メタバースが「普段使い」になる日
前回は、メタバース施策をやるのであれば、メタバースを公開するだけでなく、TVや新聞への掲載やXやYoutubeでの拡散など、今現在、我々が生活のなかで「普段使い」しているメディアに露出することで、地に足の着いたメタバース施策となり、それが成功の秘訣であるというお話をしました。
ただ、参入企業にとってはメタバース自体が生活の一部に取り込まれた「普段使い」の状態になり、一本足でも施策が成立するようになることを期待していると思います。私もよく「メタバースはいつ普及するのか」と質問されます。そのとき私は「もう普及してますよ」と回答します。もちろん、期待しているような夢のようなメタバース生活はまだまだ普及しているとはいえないですが、現時点で一足先に独立して成り立っているコンテンツは、実は存在しています。
先進テクノロジーが「普段使い」になるまで
新たなテクノロジーが、人間の生活に定着して、日常的なものになっていくことで、私たちの生活はどんどん豊かで便利になってきました。
例えば、過去のインターネットやスマートホンの進化は分かりやすい例です。遠隔での非同期コミュニケーションは、手紙やFAXがメールに変わり、そしてメッセンジャーアプリへと移り変わっていきました。最初は「手書きじゃないから心がこもってない」「赤外線通信ができない」「絵文字が送れない」など言われてきたサービスも、瞬く間に広い世代に浸透して、“使うことが当たり前”に。最近では、ChatGPTのような生成AIが良い例です。こちらもサービス発表後にあっという間に普段使いされて“使うことが当たり前”になりつつあります。
ChatGPTは公開2か月で世界ユーザー数が1億人を突破. NRIが行った日本のChatGPT利用動向調査によると、61.3%がChatGPTを認知し、12.1%が実際に利用したことがあると回答. ChatGPT利用者の9割近くが継続して利用したいと回答し、肯定的なコメントが大半を占める結果に
これまでは、裏でAI技術が動いていたとしても「自分がAIを使っている」という手触り感をもって利用する人は多くなかったと思います。今日では、一般のサラリーマンや主婦も、プライベートや仕事で画像や文章生成にAIを活用することは珍しくありません。
生成AIを広くとらえると、必ずしも本質的なAIの価値は“画像生成”と“文章生成”ではないですが、一般の人から見ると、直近のこの2大機能がまさに、インターネットにおける検索機能や、日本スマホ市場におけるLINEなどに類似した、AIをマスアダプションさせるキラーコンテンツと呼べるでしょう。
「メタバース」の本質価値は普段使いには重い
上記のように、先進技術には、本来のポテンシャルよりは本質的なものではないかもしれないですが、マスに対して受け入れやすく、先んじて普及のきっかけになるキラーコンテンツが存在していると思います。
メタバースもまた、将来的に私たちの生活のさまざまな場面に活用され、根付いていきます。現時点で非常に期待されているのは、物理的な障壁の撤廃や、質量を低いコストで生み出せることによる人の所有欲などの欲求の変化、豊かさへの考え方のパラダイムシフトが生む脱成長価値観による幸福度の増加、コミュニケーションにおける情報量の爆増による人間関係や言語変化など、有史以来の意思伝達のレベルアップ・・・など挙げだすときりがない(かつややこしい)ですが、最初はそのような本質的な価値よりも、目先の価値のほうが、圧倒的に浸透しやすいと思います。
現時点でも普段使いできる3つのジャンル
すでに広く受け入れられ、私たちの日常生活に取り入れることが可能な「普段使いのメタバース」は存在しており、これを知ることで、メタバースを導入する際の大きなヒントにもなります。まず考えられるのは以下の3つの分野です。
①ゲーム
語る必要もないかと思いますが、1つ目はゲーム。ネットゲームと同じ世代に育った方はレッドストーンやFFのなかで生活していた人も少なくないですし、まわりにいわゆる「ネトゲ廃人」と呼ばれる方もいらっしゃったのではないでしょうか。すでに、私たちは普段からゲームというバーチャル空間を楽しんでいるので、言わずもがなの分野です。
また、近年ゲーム作りはUnity、UE、blenderなどの手に取りやすいツールによって民主化し、多くの大ヒットインディーゲームが生まれ、さらにUGCタイプのゲームプラットホームが台頭することで、よりゲーム作りが身近なものになっています。
例えばRobloxのDAU(1日のアクティブユーザー数)は7,150万人にまで成長しており、UGCによるコンテンツ増殖によるさらなる成熟が予想されます。日本でも上場しているゲーム企業が収益貢献を目指すフェーズに入ってきています。
②フィットネス
2つ目はフィットネス。こちらがわかりやすいのは、メタバースという曖昧な存在のテクノロジーのなかにおいて、利用することで定量的な結果(体重の減少や筋力の増加など)を得やすいという意味で、ユースケースのひとつになっていっています。
例えば、Beat SaberというVRゲームがあります。チェコの会社が開発した世界的にヒットしたVRのいわゆる音ゲーで、のちにMeta社が買収しました。
フィットネスゲームというわけではないですが、没入感のあるエンターテイメント空間のなかで、夢中になって体を動かすことができるので、実際にプレイするとわかるのですが運動量がかなりのものです。※課題を挙げるとしたら、ヘッドマウントディスプレイのスポンジ部分が汗でジュワジュワになる・・・。
メタバースは幻滅期ともいわれていますが、フィットネスジャンルでのチャレンジは世界中で継続して進んでいっています。
③「教育」
そして3つ目に、教育分野。個人的には今、最も注目している分野です。
次回はメタバースのキラーコンテンツとしての教育分野について詳しくお話しします。
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