日本の出生届を記入する際の「普通から外れると辛い」違和感

2022年12月15日
全体に公開

先月、米国中間選挙の歴史的なLGBTQ議員の歴史的な当選を記事に書きました。

この歴史的勝利を追うように昨日アメリカでは同性婚の権利を連邦レベルで擁護する法が成立し、バイデン大統領が著名しました。

先月の記事にも書きました通り、私の周りには本当に多くの多様な家族があります。子ども達のかかりつけの小児科の先生はゲイの男性ですし、お互いを真剣に思うパートナーと結婚しています。他に子ども達が関わる医療者にはトランスジェンダーでホルモン療法によって性転換をした男性もいます。彼も結婚をして、子どもを2人育てています。

そのような日常の中で生活する私にとって、息子達の日本国籍を取得するために出生届を記入した際は、様々な点で、違和感を感じました。

「父母の婚姻届が提出されていないと、出生届は受理できません。出生前に提出するか、出生届と同時に提出してください。」

息子の出生届を提出するために何が必要かを調べるために複数の在米日本領事館サイトを訪れると、このような注意書きがありました。この最初の注意書きの項目を見るだけで、どれだけ日本で画一的な家族体系しか許されないが明瞭で、この画一の「普通」から外れるとどれだけ生き辛いかが目に見えました。

「父母の婚姻届が提出されていないと、出生届は受理できません。出生前に提出するか、出生届と同時に提出してください。」という注意書きに関して、実際には子どもが日本の「戸籍に両親の子どもとして記載される」ためには「父母の婚姻届が必要」ということでしたが、どうして男女の「父母」と決まっていて、どうして「婚姻届」が必要なのだろうと考えさせられました。

未婚のカップルにも子どもは生まれます。精子ドナーを利用してシングルマザーになる選択をする母もいます。いまだに日本では結婚の権利がない同性カップルも子どもを授かります。様々な事情で結婚したくない相手との間にできた子どもを産む女性もいます。生まれる前から養子として子どもを迎える準備をしている親もいます。出生届を記入する際、子どもの名前の次が、嫡出子か非嫡出子を記入する欄でしたが、アメリカの出生届のように男女の規定もなく、「親」という欄がいくつかあり、埋めるべき数だけ埋めるのではダメなのだろうかと思わずにはいられませんでした。

私自身は性的オリエンテーションはストレートで、男性である夫と一緒にパートナーとして生活していて、アメリカでは法的にも結婚していましたが、選択性夫婦別姓や同性婚といった国民の結婚にまつわる権利が尊重されていない日本の制度において、特権的な立場にある自分自身が結婚することに違和感を感じていたため、日本では婚姻届を出していませんでした。しかし、長男の出生届を出す際に必要だったので、その場で夫と日本の婚姻届を出すことにしました。

婚姻届を出す際、私が親の世帯から抜け、新しい世帯の「世帯主」になり、そこに配偶者と子どもが入るという構図にとても違和感を感じました。なぜ親の世帯から抜けなければならないのか、さらになぜカップルのうち一人が「主」になる必要があるのか、どうして子どもと片方の親が同等の並びなのか。また、配偶者が外国人の場合は、配偶者は戸籍には載らないということも知りました。

さらに、外国籍の配偶者との結婚の場合は、配偶者が戸籍に入らないため、選択的夫婦別姓が認められるということも、初めてここで知りました。そもそも別姓であった私達夫婦にとっては非常にラッキーでしたが、日本国籍同士の結婚は同姓でなければならないのだろうか、と不思議に思いました。

また、日本の戸籍制度とは別ですが、片方の親がもう一人の親の了承をえずに子どもを海外へ連れ去ることを防止するハーグ条約によって、精子バンクの精子によって妊娠出産した友人は、子どものパスポートを出してもらうのに苦労された話を聞きました。出生届には父親の名前の記載がなくても、父親の承諾なくしては渡航券を渡せないと言われたそうです。出生届を両親の名前で出すのには親が結婚してなければならないので、逆に出生届が片親記載の場合は、なんらかの理由で親同士が結婚していないか、認知してない親がいるのか、精子バンクなどとを使ったassisted reproductionかだと思うのですが、どの場合でも、その場にいない親の同意を得るのは不可能に近い状況でしょう。

それぞれきっと背景や理由のあるルールなのだと思います。

しかし、夫、妻、その間にできた子ども、という家族構成から外れた場合には、とても生き辛いシステムなのではないかと感じるプロセスでした。

(Photo: Getty Images)

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