男性が女性にプレゼントする米国 バレンタインデーにみるジェンダー役割

2024年2月14日
全体に公開

海を渡って、驚かされたこととは?

 2017年に渡米して、数カ月。まだ船便が届いておらず、生活基盤がイマイチ整わない中で、翌年のバレンタインデーを迎えました。

 当日の朝、何気なく、妻と長女に「チョコレート、楽しみにしてるよ」とお気楽に尋ねたところ、妻から「いったい何言ってんの? こっちは日本と真逆なんだよ」とあきれられたのを、以後毎年思い出します。今、思えば、こんなことを聞くのも野暮ですが・・

 そうなんです。。

 米国では、男性が女性に花束やメッセージカードを贈り、気持ちを伝える日なのです。これらに加えて、アクセサリーやぬいぐるみなどを渡す人もいます。

 さらには、子どもをシッターさんやナニーさんに預けて、夫婦で音楽や絵画鑑賞、ディナーを楽しむカップルも周囲には数多くいました。

ドラックストアや書店などに並ぶバレンタイン用カード:筆者撮影

カード、風船、花束を急ぎ購入

 日本で、女性が男性にチョコレートを贈るようになったのには諸説溢れているので、ここでは触れませんが、まさに太平洋を渡った異国には、まったく異なる文化や慣習が広がっているのを思い知らされました。

 私も、急ぎカードと花束、さらには風船をスーパーで14日当日、急いで買い求め、メッセージを記し、部屋を風船と花束を飾り、妻と長女の帰りを待ったものです。

 急場しのぎではありましたが、何とか喜んでもらえたと記憶しています。

 

イチゴをチョコレートでコーティングしたお菓子:筆者撮影

ホワイトデーを楽しみにするも・・・

 そして、1カ月後、何らかのお返しがあるものと思っていましたが、妻からは何の音沙汰もありませんでした。

 米国には、ホワイトデーもないのです。 

 妻によれば、米国のオフィスでは、男性社員が女性社員に配る義理カードやら、義理花束もないとのこと。3/14にも、あらためて驚きました。

 以後、バレンタインデーは入念に準備することとし、当日を迎えるようになりました。「郷に入れば郷に従え」です。

 政治記者時代、バレンタインデーには、女性記者が男性政治家にチョコレートを贈るのが季節の風物詩となっていました。首相の動向を日時取材する女性総理番記者がお金を出し合い、総理に時間を取ってもらって、直接手渡す光景も日常茶飯事。この日は、紙袋を抱えた女性記者が永田町を普通に歩いていました。

 その1カ月後には、両手では抱えきれないぐらいのお返しを男性政治家から贈られます。政治家ですから、そんなに安いお返しはあり得ません。どこからお金を出しているのか、甚だ疑問ではありますが、チョコレートの数倍ものモノをもらっていました。あまりにも多すぎて、先輩女性記者から「おこぼれ」を頂戴したこともあります。

今後も、この日本的文化は続くのか?

 近年、義理チョコの風習も廃れ始めていると聞きます。この日の立ち居振る舞いに悩んで、仕事を休むような女性が過去にはいたようですが、今はどうなのでしょう。

 こどもたちの間では、女の子同士で手作りチョコレートをプレゼントし合う「友チョコ」なんてのもあるのが、今の時代です。

 女性がチョコレートを渡して、思いを伝える。あるいは、致し方なく義理チョコを配る、オフィスにまとめて置いておくという日本的文化はこの先も、続いていくのでしょうか。

 こちらの記事によれば、逆バレンタイン作戦というのもあるとのことです。

 この先、日本もヨチヨチ歩きかもしれませんが、ジェンダー平等が進んでいくとみられる中、今日まで続いてきたバレンタインデーの文化も少しずつ、あるいは大胆かつ一気に変貌を遂げていく可能性は十分にあるのではないでしょうか。

 男性からのお返しは数倍という不均衡。そもそも、なぜ女性が贈らなければいけないのか。

 そんな素朴な疑問が、揺り戻しとして、いつの日か訪れるかもしれません。

 帰国して3年ほど経ちますが、そんなことを、この日に合わせて、少しばかり考えてみました。 

 

Unsplash by Laura Ockel

 ※表紙写真も筆者撮影

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