年間300日ジャケットを着るスタイリストが教える「至高の一着」の選び方
こんにちは。ファッションスタイリストの神崎です。新年度もスタートして約2週間。もうそれぞれ慣れてきた頃でしょうか。
先日、個人のSNSで「ジャケットを30着以上を持ってる」という話を投稿したら想像以上に興味を持って頂いたようで。
基本的に仕事のときはもちろん、プライベートでもジャケットを着るのが好きなので大袈裟でなく年間300日はジャケットを着て生活している、と言っても過言ではありません。
今回は、そんな僕がどんな基準でジャケットを選んでいるのか、実際買ってみてどうだったかについてちょっとお話してみようと思います。ビジネススーツの選び方にも通ずる部分は大いにあると思いますので、何か参考にして頂けたら幸いです。
ポイントその1:肩周りからチェック
まず確認してほしいのが、肩周りの可動です。
どんなに素敵なジャケットでも、着ていて動きにくい、疲れるものは結局着なくなります。
袖を通してみて、まずは肩を投球前のピッチャーのようにぐるんと回してみる。スムーズに肩が動くか、変な重さを感じないか、同時にアームホール(脇の部分)が苦しくないかもチェックしてみてください。
ボディのフィット感は良いのに肩が、という場合は避けた方が無難です。着ていて疲れるので高確率で着なくなります。
ちなみに、やはり良いブランドのものは肩パットがしっかりしていても重くなく着やすい。金額の多寡はどれだけ素材の良い、軽い生地を使い、着る人のことを考えて作られているかにも反映されているのです。
アームホールが小さい場合、生地が張ってしまって脇のあたりにシワが出てしまいカッコ良く見えません。そして締め付けられて苦しい。逆に大きすぎてもラインが腕に沿わず、着られている印象に。
あとは試着するときの服装にも着目を。Tシャツで着たときとYシャツで着たときでは着用感が異なりますし冬物はニットを挟むので少しゆったりめが便利、なども考えられます。着るシーンを想定して、そのときに着るであろう服装で合わせてみると見え方もよりリアルになります。
生地の素材や厚さやによっても変わってくるので、裏地のあるウールのものなどはある程度かっちりしても仕方がない部分も。そんな中でもなるべく軽く着やすいものを選べるとパフォーマンスにも直結します。
ポイント2:適切なサイズ感
着ていて違和感がないなと感じられたら、サイズ感をしっかり合わせましょう。
パッと見でカッコいい、素敵だなと思うジャケットやスーツを着ている人は、サイズ感がちょうど良いのです。逆に言うとだらしなく見えてしまう人は、大抵サイズが大きすぎる。
サイズが大きいことの何が良くないのかというと、余った生地がシワになりやすく”くたびれて”見えてしまうことです。さらに肩が落ちたり着崩れもしやすく、お世辞にも仕事ができるようには見えません。
大きい方がラクだから、という考えは捨てて適切なサイズを着るだけで印象はグッと良くなります。まずは今の自分の適切なサイズがいくつなのか、というのは把握しておくことが大事です。
サイズ感の確認の仕方としては、ジャケットの袖丈で言うと腕を伸ばしたときに親指の第一関節に袖先が触れるか触れないかくらいの丈感が綺麗です。動かしたときにシャツが少し見える感じが安定。
前身頃はボタンのパターンによっても異なります。三つボタンでは真ん中を留めたとき、二つボタンでは上を留めたときにシワが寄らないサイズ感がベストです。また最近ではダブルのジャケットを留めずにざっくりカジュアルに着るのが男女ともトレンドに。その場合はややゆったりなサイズ感がオススメです。
一方で、ジャストなサイズ感が至高かというと別の側面もあります。
イタリアンスタイルなど、確かにスリムな感じはシュッとしてカッコ良く見える。ただいつまでもパツっとしたものを着ることが今の自分に合っているのか、セルフブランディングに合致しているかは都度検証する必要があるでしょう。
ベテランになるほどダブルのスーツというイメージがあると思いますが、あれは体型の変化と共にダブルの余裕たっぷりな感じの方が似合っていくという側面もあるのです。少しふっくらしている方がより和服が似合う的な話とも似ていますね。
スリムな人があまり細いものを着ていると貧相に見え信頼感に欠けてしまいます。ポジションが上の人には、若手のシュッとした印象とはまた違った安定感が求められていくでしょう。
年齢と共に似合うサイズ感や丈感も変わっていきます。ポジションによっても変わっていきますし、自分の体型や雰囲気でも変わっていく。それをスルーしていると「全盛期を忘れられない人」になってしまいます。
サイズ感でかなり印象は違ってくるので、ブランディングとして意図的に、能動的に調節していくがベストだと考えています。
ポイント3:使いやすいデザインや色味を揃える
買ったのに結局着なかった、という理由を聞くと、色味やデザインも大きな問題になっていて。
まず、着慣れていないのに個性的な色や柄を買うのはやめましょう。これもまず着なくなります。それよりも買うべきは「定番の最高峰」です。
これまで優に200着は買っていると思いますが、結局よく着るのは定番の形の黒、ネイビー、ブラウンベージュに集約されます。それはインナーやボトムに何を持ってきても合わせやすいから。
黒×黒はもちろんネイビー×黒もOKですし、ネイビー×ブラウン系はアズーロエマローネ(イタリア語で青と茶色)という人気の組み合わせができます。パンツに白を合わせてフォーマル&爽やかにも。濃いブラウンは少し重くなるのでライトな方が使いやすい印象。デニムも合いますね。
そしてデザインも、いわゆる定番の形のジャケットならビジネスでもオフに着崩して着ることができます。どちらでも着用できれば高価なものを買う動機にもなります。
たくさんのジャケットを持っている僕が言うと説得力に欠けるかもしれませんが、究極的にはシンプルな色味とデザインを極限まで高めた一着があれば全てを賄うことができるので、それさえあれば事足ります。
シンプルだからこそ、インナーやボトムス、靴を変えればガラッと雰囲気は変わるし、ジャケットそのものの印象が強くないからこそ既視感も起きにくい。これはスーツにも言えることだと思いますが。
たくさん着る機会があれば高い買い物だったとしても元は取れます。それに良い印象も付いてくるならお釣りが来ると考えていい。
定番のデザインの中で特にカッティングの美しいもの、身体のラインが綺麗に見える、生地感に艶があるものといった項目を満たしているものを選んでみてください。
まとめ:服は「着用効果」も込みで考える
ブランドものや、いわゆる「いい服」は確かに高いです。ただ、服という”プロダクトの金額”だけで考えてほしくないと考えています。
そのジャケットを、スーツを着ることで生まれる客観的なプラスの印象と、着たことによる自身のテンションやパフォーマンスの向上もそこに含めてほしい。
これを僕は「着用効果」と呼んでいます。
着たことでクライアントへの印象が良くなって信頼度が上がり契約が増えたり、着ていて自信を持てることで説得力のあるオーラに変わったり、そういった「目には見えにくいけど着用したことによるプラスの効果」は意外に影響が大きいものです。
例え高額だったとしても、そういった成果に繋がる効果が大きいのであれば十分に金額分の働きはしてくれると考えていいはずです。お腹を満たすだけなら何を食べてもいいのだけど、健康や体調が整うことでパフォーマンスが上がるなら少し高価でも栄養価の高いものを食べたい、というのと似ていますね。
特にポジションの上昇に従って質を高めることを絶対的に意識してほしい。肩書きや社会的な立ち位置に見合ったクオリティの服がもたらす印象は、間違いなく自分を助けます。
ジャケットやスーツはビジネスシーンに無くてはならないもの。だからこそこだわって、相手も自分もしっくり来る、テンションの上がるものを選んでほしいと思っています。
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神崎裕介
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表紙画像:筆者提供
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