不屈の男、慎泰俊。自分の運命は自分で決める

2017/1/14
私のミッション
人生を振り返ることなく、前のめりで死ねばそれでいい。
昔は30代前半で坂本龍馬やゲバラのように死ぬのかなと思っていました。
しかし、どうやらミッションを達成するために私はもう少し生き続けないといけないようです。
31歳の誕生日を前にして、私の当面のミッションは民間版の世界銀行をつくることに決まりました──。
尊敬する二宮金次郎
「五常・アンド・カンパニー」という社名は、私が最も尊敬するビジネスパーソンである二宮金次郎とマービン・バウアーの2人に由来しています。
2人とも勤勉と自己規律をよりどころにして偉大な組織を作り上げました──。
このようにして社名が決まったまではいいのですが、早速に私はずっこけることとなります──。
朝鮮籍を維持
帰化しようとすればできるにもかかわらず、朝鮮籍を維持しているのは自分の意思です。
当然、不便であり不自由な思いをすることばかりですが、そのことと、私が起業したこととは無関係ではありません。
私には仕事を通じて実現したいことがあります。
それは、誰もが生まれた場所や生まれ落ちた境遇に関係なく、自分の運命を自分で決められる世界をつくることです──。
血の雨が降る
父が私たちを殴るときは、文字通り血の雨が降ります。
「おい」と3度呼ばれても父の元に行かなかったときに、私は正座をさせられ、ほうきの柄で何度も殴られました。
途中でほうきの柄が折れたので、今度はそろばんで殴られました──。
私の「慎」のルーツは、もともと中国の高級官僚として朝鮮に移住し、朝鮮王朝の10代目の王に嫁いだ妃の一族だそうです。
男子に恵まれ、多くの学者や教授など知識人を輩出している家柄だと父は胸を張っているとのことです。
父親のことなのに伝聞情報として書いているのは、私は中学生になって以来、父とは1年に3分も話していないからです──。
合理主義的根性論
私に染みついた性格を、親友は「合理主義的根性論」と評しました。
目標を定め、その達成のために最も合理的であると信じられるやり方をいろいろと調べて考案した後には、1年365日同じように努力し続けることができる、ということです。
一方で「努力すれば夢はかなうというのは幻想である」ということもサッカーから学びました。
才能がなかったら努力しても無駄である。
しかし才能があるかどうかは、圧倒的に努力をしないとわからない。
才能があってもその努力が報われるためには、「正しい努力」をする必要があります──。
カツアゲをなくした成功体験
同級生150人を食堂に集めて、先輩後輩間の悪習、まずはこのカツアゲをなくしたいと言ったときのことは忘れられません。
これまで自分が先輩にやられてきた分、その憂さをようやく晴らせると手ぐすねを引いて待っていた不良系の同級生からは、「ふざけるな。今まで俺たちは耐えてきてやっとできるようになったんだ」と言われたりもしました。
私の意見が正しいから従おうという人はほとんどいません──。
最初は数人しかいなかった賛同者も増え、オセロの大逆転のように物事がひっくり返っていき、このカツアゲはなくなりました──。
雲をつかむような話
朝鮮高校の校長である父がおり、日本で一番大きな朝鮮高校で生徒会長をしていた私は、「朝鮮学校の教師か朝鮮総連の関連団体などで働くべきであろう」と期待されていました。
「MBAに行って、投資銀行か戦略コンサルで働いて、PEファンドに行って、将来は自分でファンドをつくる」と話すと、進路指導担当の先生はあきれ返っていました。
「お前は今まで何を学んできたんだ」「雲をつかむような話だ」と──。
父がくれた100万円の重み
早稲田のファイナンス研究科を受けて合格したのですが、ここでも困難に直面しました──。
父が差し出した100万円は今までで一番重たいお金でした。
我が子のために、普段なら絶対に下げない頭をどこかで下げて、このお金を工面してきてくれたからとすぐにわかったからです──。
モルガン・スタンレーの正社員に
モルガン・スタンレーの正社員になってからの大学院通いは大変でした。長めの夕食に出るふりをして大学院に行き、何気ないふりをして戻ってきて仕事を再開させていました──。
英語ネイティブの上司たち(多くの幹部はそうでした)には気性が荒い人が多く、午後5時を過ぎると1センテンスに1「Fワード」(F◯ck系の言葉)が出ます。
ひどい資料を作ったら、「なんだこのF◯ckingな数字は」と資料を破られたり、コーヒーカップを投げられたりします。
ユニゾン・キャピタルに転職
友人がいつも私に「転職は自分が職場で居心地が良いと感じているときにするべき」と言っていました。
居心地が良い職場にいるときというのは、自分が成長しにくくなっている証拠ですし、また気持ちよく働いているときだからこそ、妥協せずに良い場所を見つけることができるからです。
その友人が紹介してくれたのが、ユニゾン・キャピタルでした。
当時、不祥事があったのですが、この会社は間違いなく生き残ると確信するとともに、面白い人だらけだなと思う会社だったので、入社を決めました──。
佐山展生さんがきっかけ
私がPEの仕事をしようと思い立ったのは、ユニゾンがきっかけでした。
そして、ニート時代の当時何者でもなかった私に会って、「やはり自分はこの仕事に就こう」と思うきっかけをくれたのは、ユニゾンの創業者でもある佐山展生さんです。
すでに佐山さんは離れていましたが、不思議な縁を感じたものでした──。
起業する
悪戦苦闘して勉強をしていると、常にわからないことだらけだったものが、いつの間にか1つのまとまりで見ることができるようになります。
私にそれが訪れたのは2012年後半、入社してから2年半が経った頃でした。
その後、2013年末をもって、私はユニゾンを退職して起業することになります──。
スイッチが入る
児童養護施設で暮らす子どもたちは、どこにでもいる普通の子どもたちです。
楽しい時間が過ぎて、施設を後にしなければならない時間になったとき、私は「また来るね」と何げなく口にしました。
すると、一人の子どもがこう言ったのです。
「そんなこと言って、もう来ないんでしょ」
その冷めた目、どこか諦めたような表情を私は今でも忘れることができません。
この時、自分の中でスイッチが入る音がしました──。
海外を飛び回る私がパスポートを持っていない理由
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:中原一歩、撮影:遠藤素子)
子どもの一言で、自分の中のスイッチが入った
慎 泰俊(五常・アンド・カンパニー 代表)
  1. 不屈の男、慎泰俊。自分の運命は自分で決める
  2. 海外を飛び回る私がパスポートを持っていない理由
  3. 父は東京朝鮮中高級学校の校長、母は元空手家
  4. 生意気な二宮金次郎、5000冊超の本が思考に与えた影響
  5. 才能がないなら努力しても無駄。「合理主義的根性論」
  6. 悪習がなくならない3つの理由。怒りをエネルギーに
  7. 正論・批判では変わらない。カツアゲなくした成功体験
  8. 絶対的に不利な状況で組織改革が成功した3つの要因
  9. 勉強漬けの大学時代。遊んでいる学生が理解できない
  10.  理想を語るなら、誰よりも厳しく自分を律するべきだ
  11. 夢を実現するには人に笑われても語り続けたほうがいい
  12. モルガン・スタンレーで“足腰”鍛えて年収1200万円
  13. 転職は、職場の居心地が良い時にするべき
  14. 「2.4%」の活動で、世界を変えられる
  15. 人類の重要課題、誰もやらないなら自分たちでやろう
  16. 自分のスイッチが入った、子どもの言葉
  17. ランニングで自意識を解放、自分の境遇を笑い飛ばす
  18. 30歳、「民間版の世界銀行をつくる」と決めた
  19. 出口治明さん、梅田望夫さん、津田大介さんの支え
  20. 信頼関係を築くために必要な「人間性の4条件」
  21. 信用を得るために自分に課したルールとチェックリスト
  22. 境遇を乗り越えて、人生を自分で勝ち取る