ロシアが得したアムネスティ問題を考える/その報道は「誰の」役に立っているか?

2022年8月8日
全体に公開

みなさま、こんにちは!

いつも読んでいただいてありがとうございます。最近、世界中で同時多発的に色々な問題が起きています。

台湾海峡、ウクライナはもちろん、イスラエルはガザにまたミサイルを撃ち込み、アルカイダの指導者も爆殺されました。

そんな中ですが、ちょっとウクライナ関連で書いてみます。今回は解説ではなく、記者としてずっと感じていることをダーッとまとめてみます。

実は私は、2月に紛争が始まったから、大きなモヤモヤを抱えていました。そのモヤモヤの正体みたいなものが最近、言語化できた気がしているので、「トピックス」の場を借りて書いてみます。

ウクライナも戦時国際法を破ってるよね、という報告書

人権団体が出した1つの報告書が、大きな議論を巻き起こしています。

アムネスティ・インターナショナルという、イギリスをベースに活動する世界的な組織です。そこが8月4日に出した報告書で、ロシアの侵略を受けているウクライナが批判されています。

アムネスティ ウクライナ軍について市民を危険にさらし「国際人道法に違反する」との見方示す

ウクライナ軍は戦闘地域で民間人の居住区域(住宅、病院など)に軍の拠点を作って、そこから攻撃をしているというものです。

こうした行為は民間人の死者を増やしかねないため、国際人道法ではやってはいけないことになっています。こうしたケースはウクライナで10件以上、見つかったそうです。

しかし、これが大きな議論を巻き起こしています。

論点は様々ありますが、1つには侵略を行っている国と、侵略を受けている国に国際人道法を等しく適用するのが正しいのか、という議論です。

そもそも平穏な日常をぶち壊して戦争を仕掛けたのはロシア、しかも市街戦に持ち込んでいるのもロシアです。

そんな中で領土を守らないといけないウクライナ軍を非難するのはどうなんだ、という論点です。

ちなみに筆者の見解では、これは等しく適用されるべきだと思います。

例えばウクライナ側ではこれまでにもロシア軍の捕虜を顔出しでSNSに晒すなど、人権侵害のケースはたくさんありました。

ロシアの侵略が途方も無い暴挙だという前提はありますが、ウクライナがルールの適用外になることはありえません。

案の定、ロシアのプロパガンダに使われまくる報告書

そして、もう一つの論点。個人的にはこっちが大事だと思っている論点です。

それは、このタイミングでウクライナ側の落ち度を世界に示すことが持つ意味合いについてです。

今回の報告書には「ロシアの侵略は正当化されない」とも書かれていたようですが、ロシアはこれでもかと言うほど自分たちのプロパガンダに活用しまくっています。

例えば分かりやすいのでは、これ。

ウクライナ軍は民間施設を利用していて、それは精密攻撃の正当な対象になる。ウクライナはずっとこれをやっていて、アムネスティすら手に負えないほどだ。

てな具合です。

民間施設にミサイルを撃ち込みまくり、民間人を殺戮しているロシア。ついこの前はショッピングセンターを攻撃していたし、妊婦がいる産婦人科にもミサイルを撃ち込みましたよね。

こうした現状を思い切り正当化する道具に使っているわけです。

結局アムネスティはこの件についてロシアに利用されたのは「遺憾」だとして、ウクライナ支部長が辞任するまでに至りました。報告書の中身に間違いはないが、影響は考えうる最悪のものだったわけですね。

我が意を得たり、だったTweet

さて、この件は世界中の学者や国際政治フリークの間で話題になっているのですが、とても納得したのが、以下のTweetです。

NPでもプロピッカーとしてご活躍中の東大・鈴木教授のものです。

この、「ロシアに利用されるかどうか」という部分はめちゃくちゃ大事です。

というのも、これまでにもこの手の「ウクライナも悪いよね」という話はいくらでもありました。

この流れなので敢えて書きますが、例えば戦争が始まる前にゼレンスキーは「親ロシア」だとして野党系のテレビ局を免許停止にしましたし、議員も何人も逮捕されています。

最近も検事総長と保安局長(治安機関の要職)をいきなり解任したりしていて、まあ民主的なリーダーなのかといえば、うーんというところはあるわけです。

でも、そんな事は最初からわかっています。

僕が抱いていたもやもやの正体は、記者としてこうした情報をどのような順序で、どれだけ大きく取り扱うかという葛藤でした。

というのも、この手の話というのはいくらでも曲解をされて「なーんだ、ロシアもウクライナも同類に悪い奴らじゃん」「なんなら、本当はウクライナが悪いんじゃね?」「これもはや、アメリカのせいじゃん」なんていう風に拡散されていきます。

実際、今回の「アムネスティ問題」でも同様のことが起きています。

じゃあ、だからといってウクライナはフリーパスで非民主的な統治や人権侵害、戦争犯罪が許されるのかと言ったら、それは絶対に違う。冒頭の議論に戻りますが、国際人道法は侵略を受けている国にも適用されるべきだと考えるからです。

となると、ウクライナの犯している罪に全く見て見ぬ振りをするのはダメで、どこかでは報じなければいけません。

そうなった時、やはり先程のTweetのように、自分が発した情報がどのように、誰に利用されるかを常に考えないといけないなと思います。

それを十分に考慮した上で、今後もウクライナ問題を解説できればと思います。

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・・・ふう。

思ったことをダーッと書いてしまいました。多分あまり読みやすくなかったかと思います。

そして書いてみて思うのは、これ、ウクライナだけじゃないよな、という点です。すべての報道において発信は盲目的な正義にとらわれず、影響力を深く考える必要があるのだと感じます。

本日もつたない乱筆乱文に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。ぜひまた、覗いてみてください!

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