世界的VCのa16zが最も注目する「アメリカンダイナミズム」とは

2024年1月17日
全体に公開

2009年に設立されたAndreesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ/通称:a16z)は、ユニークな投資/組織戦略により、Facebook、Slack、Airbnbに投資をして一躍世界から注目されるトップVCとなりました。

そんなa16zが今、最も注目しているのは「アメリカン・ダイナミズム」です。

米国の国力が停滞(衰退)している状況を逆転させるような革新的なテクノロジーを模索しているのです。

☕️coffee break:そもそもa16zはどんなVCなのか

a16zは起業家出身のマーク・アンドリーセン氏とベン・ホロウィッツ氏の2人が起業家のために立ち上げたVCです。(Andreesen Horowitzをa16zと呼ぶのは、頭文字aの後に16文字が続き、zで終わるから)

2011年にマーク・アンドリーセン氏が米WSJに寄稿した『Software is eating the world(ソフトウェアが世界を飲み込む)』という記事はあまりに有名ですが、スタートアップ業界におけるオピニオンリーダーとなることで、高い成果を上げてきました。

そんなa16zは2022年、新たな投資戦略として、「Building American Dynamism(アメリカン・ダイナミズムの構築)」を打ち出しました。

ソフトウェア(SaaS)革命は世界のあらゆる産業を変革してきましたが、政府機関や公共分野は未だ変革が進んでいません。

これらの分野はソフトウェアだけでは変革することができず、ハードウェアと組み合わせる必要があります。

しかし、ソフトウェア×ハードウェアだと、国家レベルの課題も解決できる可能性があります。

アメリカンダイナミズムは、そうしたテクノロジーを開発するスタートアップに投資をして、アメリカが直面している様々な社会的、国家的問題に対して革新的な解決策を提供しよう。

そして、数十年停滞しているアメリカの経済的・社会的状況を逆転させようというのです。

🍪もっとくわしく

アメリカン・ダイナミズムは米国の国益を強化することを目指しているため、業界は農業・航空宇宙・建設・防衛・教育・エネルギー・製造・輸送/物流など、多岐にわたります。

そこで、今回はアメリカン・ダイナミズムを投資担当とするパートナーが、2024年に注目するイノベーションとして挙げた事業を紹介します。

・公共安全サービス

警察、消防、公共安全サービスでは人員不足が大きな課題となっています。米国では23秒ごとに車両1台が盗難されているものの、その40%は回収されていません。

カメラやセンサー、ドローンを活用することで、緊急車両が到着する前に様々な対応ができる可能性を指摘しています。

・スマートグリッド

現在、電力供給においては、送電網・発電所から消費者まで、一方向に送電するモデルです。これをさまざまな場所・発電手段に分散し、需給に応じてより効率的に送電するシステムへの移行が求められています。

・無人防衛システムの群集運用

すでに国防総省は様々な無人防衛システムへの投資を行っていますが、今後それらを活用していく上でコスト効率が高く、複数の軍事資産を同時制御するシステムが必要とされています。

・コンピュータビジョン、ビデオ・インテリジェンス

物理空間でのコンピュータビジョン(画像情報を分析して画像内の人物や物体を識別・判断)、ビデオ・インテリジェンス(動画情報を分析して動画内の人物や物体を識別・判断)の活用。

すでに犯罪防止コミュニティプラットフォームのFlock Safetや、自動運転・ロボットシェフの目となるAmbient.aiのようなサービスがありますが、輸送・工場・農業などへと広がる可能性を秘めています。

・海事産業

地政学・サプライチェーン・気候変動リスクから、海事産業にも変化の波が訪れています。AI・ハードウェア・コンピュータビジョンなど、様々なテクノロジーを組み合わせることで、海事産業で多くのイノベーションが生まれると期待しています。

🍫ちなみに

a16zはアメリカン・ダイナミズムにおける各産業の代表的なスタートアップ50社をまとめた『The American Dynamism 50』も選定しています。

業界、そして国力にも影響を与えるレベルの企業を生み出すには、資金提供だけでなく、ありとあらゆる大胆な支援が必要です。

野心的な目標を実現するスタートアップを生み出すべく、a16zの戦略・動向には注目が集まっています。

サムネイル画像:DALL·E 3での生成

続編記事として、a16zがアメリカン・ダイナミズム以外で期待するイノベーション分野についても取り上げる予定です。

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