次世代計算基盤に求められるフラッグシップシステム

2024年6月4日
全体に公開

文部科学省のHPCI 計画推進委員会は2024年5月22日、「情報報委員会(第38回)」を開催し、HPCI計画推進委員会は次世代計算基盤に関する報告書の中間取りまとめ(2024年3月)を発表しました。

本報告書は、令和3年8月に科学技術・学術審議会情報委員会によって報告された次世代計算基盤検討部会の中間取りまとめ以降の国内外の情勢変化を踏まえ、次世代計算基盤のあり方について更なる議論を進めた結果を取りまとめています。

次世代計算基盤は、現代社会のさまざまな課題解決に向けて重要な役割を担っています。特に、新型コロナウイルス対策や自然災害への対応など、社会的な課題に対応するための研究開発に必要な計算資源の需要が急速に増大しています。また、AI技術の進展や生成AIの技術革新により、計算資源の重要性がますます高まっています。

以下、中間報告書のポイントをまとめます。

これまでの取組状況

スーパーコンピュータ「富岳」は、世界最高水準の性能を持つ汎用型マシンとして、新型コロナウイルス対策や自然災害対応など、さまざまな分野で多大な成果をあげています。

シミュレーションやデータサイエンスの進展、生成AIの技術革新により、研究開発に必要な計算資源の需要が急増し、AIとシミュレーション、自動実験やリアルタイムデータを組み合わせた科学研究の重要性が高まっています。

米国、欧州、中国などでは、「富岳」を上回る性能のエクサスケールスーパーコンピュータの開発が加速しており、日本もこの競争に参画しています。

半導体技術の微細化による性能向上が鈍化する中、革新的なメモリ実装技術の導入が重要視されています。また、量子コンピュータの実用化に向けた技術開発が進展しており、スーパーコンピュータとのハイブリッド環境の検討・実証がなされています。

次世代計算基盤に求められるフラッグシップシステム

次世代のフラッグシップシステムは、「AI for Science」の取り組みを通じて、科学研究の革新を推進し、国際的に卓越した研究成果を創出が必要となっています。

そのため、単一の尺度を追求するのではなく、AI性能をはじめとしたあらゆる先端分野で世界最高水準の計算能力を提供することが重要であるとしています。

また、長期間にわたって同一のシステムで運用するのではなく、多様化・拡大する需要の変化に柔軟に対応し、時代の要請に応じた性能を常に提供し続けることが必要としています。

2030年ごろには、通常のシミュレーションで「富岳」の5倍以上の計算能力、AI向けの計算能力で40~90EFLOPS程度の性能を持つシステムが必要になっているといいます。

こういった状況の中、政府では、電力性能の大幅向上により、既存の「富岳」ユーザーに対して現行の5~10倍以上の計算能力を提供し、AI性能についても運用開始時点で世界最高水準を目標としています。

フラッグシップシステムの開発・整備の手法

フラッグシップシステムの開発・整備においては、「京」から「富岳」への移行時のようなシステムの入れ替えによる「端境期」を極力生じさせず、利用環境を維持していくことが必要としています。

最新の技術動向に対応するために適時・柔軟にシステムを入れ替えまたは拡張可能とし、進化し続けるシステムとすることも重要である点も挙げています。

将来の計算資源需要への対応に貢献し得る新しい技術に関しては、AI技術の次の技術革新を含めた中長期的な視点から技術評価・研究開発を継続し、システムの入れ替え・拡張の際に反映させることも重要であるとしています。

利用拡大に向けた取り組みと今後の検討方針

政府では、各研究機関の連携によるHPCIに接続される計算機の戦略的な整備、一体的な運用のための体制・制度については、フラッグシップシステムの性能・仕様を踏まえて整備を進めるため、今後数年でさらに検討を深め、具体化する予定です。

アプリケーション開発においては、シミュレーションを中心とする計算科学をさらに発展させるため、加速部の導入などに際してもこれまで整備してきたアプリケーションが安定して利用できるようにするとともに、幅広いアプリケーションの利用を促進していくとしています。

次世代フラッグシップシステムの整備により、挑戦的な課題に取り組む環境を提供し、革新的な成果の創出を目指すとともに、人材育成にも貢献していく方針です。

データサイエンスやAI技術とシミュレーションの融合、リアルタイムデータ処理などのデータの収集、処理を効率的に行うためのデータ基盤の在り方についても今後検討していくとしています。

量子コンピュータについては、現時点で実用的な計算基盤として広く提供する段階には至っていないものの、スーパーコンピュータとのハイブリッド計算の検討・実証が進んでいることを踏まえ、量子コンピュータを用いた計算を試すことができる環境を整備することを目指しています。

さらに、日本の技術の発展や人材育成を推進するため、スーパーコンピュータの整備・運用・利用に係る関係国との連携を強化し、特に米国との協力関係を強化することを目指しています。

今後の展望

これらの取り組みが進んでいけば、日本は科学技術の先端を走り続け、世界的な競争力を保持することにもなり得るでしょう。

特に、AI技術の進展と計算資源の需要が高まる中で、次世代計算基盤の整備は今後の日本の未来を想定する上でも重要な要素となります。

特に、2030年ごろの実用化を目指したエクサスケールスーパーコンピュータの導入は、計算能力を飛躍的に向上させ、産業競争力の強化にも寄与するでしょう。

そして、自国の技術を中心にスーパーコンピュータを開発・整備する能力を確保し、人材育成や産業競争力の維持・発展に貢献することも重要です。

次世代計算基盤の整備が日本の科学技術の発展と社会的課題解決に不可欠であり、次世代フラッグシップシステムの開発を通じて、計算能力を飛躍的に向上させ、産業競争力の強化にも寄与していくことが期待されます。

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