遂にテスラ サイバートラックの納車開始!発表から4年を経てデリバリーイベントが行われた

2023年12月1日
全体に公開

「世界の自動車メーカーで起こっていること」トピックオーナーの前田謙一郎です。

アメリカ中部標準時間の11月30日午後2時、テキサス、オースティンのテスラ ギガファクトリーでサイバートラック (Cybertruck)のデリバリーイベントが行われました!(日本では12月1日の朝5:00から)

アメリカでは多くのメディアやYou tuberなども同時ライブで取り上げており、開始前からとても盛り上がっていました。私も朝からライブを見て、興奮冷めあらぬままこの記事を書いています。

イベントはテスラでよくあるように30分くらい遅れて開始。ギガファクトリー内で行われており、そこまで規模は大きくありませんでしたが、最初のオープンロールから未来感に溢れた演出でした。

オープニングでイーロンがサイバートラックに乗って登場しましたが、少しステージが暗かったかな、、最初はカメラワークも悪くイーロンの顔が暗くて見えないという、相変わらず、ヒヤヒヤする手作り感のあるライブでした。

https://x.com/Tesla/ 常時10万人以上がライブ視聴をしていた

今年の10月くらいから西海岸を中心にたくさんのサイバートラックが目撃されるようになりましたが、本当にこのようなプロダクトが世の中に出るのは元テスラ社員としても嬉しい限りです。テスラのXで録画が見れますので、ぜひ見てください。

早速ですが、デリバリーイベントとその内で明らかになったサイバートラックのスペックや価格、今後の展開について纏めてみました。

サイバートラックはとにかくユニーク

サイバートラック 画像提供元:Tesla, Inc.

サイバートラック(Cybertruck)は、テスラが2019年に発表したピックアップトラックモデル。独特なデザインと割れないはずのアーマーガラス(強化ガラス)をデザイナーのフランツが鉄球をガラスに投げつけて本当にヒビが入ってしまうという発表会でのパフォーマンスがバズり、大きな注目を集めたモデルでした。

以前よりイーロンもサイバートラックは大量生産される前に、多くの改良が必要だと認めており、ここまで来るのに発表から4年近く経っていることになります。また、これまで100ドルの予約金で予約ができたため、全世界で200万台以上の予約が入っていると報じられており、この車に対する期待の高さの表れでした。

サイバートラックの魅力はゼロエミッション、FSD(Full self Driving 自動運転機能)、EVならではの静粛性とパワーを持ちながら、その強靭なルックスの通り、高い耐久性と乗員保護、牽引能力や積載能力を実現していること。ピックアップトラックを究極に進化させたモデルなのです。(個人的にはマッドマックス的なデザインが大好きですが)

サイバートラックのラインナップと価格が明らかに

今回、イベントと同時にUSのサイトが更新され、以下のように3つのラインナップとなりました。エントリーの後輪駆動モデルは60,990ドルで、日本円で約900万円。”サイバービースト”と呼ばれるトップモデルは99,990ドルで約1480万円となります。(12月1日の為替レートで換算)

Rear-Wheel-Drive – $60,990 / 250 miles 
Dual-Motor All-Wheel-Drive – $79,990 / 340 miles
Tri-Motor “Cyberbeast” – $99,990 / 320 miles 

円安のため、日本円にすると高く感じますが、アメリカでは以前の予測よりは安くエントリーモデルが発売されたというコメントが多くありました。

https://www.tesla.com/cybertruck/design

トラックよりも実用的でスポーツカーよりも優れたパフォーマンス

イベントの中で改めてサイバートラックの性能をイーロンが説明しました。

・強靭なボディーやテスラアーマーガラス(フランツがまた鉄球らしきものを投げるパフォーマンス、今回はひび割れなし)
・バッテリーによる低重心のため横転等しにくく、高い正面衝突安全性能
・Tommy Gun(トムソン銃)で撃たれても防弾するボディー
・11,000lbs の牽引能力と2,500 poundsの積載能力、アメリカではトラック性能はこの二つで評価されます
・モデルSよりも小さく回転できて取り回しがし易い

などなど、多くの実用的機能が紹介されていました。牽引能力についてはFordのFシリーズやRivian R1Tとの比較においても圧倒していました。

そして、またまたスポーツカーよりも速いことを証明するために作られたのが、ポルシェ2023年モデル911との比較。0-60マイル加速(日本で言う0-100km加速)の比較で、サイバートラックの方が速いという動画です。

以下の0-60マイル加速のゴール地点映像のように、サイバートラックの方が911より速い!という事なのですが、面白いのは、なんとそのサイバートラックがポルシェ911を牽引しながら走っていることでした笑

https://x.com/Tesla/ 0-60マイル加速のゴールで。サイバートラックは911を牽引しながら走っている

もちろん、スポーツカーとは直線加速だけでなく、曲がる、止まる、ボディー剛性などを含む総合的なドライビング性能であり、その点で911は紛れもない素晴らしいスポーツカーなのですが、サイバートラックの加速能力や牽引能力が高いことを証明するには面白い演出でした。この比較動画はこちら

なぜピックアップトラックがそんなに注目されるのか?

Ford F-150  画像参照元: https://www.ford.com/trucks/f150/gallery/

日本にいると、なんでアメリカでこんなにサイバートラックが注目されるのかよくわからないと思います。日本にはピックアップトラックのマーケットは殆ど無いのですが、アメリカでは伝統的にピックアップトラックはアメリカ的フロンティア精神を体現する国民的な人気車型であり、非常に大きなマーケットがあります。

日本で例えると軽自動車が細い道や住宅街を走るのに適しており、人気がある事と似ています。(2022年日本で一番売れた車はホンダの軽自動車N-Box)

実際にアメリカの2022年販売トップ3はFord F-Series: 653,957台、Chevrolet Silverado: 523,249台、Ram Pickups: 468,344台であり、トップ3全てがピックアップトラックなのです。4位からやっとSUVであるトヨタのRav4が入っていますが、トヨタもTacomaを237,323台売っており普通のセダンやSUVより大きなセグメントであるということがわかると思います。

大きな市場があるがゆえにテスラのみならず、イベントでの比較にあったようにFordも電動ピックアップトラックとしてF150 Lightningを作っていますし、新興メーカーのRivianもR1TというEVのピックアップモデルで市場参入をしています。

RivianのR1T 画像参照元: https://rivian.com/r1t

日本でのデリバリー開始時期や人気は?

今回、アメリカでデリバリーが開始されたことで、今後、他の地域にも順次ロールアウトされていくと思いますが、テスラに限らず多くの自動車メーカーにとって日本市場は縮小傾向にありプライオリティーが低くなりつつあるため、日本に来るのは結構時間がかかるかもしれません。

また、サイバートラックのサイズは231.7インチ(5885mm)、全幅が79.8インチ(2027mm)、全高が75.0インチ(約1905mm)ですので、大型SUVをさらに長くしたようなサイズ感で日本ではかなり持て余すサイズかもしれませんが、これに乗っていたら目立つことは間違いありません。

日本では実はメルセデス・ベンツのG-ClassワゴンやJeepのラングラーというクラシックなジープ・SUVタイプも売れており、サイバートラックも日本で人気が出る可能性は十分にあります。

今後がますます楽しみ

2019年の発表時は私もテスラに在籍しており、サイバートラックが何か全くわからないまま、日本向けウェブサイトの準備して苦労したりと、とても思い出深いモデルです。

テスラのミッションは「持続可能エネルギーへ社会の移行を加速する」、乗用車だけでなくセミ(Semi)によりトラック・物流にもゼロエミッションを導入、そして今回、北米で最も量販されているピックアップトラックも電動化することで、乗用車からトラック、物流まで車社会全体を変えて行こうとしています。

イベントの最後にイーロンが言っていた一言、「This is really gonna change the look of the road, and finally the future looks like a future」がとても印象的でした。

https://x.com/Tesla/ 最初の顧客にサイバートラックを納車するイーロン

日本でも早くサイバートラックが走って欲しいなと、ますます待ち遠しくなりました。

著者:前田謙一郎 マーケティングコンサルタント&自動車業界アドバイザリー。テスラ・ポルシェなどの外資系自動車メーカーで執行役員等を経験後、2023年Undertones Consultingを設立。20年以上の業界経験から、自動車産業の未来、電動化、マーケティング、ブランディング等に関してメディアでの登壇やインタビューなどを行う。

メディア出演、講演、インタビュー記事

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