建設テック「クラフトバンク」が爆速成長。鍵は"徹底的なカスタマーサクセス"
知名度こそ高くはないものの、ある建設業界向けSaaSが急成長を遂げています。
それは、設立3期目の「クラフトバンク」です。
2021年9月までの2年間、工事会社に特化した経営管理システム「CraftBank office」をステルス(秘密裏)で事業展開をしてきたところ、株主であるVCから「2年でこれほどの実績は国内トップクラスではないか」という声が出るほど、急成長を遂げてきたんです。
☕️coffee break
クラフトバンクは2000年創業の内装工事会社、ユニオンテックで立ち上げられた建設テックサービスを代表の韓英志氏がMBO(分社型吸収分割)することで、2021年2月に設立されました。
韓氏は大学院まで建築学を学び、リクルートホールディングスでグローバル事業開発室長として、海外事業での事業開発・CVC運営・M&Aなどを実行したのち、2018年にユニオンテックに経営参画することで、建設業界でも経験を得ました。
同年には代表取締役に就任し、内装工事業務のデジタル化を主導することで、売上を20億円→35億円に、営業利益率も業界トップ水準の10%以上を安定的に上げる企業に成長させました。
「クラフトバンク 韓英志 代表」
そのユニオンテック内で新規事業として、立ち上げたのが、建設工事受発注プラットフォーム「CraftBank(クラフトバンク)」です。
内装工事会社だからこそ得た、顧客接点をもとに工事会社と発注企業を高精度でマッチングさせることに取り組んでいました。
そして、2021年9月からは建設業界を変革すべく、工事会社に特化した経営管理システム「CraftBank office(クラフトバンクオフィス)」をステルスで提供し始めました(2023年9月に正式リリース)。
このサービスでは、建設職人が事務作業の時間を短縮して、さらに稼げるようにすべく、案件/スケジュール管理・工事日報・在庫管理・見積書/請求書作成など、工事会社の業務課題を解決するだけでなく、経営レポートの作成までが可能なオールインワンとなっています。
中でも建設業界の支柱である専門工事会社(職人を正社員で雇用して工事を行う中小企業)に注力していることが特徴です。
🍪もっとくわしく
建設業界においては、設計でBIM/CADシステム(3Dモデルを活用したデジタル設計)の活用・ロボットの活用、工事管理でSaaSの活用、資材調達もオンライン化されるなど、デジタル化が進んでいます。
一方、専門工事会社は市場規模が31.4兆円もあるものの、70年以上イノベーションが起こらず、デジタルサービスの活用が進みませんでした。
その理由は、多くの企業は社歴が長く、紙やホワイトボードを活用して、各社独自の日報・作業管理フォーマットを構築していたからです。そのため、馴染みのないデジタルサービスへの移行は複雑で非常に困難だったのです。
そこで、クラフトバンクではデスクワーカー(経営サイド)だけでなく、現場で仕事をする職人でも簡単に使えるようにすることにこだわりました。
「CraftBank office」では身近なLINEを活用しながら、職人は勤怠・日報・スケジュール・案件確認まで全てをスマホで完結するようにしました。
そこでのデータ入力をもとに数字の集計を自動化して、ダッシュボードで一元管理、経営レポートの作成までを簡単にできるようにしたことで、デスクワーカーにとっても有り難いサービスとなったのです。
現在、導入企業は日本全国42都道府県にまで拡大していますが、契約後には毎月社員が顧客のもとに足を運んで、3ヵ月〜1年間かけてオンボーディングを実施しています。
CS(カスタマーサクセス)エンジニアは、各社の業務フローや書類フォーマットが異なるため、顧客に合わせてプロダクトのカスタマイズまで行っています。
この徹底的なサポートにより、10代〜70代までの職人が毎日活用して、1日平均2.5時間の事務作業を数十分にまで短縮することに成功した事例が続々と生まれているんです。
また、建設業界では“2024年問題”への対応に迫られており、工事会社にとっては変化を受け入れることが不可避な状況です。
かねてから建設業界では長時間労働が常態化していましたが、近年では深刻な人材不足にも直面するようになりました。
そんな状況で2024年4月から、建設業界でも時間外労働に罰則規制が設けられるため、残業は月45時間以内・年360時間以内に抑えなければならなくなりました。
こうした背景もあり、職人から直接フィードバックを受けながら開発した「CraftBank office」は、生産性向上に取り組まなければならない工事会社にとって、なくてはならないサービスとなっています。
その証拠に中小の工事会社(社員10〜20名ほど)を顧客にしているにも関わらず、大企業向けに高価格で提供しているSaaSに匹敵するほどの価格帯で受け入れられているんです。
🍫ちなみに
クラフトバンクの社員数は、2023年1月時点で38名だったものの、すでに80名超え。年内には業務委託・インターンを含めると、100名規模になることが見えるほど、急速に組織を拡大しています。
これを実現するにあたっての採用戦略も非常にユニークで、以下の後編記事で紹介しています。
【秘伝スカウト文も公開】採用の三重苦...クラフトバンクが100名規模まで拡大できた理由
サムネイル画像:Unsplash/Nakaharu Line
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