「株式会社」ニューズピックスがなくなって、手触り感について考えた話

2023年7月24日
全体に公開

関東は梅雨明けして、呼吸するだけで胸焼けしそうな暑さですね。職場環境としてのニューズピックスはコアタイムなしのフルフレックス。私のオフィスに行く頻度は週に1-2回です。

オフィスは東京駅の近くにありまして、昼時はとにかくランチが混みます。先日間が悪くその激混みランチタイムに居合わせてしまい、直射日光を浴びながら行列に並んだわけですが、その後の冷房がガンガン効いた店内はとても快適で、ここは軽井沢かと錯覚しました。

そんな快適さ。

エアコンとは文明の叡智ですしありがたいものですが、考えてみると日々の私たちの快適さとは「自然との断絶」を指す気もします(軽井沢と喩えながらナンですが。。)。

暑いはずの夏を空調で凌ぎ、暗いはずの夜を照明で凌ぐ。自然の未知の脅威を情報でありテクノロジーで凌ぐ。そこには、本来暑い夏や暗い夜と断絶し、昼夜や四季の感覚が希薄化し肌感覚と手触り感が喪失していく。

私にとって、ここ最近の事業との向き合い方もそれに似てはいないだろうか。ふと思いました。

統合と非公開化と身の回り

この7月に株式会社ニューズピックスと株式会社ユーザベースは法人統合しました(それまでニューズピックスはユーザベースの子会社でした)

このリリースの裏には、たくさんの議論であり対話がありました。

形式的にはニューズピックスがなくなるわけではなく法人同士の統合に過ぎないのですが、そういうものというより法人としての独立自尊の精神であり、皆がこれまでこだわり抜いてきたそれぞれの持ち場での矜持であり、法人としてのNPへの愛着・愛情。

私はマネジメントチームのひとりとしてそれを説明する立場にありました。説明までの数ヶ月は、そんな言語化できない皆のもやもやについてマネジメントチーム内でも議論し、皆と対話を繰り返した日々でもありました。

さらに昨年はニューズピックスの親会社(当時)だったユーザベースにおいて、カーライルによるTOB(株式公開買付)と非公開化がありました。

そして、これらのプロジェクトの動きと軌を一にして、自分の業務範囲に静かに大きな変化がありました。

ユーザベースとの共同プロジェクトや連携しての業務比率が上がり、ニューズピックスとユーザベースとの間で双方をブリッジする仕事への比重が上がっていきました。

そうなると結果として視点はより俯瞰し、その一方でニューズピックスを代弁する以上、ニューズピックスの解像度を落とすわけにはいかない。そのために奮闘する日々が続きました。

隙間時間にダブルブッキングだったニューズピックス社内のミーティングの録画を倍速で見て、スラックを発言者で検索してオペレーショナルな文脈をキャッチアップし、会計システムから実績と見込みを追いかけ、計画作りに3000行のスプレッドシートを処理していく(目がしょぼしょぼし過ぎてモニターアームを買ってモニターとの距離を縮めました)。

Unsplash(Garrhet Sampson)   

どうにかこうにか乗り切ったというか仕事は成立したのですが、ただそれを支えてくれたのは自分の実力ではなくチームに支えられたのと、あとはまさにテクノロジーでした。

そしてテクノロジーに支えられた仕事完遂の代償は、事業に対する体温のなさというかどこか今までの手触り感が喪失した感じもありました。これこそが冒頭のアナロジーである肌感覚・手触り感の喪失でした。

でも、、そこには思わぬ副産物もありました。ユーザベースでの俯瞰とニューズピックスでの具体を両立し得たもの。

それは自分の仕事の生産性が確かに上がった実感でした。

生産性から余白が生まれ、余白が自由を作る(と思う)

生産性の功罪が語られる文脈の一つに、コスパやタイパに対する悪玉論があります。なんというか「そんなに急いでどこへ行く」的な。

私が生産性について思うのは、ジャッジメンタルな善悪というよりもっと物事はグラデーションではないかということです。定型化できることを定型化して効率を極めるのは、有限な時間の中で可処分時間が増えることで、それは言い換えればそれだけ時間の余白が作れることでもあります。

それこそまさに自分の仕事の手綱を自分で握る、自由の獲得なのではないかと。

(ドリー・クラークの名著「The Long Game」でも個人の人生における余白の重要性の話が出てきますが、仕事だけでなく人生もそうですよね)

つまり逆説的ですが、仕事は生産性に徹底してこだわるからこそ余白ができて、そしてその余白が余裕を生み、挑戦機会となり、さらに大きな自由の獲得につながる。生産性を上げることはそのための過程で欠かせないものではないか。

と熱く思いをほとばしらせながら、そんな自分は夏の夜に煌々と照明をつけながら冷房を効かせた環境でこのトピックスを書いてもいます。易きに流れる己と向き合うのがまず最初なのかもしれない。。よね。。。

トップ画像:Unsplash( CHUTTERSNAP撮影)

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