恩師から教わった小児精神科医の責任
小児精神科医として私を育ててくれた恩師であり、直属の上司だった医師が先月亡くなり、彼の言葉を思い返しています。
「子どもを精神科医に連れてきた親に対して、子どもの症状はあなたが○○だからとか○○してないからと責めては絶対にダメ。彼らは困っていて支えがほしいから来ているのであって、小児精神科医としての役目は正に彼らを支えること。困っている状況を変えるための策を提案すること。」
「子どもの精神科の治療、特に薬剤に関しては『薬を飲んで副作用が出たらどうしよう』と親も医師も怖がってしまうこともあるが、その時に考えなければならないのは『治療するリスクと共に治療しないリスクもある』ということ。苦しんでいる子どもに処方をしないという選択はその苦しみが続いてしまうというリスクがあることを忘れてはならない。」
「どんなに色々な治療法や薬剤を試しても回復しない場合も『もうオプションはありません』とは絶対に言ってはダメ。少しでも状況を改善するための努力は必ずできることが残っているから、考えることを辞めてはダメ。」
「遅くてもいいから止まらないこと。馬を降りてしまうと再スタートは難しいけど、遅いスピードでも前に進んでいれば、その貯蓄が形になる。」
最後の言葉は、私が長男を産んで半年後くらいの時期に、出産前と同じようなスピードで論文を書けていないことに焦りを感じていると相談したときにかけてもらった言葉でした。
小児精神科医として患者さんのために働く優しい熱意、脳科学者としてサイエンスを通して正しい理解で小児精神科という分野を前進させるコミットメント、女性も男性も家庭を大切にしながら生き甲斐を持って働ける環境を作ること、我々ハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院小児精神科の現リーダー達全員で受け継ぐ決意を共有しました。
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