【秘伝スカウト文も公開】採用の三重苦...クラフトバンクが100名規模まで拡大できた理由

2023年11月24日
全体に公開

スタートアップにおける採用活動は、事業成長に直結する重要な要素です。

しかし、認知度が低く、給与水準も低いアーリーステージの段階においては、優秀な人材を引き付けることはそう簡単ではありません。

そんな中、建設テックの「クラフトバンク」は、アーリーステージ・ステルスでの事業展開(積極的な発信をせずに秘密裏の状況)・レガシー産業と、採用の三重苦を抱えているにもかかわらず、わずか3年で100名規模にまで組織を拡大してきました。

なぜ、クラフトバンクはこれほど順調に採用活動を進めることができたのか。独自の採用アプローチに迫ります。

☕️coffee break

前編『建設テック「クラフトバンク」が爆速成長。鍵は"徹底的なカスタマーサクセス"』で触れたように、同社は工事会社に特化した経営管理システム「CraftBank office(クラフトバンクオフィス)」を提供しています。

2021年9月から、約2年間はステルス(秘密裏)で「CraftBank office」事業を展開し、2023年9月に正式リリースを行いました。

現在、この「CraftBank office」事業の拡大に向けて、組織を急拡大しているところです。

「設立直後からの社員数の推移」

  • 21年4月(設立直後):30〜35名
  • 23年1月:38名
  • 23年11月20日時点:85名

MBOによる会社設立(ユニオンテック社で立ち上げた事業を分割)のため、設立時から社員数は30名規模ですが、2023年に入ってから、すでに2倍以上に拡大しています。

年内には、業務委託・インターンなどを含めると、100名規模になる見込みです。

韓英志 代表「過去に資金があるから採用をすると、うまくいかなかった経験があるので、2年間は採用を極力控えて、工事現場に足を運びながらプロダクトの開発に注力する方針でした。

『クラフトバンクオフィス』が自信のあるプロダクトに仕上がり、2024年問題が間近に迫る中、業界の課題解決にさらに貢献していくため、採用のアクセルを踏む決断をしました」

*2024年問題:建設業界では人手不足が深刻なため、残業の上限規制が猶予されていましたが、24年4月から月45時間以内・年360時間以内に抑えることが求められます。上限を超過した場合は罰則が課されます。

この経営判断を受け、CHROの岩本光博氏を中心とするわずか3名のHRチームで猛烈な採用アプローチがスタートします。

  • 建設業界に原体験がある人がほとんどいない中で、どうやって魅力を伝えていくか
  • 事業戦略が不明確なアーリーステージの段階で、いかにして中長期で実現したい世界に共感してくれる人を見つけるか
  • 限られた人材リソース

この3つを踏まえ、自社の魅力が最も直接伝わる「スカウトによるダイレクトリクルーティング」に注力することに決めたのです。

「最初の2ヵ月は全ての採用媒体でアカウントを作って、朝から晩まで限界までひたすらスカウトメールを送り続ける毎日でした。このときは思い出したくもないくらい、ハードワークをしましたね笑(岩本氏)」

その結果、2023年5月には521件、6月にはなんと799件ものとんでもない量のスカウトを送っていたのです。

これを踏まえ、3ヵ月目からは媒体の精査・スカウト文のブラッシュアップなど、数字をもとに分析。中長期的に一緒に伴走する仲間となるかもしれない人にどういった成長機会を提供できるのか、といったアプローチの質にもこだわるようになりました。

🍪もっとくわしく(スカウト文も公開!)

そこからたどり着いた最適なアプローチは、次の通り。

  • 精査した媒体の中で24時間以内に転職意欲が高まった人は全員チェック
  • クラフトバンクとの共通項、魅力を3つ以上見出せると即座にスカウト
  • 全てのスカウトメッセージで各候補者に合わせた内容の作成にこだわる

建設業界は原体験を持つ人が少ない業界です。どんなに優秀な人でもほんとに活躍するまでには最低半年はかかると思っているので、即戦力採用という概念はあまりなく、"社会を変えたい"という想いが強い人をいかに仲間にしていくかを考えています。

改善後のスカウト文では、建設業界に馴染みのない人でも興味を持ってもらえるよう、あえて話し言葉を使って、共通項や共感したポイントについて言及するようになっています。

現在は月平均200件弱のスカウトを送信していますが、必ず候補者のプロフィールを見て感じた魅力を最低3個送るようにしていますね(岩本氏)」

【必見】クラフトバンクのスカウト文改善(Before→After)

改善後のメッセージでは最後に自社の魅力を箇条書きで記載するようにもなっています

当初は4-5%だったスカウトへの返信率が、平均15-20%、最大で30%にまで上昇

スカウト返信後、90%がカジュアル面談を希望

カジュアル面談後、60〜70%が選考を希望

10%に入社オファー

うち、60%が入社

こうした短期間での熱烈なアプローチにより、多くの候補者はクラフトバンクから入社オファーをもらってから、1〜2週間が経ってから、初めて他社からスカウトがくるとのこと。

「クラフトバンクの社員バックグラウンド」

クラフトバンク資料より

🍫ちなみに

多くのスタートアップでは初回・もしくは2回目の面談から、代表や経営陣が直接候補者と対話することが一般的です。

しかし、クラフトバンクでは建設業界に興味を持ってもらうことを第一に考えていることから、基本的には最後の面談まで代表の韓氏が出てこないことが特徴です。

「初回のカジュアル面談では約40分の会社説明を行っています。しかし、1企業の会社説明ではなく、建設業界の課題にフォーカスして、まずは興味を持ってもらうことを重視しています。

建設業界はどのような構造になっており、日本社会でどのような役割を果たしているのか。現在、どのような課題に直面しているのかなど。

まだまだ多くの方はクラフトバンクのことを知りません。そのような状況でカジュアル面談をしてみようと思っていただけた方々に宝を見つけてしまった、という体験を届けられるように工夫をちりばめています(岩本氏)」

こうした超速スカウトとストーリーを重視したアトラクト(業界に興味を持ってもらう)にフォーカスすることで、採用の三重苦を抱えながら、わずか3年で100名規模まで組織を拡大させたクラフトバンク。

クラフトバンクの採用戦略は、業界の変革を目指す多くのスタートアップにとって大いに参考になるのではないでしょうか。

サムネイル画像:DALL·E 3による画像生成(職人が現場で勤怠管理をしているイメージ)

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