「200人に1人の存在」がお伝えしたいこと 駐夫って、どんな人?

2023年12月14日
全体に公開

皆様、はじめまして!

記念すべき初回のトピックス投稿ですので、まずは自己紹介からスタートします。

ジャーナリスト/元米国在住駐夫の小西一禎(かずよし)と申します。どうぞよろしくお願いします。

政治記者、駐夫・主夫に転身

私は大学卒業後、大手全国メディアで記者として働いてきました。9年間の地方勤務を終え、東京本社で政治部記者をしていた2017年、妻の米国赴任が決まり、悩みに悩み抜いた末、会社の「配偶者同行休職制度」を男性として初めて活用し、二児とともに家族4人で渡米しました。

平日は早朝から深夜まで、永田町の最前線に立って、政治家を取材し、原稿を執筆、週末も政治家に同行して地方出張を繰り返す、仕事漬けの日々を送っていました。そして、家事・育児などの殆どについては、妻に任せていました。子どもが乳幼児当時「ウンチ」をしていたら、おむつ替えを妻に「スルーパス」するような、ダメダメなパパでした。

一方で、心のどこかで、こうした激しい日々が今後も続くことについて不安を感じていたのも事実です。体力、気力がいつまでも持つのか分かりません。仕事は楽しく、充実していたものの、子どもたちと一緒に過ごす時間が少ないまま、あっという間に大きくなってしまうのではないか。何かしらの変化を与えてくれる「劇薬」を求めていたのかもしれません。

最終的には①家族は一緒にいた方が良い上、海外生活は必ず子どものためになる②チャンスをつかんだ妻のキャリアを大切にしたい③会社の同行休職制度活用で失職の心配がなく、新たな挑戦となる―の3つを決め手とし、米国に渡りました。

駐夫って何?

「ところで、駐夫(ちゅうおっと)って何?」という疑問が湧いてくることでしょう。駐在員妻=駐妻は、普通に浸透している言葉だと思われます。要は、ジェンダーを入れ替えた形で、女性の海外駐在に同行した男性=駐在員の夫=駐夫という流れです。

やや古いデータ(労働政策研究・研修機構の「海外派遣勤務者の職業と生活に関する調査結果」2006年)になりますが、日本人海外派遣者の性別内訳は、男性98.2%、女性1.0%と男性が圧倒しています。駐在員に同行した帯同者は、女性が99.5%、男性はわずか0.5%です。

つまり、200人に1人の存在ということになります。

異なるデータなので、単純比較はできませんが、外務省の「海外在留邦人数調査統計平成30年要約版」(2017年10月1日現在)によれば、駐在員とは定めていないものの、国外に長期滞在する民間企業関係者の比率は男性87%、女性13%になっています。

帯同した人の性別比率は直近データが見当たらないので不明ですが、今も昔も、駐在員の世界は男性が圧倒的という事実がうかがえます。その裏返しで、駐在員同行者の世界は女性ばかり。これらから透けて見えるのは、長時間労働に代表される日本的雇用慣行下での男性優位社会の一つの断面です。

パートナーが海外赴任となれば、夫の勤務先など周囲から「妻は同行するのが当然」と思われます。1997年以降、共働き世帯数が専業主婦世帯数を超え続けており、男性も女性もバリバリ働く時代に、退職や休職を余儀なくされ、自らのキャリアを泣く泣く中断している女性は少なくありません。片や、女性自身が駐在員となり、夫が同行するケースも次第に増えているのが実情です。

背景には、女性の社会進出に加え、私が活用した「同行休職制度」が官民で広がっていることがあります。女性だけに偏っていたキャリアの中断は、少しずつですが男性にも訪れているのです。

先進国との比較はもとより、世界各国と比べても、ジェンダー間の格差問題が依然として横たわっています。そうした中、海外駐在員とその同行者という世界を鑑みると、共働き家庭における「男は仕事、女は仕事と家事・育児」という硬直的な性別役割意識が、良い意味で揺らぎ始めていることが分かります。

駐夫は、駐妻同様、滞在国では、パートナーの仕事を支えながら、家事・育児にいそしみます。中には、現地就労したり、日本の所属企業の仕事をリモートで行う人もいますが、基本的にはパートナーのビザを根拠に国外に帯同するので、駐在員の夫という範疇になります。

昭和から平成を超え、令和へ

昭和における性別役割意識は「男は仕事、女は家事・育児」というものだったことは論を待たないでしょう。失われた30年間の平成は、バブル崩壊からの後遺症に苦しみ続けられました。男女雇用機会均等法の施行などもあり、「男は仕事、女は仕事と家事・育児」と次第にシフトしてきたものの、家事・育児などのしわ寄せ、ライフステージの変化による長期間のキャリア中断は女性に偏っているのが現実です。

こうした中、内閣府が今年2023年6月に公表した「令和5年版男女共同参画白書」は、上述の固定的かつ硬直的な性別役割認識を改める必要があるという考え方を強く示し、各メディアが大々的に取り上げました。

「男性は仕事、女性は家庭(家事・育児)」という観念を「昭和モデル」と断じた上で、男性、女性を問わず、全ての人が希望に応じて、家庭でも仕事でも活躍できる「令和モデル」を実現できる社会に移り変わるべきだと提言したのです。

出所:令和5年版男女共同参画白書

白書では、男性若年層は労働時間を減らし、家事・育児の時間を増やしたいと思っていると指摘しています。一方、女性若年層は家事・育児時間を減らしたいと思う傾向が強いとも論じています。加えて、若い男性ほど家事・育児参画への抵抗感が低いとも述べています。

昭和に根付いた性別役割意識を巡り、若年層では変化が起きつつあることが浮き彫りになっているのです。

男女平等?課題が浮き彫りに… 内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」
 内閣府の世論調査で男女の地位が「平等」だと答えた人が14.7%にとどまり、調査開始以来、最も低くなったことが分かりました。  男女平等や女性活躍が叫ばれるなか、依然として厳しい現実が存在することが明らかになった形です。  内閣府が行った「男女共同参画社会に関する世論調査」で、社会全体でみた場合に男女の地位は平等になっていると思うかを尋ねたところ、平等と答えた人は14.7%でした。  調査方法が異なるため単純比較はできないものの、2019年9月の前回調査から6.5ポイント急落し、同じ趣旨の質問が設けられた1995年以来、最も低くなりました。  また、男性が優遇されていると思うと答えた人は合計で約8割に上りました。  場面別に見ても「家庭生活」や「職場」などほとんどの場面で平等と感じる人の割合が大きく低下しています。  一方、夫婦の名字や姓に関する制度の在り方を巡る議論について、身近なこととして「考えたことがない」と答えた人が半数を超え、「考えたことがある」と答えた人を上回りました。  選択的夫婦別姓に関する議論が国会で行われ、「まずは議論を深めることが重要だ」と岸田総理大臣は強調していますが、国民の関心が高まっているとはいえない実態が浮き彫りになりました。
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このトピックスで何を伝えるのか?

以上を踏まえ、最後に、このトピックスでお伝えしたいことを紹介します。

近年、女性のみならず男性の生きづらさについての言及がなされています。残業続きだった激務の政治記者から駐夫に転じてみて、得られた収穫の一つに、渡米前に抱いていた私なりの生きづらさは、男性としてのジェンダー規範、「男はかくあるべし」という性別役割意識に起因していたのが分かった、ということがあります。

男子たるもの外で長時間バリバリ働くのが当然であり、美徳だとも思っていました。まさに、「男は仕事」を体現していたわけです。

日本社会には「男はこうあるべき」という意識が跋扈しているのと同様に、「女はこうあるべき」とする意識もまん延しているのではないでしょうか。その意識とは、これまで触れてきましたが、ジェンダーに基づく役割意識です。これに男性のみならず、女性も縛られているがために、生きづらさにつながっているのではないでしょうか。

こうした背景について、政府などの公的機関、民間シンクタンクをはじめとする国内外の豊富なデータをエビデンスとしてお示ししつつ、記者から駐夫という性別役割を異国において夫婦間で交換した私の経験、客観的な事実と個人としての経験を両輪として組み合わせながら、次回以降、お伝えできればと考えています。

トップ画像:Unsplash by Peter Lawrence

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