朝ドラにみる当時の男性意識 ~男女共同参画週間を前に~

2024年6月18日
全体に公開

「虎に翼」が絶好調

 久々の記事アップとなります。お待ち頂いていた皆様、恐縮でございます。

 6/23~6/29は「男女共同参画週間」です。それに合わせた記事を、しばし展開できればと思っています。

 「はて」、じゃなかった、さて、、

 1クールで1つ視聴するかしないか程度で、めったに連続テレビドラマを視聴することがない私ではありますが、4月以降、欠かさず見ているのが、NHK連続テレビ小説「虎に翼」です。

 とはいえ、キャッチアップは2週目から。3週目ぐらいに、1週目の再放送を録画したはずが、第1話だけ取れておらず、今のところ、第2話からは全てを視聴しています。

 あくまでも主人公は、女性の猪爪寅子。日本初の女性弁護士の実話を基にしたフィクションという位置付けです。寅子の周囲には、家族や女子部の仲間を中心とした女性に加えて、男性も数多く出演しています。

 今回は、主に男性登場人物のセリフを踏まえて、当時の男性たちがどのような性別意識、性別役割意識を抱いていたかという点について、4~5月の「弁護士編」から探ってみます。

 Getty Images

「寅ちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです」

 寅子の夫となった優三の遺言となった言葉は、多くの人が心を揺さぶられ、落涙したのではないでしょうか。太平洋戦争の最中、出陣前、斯様な言葉を妻=パートナーに掛けた男性は、果たしてどれほどいたでしょうか。

 このセリフの前段は、こうです。

 「寅ちゃんができるのは、寅ちゃんの好きに生きることです。また弁護士をしてもいい。別の仕事を始めてもいい。優未の良いお母さんでいてもいい。僕の大好きな何かに無我夢中になってる時の寅ちゃんの顔をして、何かを頑張ってくれること。いや、やっぱり頑張んなくてもいい」。

 先に高等試験に合格した妻に対するリスペクトを前面に出し、ともすれば、戦場に赴いた後の自らの運命を悟りながら、寅子の今後の生き方を導いた至極の言葉ではないでしょうか。

 夫が妻に対し、自分自身の人生を歩むべきとの思いを抱き、伝えるのは、当時はもとより、果たして令和の今の時代も、どこまで展開されているか疑問が残ります。

 案の定と言いますか、このセリフはその後も回想シーンとして、優三が何回か登場し、寅子に語りかけます。仕事を辞めて、家事・育児に勤しむ日々を余儀なくされた寅子にとって、この言葉は心強く響いたことでしょう。

「それは仕事なんかしている場合じゃないだろう。結婚した以上、君の第一の務めは、子を産み、良き母になることじゃないのかね」

 個人的に、このセリフは、かなり衝撃をくらったというのが正直なところ。女性弁護士の誕生を期待し、大学女子部創設に腐心した穂高から飛び出したセリフには、中々驚かされました。

 ちなみに、穂高はこの後の裁判官編でも、裁判官任官を望む寅子に対し、違う仕事を斡旋しようと目論みます。

 まさに善意の迷惑、温情のようで非情。寅子の態度に、絶望と失望、「あなたは何も分かっていない」。そうした思い、全てが表出されています。

 職場で女性を配慮した方が善意なのではないかとして、ラクな仕事しか与えない、望んでもいないのに早く帰そうとする。今も残る企業文化と、かなりの部分で重なり合うのではないでしょうか。

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「やっと掴んだ弁護士の道を諦めて嫁に来てほしいと言えと? もし、俺についてくると言われたら、大勢の人の思いを背負った彼女の夢を奪うなんて、俺にはできない」

 寅子に思いを知り、自らも思いを寄せていた花岡。寅子の恋心を知りながらも、自らの故郷に戻って、別の女性と結婚するのを決める。妻には、家に入ってほしいと思っていた花岡が示した男性像は、当時では、すべからく当然でした。

 専業主婦を選ぶか、あるいは、やや死語になりつつありますが「バリキャリ」の妻を選ぶか。この選択を巡る価値観は、男性の女性観、キャリア観、そしてまた、女性のキャリアをどう考えるかということに集約されます。令和になっても、残る状況です。

「でも、今そんなこと言っていられる状況じゃ(ない)。僕は猪爪家の男として、この家の大黒柱にならないと」

 悲壮感を漂わせた寅子の弟、若干20歳の直明の言葉です。高等試験に合格し、弁護士として働いていた過去がある姉を前に、男子たるもの大黒柱であらねばならない、との考えを前面に打ち出したシーンです。

 これに対し、寅子は一喝します。

 「そんなものならなくていい。新しい絹布の話をしたでしょ。男も女も平等なの。男だからって、あなたが全部背負わなくていい。そういう時代は終わったの」

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 男としての力の源泉=稼ぐ力=稼得能力だという公式に呪縛されているのは、男性だけではありません。戦争終結直後の当時も、今も、確固とした性別役割分業意識は依然として、現代日本社会に影を落としています。

 声を張り上げた寅子の思いを理解できるのは、男性と女性、果たしてどちらが多いのか。大いに気になるところです。

 トップ画像:Unsplash by Samuel Regan-Asante

 

 

 

 

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