日銀総裁の報道で盛り上がってる意味が分からない人が読む記事

2023年2月9日
全体に公開

 日本経済新聞が6日の早朝に「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診 政府・与党が最終調整」という記事を配信したことで、私の周りを含めて金融業界の方はざわざわしております。一方で、金融業界に属していない知人や友人は、報道でそこまで騒ぐ意味が分からないと言います。今回は日銀総裁人事に関する報道について私に寄せられたユル~イ質問にざっくりと答えてみます。

日銀総裁って誰がやってもよくない?

日銀総裁が誰であっても私たちの生活には影響はなくて、影響があるのは株とか為替の取引している人だけでしょ?という質問を受けました。そういう感覚になるのも分からなくはないですが、実際はそんなことありません。新総裁が黒田さんの政策を維持するということであれば、現状と変化はありませんが、仮に金融緩和を解除し、次第に利上げをするということになれば、住宅ローンに適応される金利は上昇しますから、返済負担は高まりますし、事業をやっている方からすれば借り入れをする際の金利負担も高まります。金利変動に伴い為替も大きく動きますから、海外旅行しづらくなったり、海外から輸入するものの値段が安くなったりするなど、生活にも変化を与えます。

黒田さんってどうだったの?

 そもそも、黒田さんって10年間も日銀総裁の座にいたわけだけど、総裁としてどうだったの?という質問も受けます。就任した頃に「2%の物価目標を一日も早く達成するためにやれることは何でもやる」と述べていたように、金融政策として出来ることは幅広く実施したと思います。しかし、金融政策だけで全ての経済問題が解消されることはなく、財政政策と両輪で押し進めていかなければいけないのに、政府が消費増税をはじめブレーキを踏むような政策を何度もしてしまったため、目標としていた経済環境を実現するまでには至りませんでした。

投資家っぽく喋るためのショート解説

 日本経済新聞の報道後に為替が円安方向に大きく動いた理由も聞かれますが、これは雨宮総裁誕生なら黒田路線、つまり金融緩和を維持すると市場が受け取ったのでしょう。ただ、個人的にはこの受け止め方はどうかなぁ、と思います。黒田体制で副総裁を務めている雨宮さんだから黒田路線を継承するというのは根拠がありません。雨宮さんを知る方に聞くと、カメレオンのように対峙する相手にあわせて柔軟に動く人だと評する方が多いです。つまり、黒田体制における副総裁という立場から、自分が総裁という立場になり、政府側のトップには岸田首相ということになれば、これまでとは違う考えを持つようになっても不思議ではないのです。

陰謀論と激おこぷんぷん丸

 そもそも、まだ人事案が提出されていない段階で、なぜ日本経済新聞社は「雨宮さん」に打診があったと報じたのでしょうか。陰謀論のような解説として、事前に雨宮さんと報道することで、その人事をつぶそうとしたというものがあります。実は過去には事前に漏れている人事案は採用しないというルールはありましたが、既にそれは廃止されているため、その陰謀論はないのでしょう。

 それでは、こんなにも早打ちした理由は何か。おそらく、過去数回にわたって、日銀関連のスクープを他紙に先行報道されてしまったために焦ったのではないでしょうか?

 いずれにせよ、今回の報道通り雨宮さんが総裁就任ということになれば、日本経済新聞に情報をお漏らししたクチの軽い人間が内部にいるということになりますし、今回の報道通りにならないとすれば、ある意味では誤報したうえにそれによって相場を大きく動かしてしまったことになりますから、どちらの結果に転んでもよろしくないですよね。激おこぷんぷん丸です。

 前回の黒田総裁就任の際も、直前に某メディアが似たような早打ちをして、見事に外したケースもありますので、今回も雨宮さんではなくて中曾さんだった、みたいな展開も十分あり得ますし、はたまたサプライズ人事の可能性だって、まだあり得るのです。

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