば、プレゼンが始まるのにプレゼン用のファイルが消えた、アポの10分前に場所や時間をまちがえた、などはどうでしょうか?ただし、 大人編では失敗の深刻さ(©︎大ピンチレベル)が、失敗の金額や相手の地位や役職によっても変わるため シビアで笑えないかもですね。

失敗は避けられないものであり、最善の対策は失敗を認め、そこから学ぶことです。しかし、失敗を認めることは容易ではありません。著者マシュー・サイドは、「失敗の科学」で、人々が自らの過ちを認めるよりも、都合のいい言い訳をして自分を正当化する傾向があると指摘しています。これが、個人や組織が同じ過ちを繰り返す原因となります。

不正やミスがあっても、多くの場合、組織は失敗を否定し、事実を無視して問題を隠蔽しようとします。昨今の政治資金パーティー問題、ダイハツの不正などが(いい)悪い例ですね。ただし、航空業界は例外であり、失敗は公にされ、徹底的に解明されます。これは、安全と人命尊重の観点からきているもので、他の分野でもこのアプローチが取り入れられることが求められています。

フェイルファースト

フェイルファーストはいわゆるリーンスタートアップの一環として新しいものづくりに取り組む手法です。 失敗を恐れず、繰り返すことで最善の答えを見つけ出すアプローチであり、 医療事故や航空機事故の解明には適しませんが、特に商品開発やイノベーションにおいて効果的です。試作機を作って改良を重ね、最終的な成功につなげることができます。

あえて失敗をする

マシュー・サイドは 、「故意に失敗を繰り返す」アプローチが問題解決した例として、 ユニリバーの粉末洗剤の製造過程でのノズルの目詰まりの解消したケースにあげています。当初ユニリバーは一流の数学者で、高圧システムや流体力学などさまざまのエキスパートのチームを構成し問題解決に当たったが問題を解決できず、そこで 、流体力学などの知識のない自社の生物学チームに助けを求めました。生物学チームが最初に行ったことは複製を10個用意し、一つ一つに 少しずつの改良を加えてどんな違いが出るかをテストしました。結果的には45世代のモデルと、499回の失敗の末に出来上がったノズルのフォルムは誰もが考えもしなかった形だったそうです。
Matthew Syed@matthewsyed

自然淘汰

ユニリバーの行った試行錯誤は自然沙汰の過程と似ています。テイム・ハーフォードは 自然沙汰の過程は自然の失敗から成功を生み出すプロセスで「感受性の強い有機体をランダムに変異させつづけて、有機体の質を劣化させる大多数の個体を捨てて、優れた形質をもつ一握りの個体を残す。このプロセスを十分に繰り返すと、大きな奇跡が生まれる。」と述べています。

アダプトの基本原則

テイム・ハーフォードは企業にアダプトの基本原則を応用する際、以下の三つの原則が重要だと述べています。『第一に、新しいことを試す。ただし、挑戦に失敗はつきものであると覚悟しておく。第二に、失敗しても大きな問題にならないようにする。そのためには、失敗しても大丈夫な保護区を作るか、小さなステップで少しずつすすむことだ。第三に、失敗を失敗と認める。それができなかったら、失敗から学ぶことはできない。』

先ほども述べましたが、アダプトの三つの原則はリーンスタートアップなものづくりと共通しますね。1。失敗を恐れずマーケットからのフィードバックを元にあらゆる可能性に挑戦し、2。小さなマーケットでMVPの改良版からデータを収集して、3。失敗と成功を見極め、新たな改良を続けることでビジネスの成功につなげることができます。

失敗できる保護区

イノベーションや商品開発 は日々ピンチとの戦いですね。前回も書きましたが、イノベーションや商品開発に必要なことは 試行錯誤してビジネスを模索することができる環境ですね。

厄介なことにリーダーシップをとるエグゼクティブやコンサルタントは、自分の存在を誇示できる大規模なプロジェクトに取り組みたがり、できるだけ早い段階で全国展開を図ろうとします。

子供が親の庇護の元、大ピンチを乗り越え、そこから成長するように、イノベーションの成長にも失敗できる保護区そしては擁護者が必要ですね。

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