2023年総まとめ「農業10大ニュース」

2023年12月30日
全体に公開

 農業関係のニュースはなるべくPICKコメントを残そうと普段から心がけておりますが。自分自身の備忘のためにも2023年農業10大ニュースを振り返ってみたいと思います。
もちろん選んだ10個は私の独断に過ぎませんので悪しからず。

①    農業ベンチャー2社が上場

産直ECの「ポケットマルシェ」で知られる(株)雨風太陽(高橋博之代表)が東京証券取引所グロース市場へ
体験農園、農業大学校などを展開する㈱マイファーム(西辻一真代表)が東京証券取引所TOKYO PRO Market

に上場しました。事業の伸びしろを考えるとITベンチャーのような急成長は見込みづらいなか、両社とも「一次産業の関係性人口」に着目して地方の自治体など行政と連携した事業が広がりそうです。
どちらの会社も個人的にも長年仕事でご一緒したり取材も何度もさせていただいたこともあり、今後の展開に着目しています。農業界隈での上場など社会的インパクトを重視したアクションが後に続いてくれることも期待しています。

②    猛暑で生産に打撃

今までも暑い夏は何度もありましたが、知り合いの農家でもかつてない打撃を受けたという話をよく聞きました。高温すぎて障害が出るレベルなので、今後の作付けや品種改良が求められます。

この件に関してはこちらに詳しく書きました。

③    水田のメタンガス削減が商売に?

脱炭素の文脈で、最近急に話題になっています。農研機構という独立行政法人による研究成果をもとに水田から発生するメタンガスを削減させようというもの。

日本発の研究であり「みどりの食料システム戦略」(農林水産省の脱炭素、持続性の政策目標)でも重要案件と位置付けられていますが。日本の里山生態系への影響は軽視できないのではと考えています。

こちらの記事にて私の考えをPickしています。

④    レーザー光で害虫を撃ち落とす新技術 「2023年農業技術10大ニュース」より 

農林水産省の「農林水産技術会議」が選定している2023年の農業技術10選より

薬剤抵抗性を有する蛾の一種「ハスモンヨトウ」について、青色半導体レーザーを照射して撃墜することに成功。レーザーのパルス光を照射し、胸部や顔部が急所であることを発見するとともに、飛翔予測、追尾、狙撃するための技術を開発。化学農薬を使用することなく駆除できる技術として期待されます。

ということで、夜の畑のスターウオーズっぽくて夢があります。イノシシやシカなどの獣害もこういう路線で取り組むのがいいと思っています。

⑤    オーガニックビレッジ宣言 自治体 全国92カ所w

自治体単位で「有機農業の推進」にとりくむオーガニックビレッジ宣言。全国92の自治体が参加しています。

なにせ取り組むと国から1500万円の予算がつきます。しかしその多くが行政の都合で見切り発車している模様。
実態をともなわず、農業現場に混乱をもたらす可能性が高いであろうことが予想されます。

その問題についてはこちらに書きました。

⑥   「 2050年農家が8割減る」論争

9月17日の日経新聞「農家が8割減る日 主食はイモ、国産ホウレンソウ消滅?」という記事のタイトルに対して、様々な意見がネットでもやり取りされました。

主な反論は「日本の8割の農家はそもそも小規模で生産性も低い、むしろそういう小規模農家がリタイアして大規模農家や法人に農地が集約されたほうが日本農業の生産性は圧倒的に上がり、食料危機はむしろ回避される」というもの。

2022年の刊行ですが「農家はもっと減っていい」(久松達央 光文社新書)という有名農家自らの著書も話題になりました。

そもそも日本の農業は実に多様で単に生産性や食の供給で語れるものではありませんが、私自身は地域の歴史文化と紐づいた農業がどれぐらい残れるのか関心が高いです。

⑦    ウクライナショック、肥料など農業資材高騰

世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵略等の影響により、化学肥料原料の国際価格が大幅に上昇し、肥料価格が急騰、ということで農林水産省でも対策事業に取り組み始めました。肥料は確かにほぼ海外依存であるので、今後国内資源を使った肥料製造の界隈が熱くなってくるのは間違いないでしょう。個人的に注目しているのは下水汚泥からの肥料成分抽出です。

https://newspicks.com/news/9281594?ref=user_169526

⑧    米国で日本人によるイチゴ栽培工場「Oishii Farm」話題に

アメリカで日本人の起業家が植物栽培工場の技術を使って日本の品種でイチゴを生産、アメリカのビジネス界隈やセレブの間で話題となり大型の資金調達も実現というニュース。垂直農法やLEDを使った農業に私自身は懐疑的ですが、こういうニュースが農業界を活気づけるのも事実なので注目しています。

コメントは2022年のニューズピックス特集記事へのものですが
こちらに詳しいです

⑨    農産物輸出額 過去最高記録更新

円安の影響も大きいと思いますが輸出が好調です。国も大きな成果として喧伝しやすいネタですが。この「農産物」のなかには調味料や加工食品の比率がかなり高く、その原料の多くは輸入であろうことを考えると、決して日本の農産物が海外でガシガシ売れていわけではありません。とはいえ、輸出に力を入れていかないと人口減、超高齢化の日本としては厳しいのは目に見えているので、このジャンルについて本気で取り組んでいくことは重要だと思います。個人的には日本酒や焼酎が海外で高級酒として、また茶がコーヒーに代る嗜好飲料としてもっと普及してほしいと思っています。

⑩    全国都市農業フェスティバル開催

これは私の専門が都市農業であるからなのトピックですが、練馬区で11月に名古屋、京都、千葉などから行政担当者や都市農家を集めて開催されました。2019年には世界都市農業サミットも練馬で開催されており、練馬区が日本の都市農業を代表する自治体として奮闘しています。都市農業はまだまだこれから話題が多いと思います。東京の農業が世界的に見ていかにユニークであるのかというのはこちらに書きました。

2024年度の農業界注目トピックス

ということで、
最近物忘れも激しくなってきている自分自身のためにも書きました。
そして、来年注目のトピックスは

「食料・農業・農村基本法」が大きく改正されるといわれているがいかに?

物流の人材不足は農業界にどのような影響を与えるか?

喫緊の課題、肥料の国内製造はどこまですすむのか?

というところです。7月からトピックスオーナーとして拙稿をお読みいただきありがとうございます。

来年もなるべく月3記事以上は投稿できるように精進いたしますので、よろしくお願いします。

応援ありがとうございます!
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