現実とは はじめに

2023年3月14日
全体に公開

突然ですが、「現実とは何か」を説明してくださいと言われたら、みなさんはどう答えるでしょうか。

ChatGPTに「現実ってなに?」聞いてみると

「現実とは、私たちが認識している、外界や自分自身の存在や出来事など、物理的・精神的な現象の総体です。すなわち、物質的な世界や、人々が共有する社会的な現実、そして個人的な経験や感覚などが含まれます。
しかし、現実は人によって解釈や捉え方が異なることがあります。たとえば、同じ出来事でも、その出来事に対する感じ方や考え方が異なるため、現実も異なって見えることがあります。さらに、現代の科学の発展によって、人々の現実観は変化している場合もあります。したがって、現実は客観的に存在するものでありつつも、主観的な解釈や捉え方によって変化するものでもあります。」という答えでした。

説明自体が結構難しい上に、一つの正しい答えは無いって言っているように見えます。たとえば、すごく嫌なことがあって、それが現実ではなく夢であったら良いのにと思った経験は、誰にでもあると思います。そこでは、夢と現実が対極に扱われていますが、それに倣って、現実とは夢ではないものと定義しても良いかもしれません。でも、それだと逆に夢ってなんだろうという疑問が同時に発生して、いつまでも現実の定義にたどり着けません。現実とは何かを考えるためには、何かを参考にするのではなく、まず自分自身の現実を無理矢理にでも定義することが必要なのだと僕は考えています。

みなさんは、現実を疑ったり、それがなにかについて普段から考えているでしょうか。もしくは答えをもっているでしょうか。もし、ChatGPTが言うように、現実が人によって異なるのだとしたら、わたしたちは全員異なる現実を生きていることになります。ということは万人に共通の現実が存在するというのは幻想で、私達は一人だけで機械の中で生きているという可能性を否定できないことになります。

僕は10年以上前から、現実って本当にあやふやでとりとめのないものだなと思うようになり、現実について考え続けてきました。以下は、僕が現実とは何かについて考え始めたときに書いたテキストです。

「現実は小説より奇である。現実がフィクションよりつまらない時代は終わった。テクノロジーは現実とフィクションの間を連続したスペクトラムでつなぎ、すべてを現実に引き寄せてしまう。そのような新しい現実に向かいあって生きていく我々には、それを前提とした哲学・サイエンスが必要である。現実科学はそのための科学である。これまでの定量性を重視する科学とは思想が異なっている。ヒトの主観、すなわち脳によって構築される個々人の現実を科学するための手法を構築し、社会実装のための応用を目指す。」

随分気負った文章ですが、今でも同じ問題意識を持ち続けています。特に昨今の機械的な知性の勃興やXR技術の進展を見ると、現実を定義することの重要性がますます高まっているのを感じます。

2020年から、現実とはなにかということについて、自分で試行錯誤するのと合わせて各界の有識者に、それぞれの現実を定義してもらう「現実科学レクチャーシリーズ」という定期イベントを始めました。これまで30人以上の方々に登壇いただいています。https://reality-science.com/event/

このNewsPicksトピックでは毎月開催される現実科学レクチャーシリーズの振り返りの場所として、「現実とは何か」についてみなさんと考える場所にしたいと思います。

現実科学ラボレクチャーシリーズに参加いただいてから、このトピックを読んでいただくと、より深い理解ができるのではないかと思います。第33回のレクチャーシリーズは3月23日に藤原麻里菜さんをゲストに行われますので、もし興味を持ってもらえたら参加してみてください。

https://reality-science.com/2022/12/vol-33/

現実科学レクチャーシリーズ振り返りは、2023年1月に行われた第31回の宮下芳明先生の回から始めようと思います。宮下先生は、現実とは「感覚器をメディアとしたコンテンツ」であると定義されました。
それは一体どういう意味でしょうか?お楽しみに!

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