ジャイアント・ステップ:6月の国内スタートアップ、7社が20億円超を調達

2023年6月30日
全体に公開

6月、日本のスタートアップ業界では、大型調達が相次ぎました。注目すべき資金調達額トップ5を押さえておきましょう。

☕️coffee break

1. UPSIDER:法人カード「UPSIDER」の提供

・資金調達額:80億円(融資)

・投資家:三菱UFJ銀行(アレンジャー)、三井住友信託銀行、商工組合中央金庫、東京スター銀行、紀陽銀行、あおぞら銀行

ここに注目👉法人カード「UPSIDER」事業では、顧客の支払いを一時的に立て替える必要があるため、多額の資金が必要です。その立替資金確保のための調達とはいえ、スタートアップでは極めて珍しいシンジケートローン(協調融資)による大型調達。

直近では年間売上が5倍増、単月黒字化を達成した上、ビジネス後払いサービス「支払い.com」、スタートアップ向け融資プロジェクト「UPSIDER Capital」でさらなる事業拡大を狙います。

2. FLUX(フラックス):ノーコードAIプラットフォーム「FLUX AI」の開発

・シリーズB

・資金調達額:45億円(融資含む)

・投資家:DNX Ventures、Archetype Venturesなど8社

ここに注目👉DNX Ventures、Archetype Venturesが2019年の初回投資以来、3回目の出資と高い評価。これまではパブリッシャー向けに広告売上最大化サービス「FLUX AutoStream」、広告主向けに広告配信最適化サービス「FLUX Targeting」や、データ・AIを活用したコンサルティングサービス「FLUX Insight」などを開発してきました。

今回の調達資金をもとに、それらサービスの共通基盤となるノーコードAIプラットフォーム「FLUX AI」の開発に取り組み、開発スキルや知識がなくてもAI・データ分析技術を簡単に活用できる基盤を構築します。

3. Terra Motors(テラモーターズ):EV充電インフラ「Terra Charge」

・シリーズD

・資金調達額:40億円

・投資家:大阪ガス、東京センチュリー、住友三井オートサービス、ペガサス・テック・ベンチャーズ

ここに注目👉2010年に創業以来、低中所得者向けにリース事業を組み合わせた電動二輪・三輪の製造・販売を行っており、売上の大半は海外。2022年4月からは日本のEV化を加速させるべく、初期費用・ランニングコスト無料のEV充電インフラ「Terra Charge」事業をスタートさせました。調達資金で「Terra Charge」をさらに拡大すべく、プロダクト・採用などに積極投資していきます。

ちなみに、グループ会社でドローン事業を展開するテラドローンも、国内外への事業拡大を加速させています。

4. セルージョン:水疱性角膜症治療薬の開発

・シリーズC

・資金調達額:28.3億円

・投資家:既存株主UTEC、DBJキャピタルなどに加え、新たにJICベンチャー・グロース・インベストメンツなど計10社

ここに注目👉慶應義塾大学発のスタートアップ。水疱性角膜症の治療においては、角膜移植のドナーが必要なため、全世界で1000万⼈以上の待機患者を抱えています。セルージョンはiPS細胞から効率的に角膜内皮代替細胞を作り出すことで、医師も患者も負担の少ない治療法を実現します。

昨年9月には中国の製薬会社Celregenとライセンス契約を締結し、海外展開を進めるとともに、3月には国内で初めて患者への移植試験を実施するなど、大きな事業進捗。2027年の製品化を目指しています。

5. LayerX(レイヤーエックス):支出管理サービス「バクラク」を提供

・シリーズAセカンドクローズ

・資金調達額:26.8億円

・投資家:JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、DIMENSIONなど6社

ここに注目👉今回は2月の55億円調達に続くラウンドで、シリーズA累計調達額は約82億円に。導入社数5,000社を突破した支出管理サービス「バクラク」シリーズを軸に、三井物産との合弁会社 三井物産デジタル・アセットマネジメントで提供するオルタナティブ投資サービス、プライバシーテックサービスを展開。

調達資金をもとにAI・LLMを活用して、既存事業の機能拡充することに加え、第4・第5の事業立ち上げにも取り組みます。

🍪ちなみに

クラウド請求書プラットフォーム「INVOY」を提供するOLTA(オルタ)が25.3億円の調達、現場業務のDXを支援するFairyDevices(フェアリーデバイセズ)が21億円調達と、20億円超の資金調達が7社から発表されました。

IPO市場がまだまだ明るくないものの、数年後にIPOを控えたシリーズB〜Cなどのミドルステージで大型調達が相次いで行われていることはポジティブな流れではないでしょうか。

サムネイル画像:Unsplash/Markus Winkler

参考:

逆風でも大型調達に成功している国内スタートアップ5社(4月)

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