Y Combinator W24採択の注目スタートアップ

2024年4月8日
全体に公開

4月4日、5日にシリコンバレーの著名アクセラレーター、Y Combinator(ワイコンビネーター、以下YC)が、「Winter 2024 demo day」を開催しました。

YCは夏と冬の年2回、スタートアップを3ヵ月間短期集中で徹底的に支援するプログラムを実施しており、demo dayはそのお披露目の場です。

今回は採択された260社の中から、「これは面白い!」と思ったスタートアップを厳選して、ご紹介します。

サムネイル画像:DALL·E 3での生成

☕️coffee break

今回の「Winter 2024」は、27,000社以上の応募から260社が厳選採択されました

主なポイントは、

・187社がピッチでAIに言及、86社が自社をAIスタートアップだと言及

・B2B SaaS/エンタープライズが全体の65%

・女性創業メンバーは全体の21%、女性創業者は11%

業界別に公開されている247社(13社は非公開)を見ると、以下のようになっていました。

B2B:160社

消費者:26社

ヘルスケア:24社

FinTech:21社

インダストリー(特定の業界/産業特化):9社

教育:3社

不動産・建設:2社

行政・公共:2社

🍪もっとくわしく

今後の事業成長が期待できそうなスタートアップを、いくつかチェックしていきましょう。

「B2B」

Apriora:AI採用担当者

👉AIが候補者とのビデオ面接を24時間年中無休で実施します。採用要件などをもとにリアルタイムで候補者にパーソナライズした質問をしてくれるため、1次面接のスクリーニングが不要に(詳細ページ)。

Artisan AI:AI従業員

👉セールスのプロセス全体(BDR)を自動化するAIワーカー。10分間のオンボーディングを行うと、連絡先から見込み顧客を特定し、パーソナライズしたメールを送り、営業担当者との初回アポの日程確定までを行います(詳細ページ)。

Kater AI:誰もがデータアナリストに

👉自社のウェブサイトをSnowflakeなどのデータウェアハウス・サービスと接続するとすぐにデータマップを構築します。それにより、データに関することを質問すると、必要なデータが回答として得られるサービスです(詳細ページ)。

「消費者」

Lumona:クリエイターがおすすめする商品を優先検索

👉膨大なGoogle検索の結果を見た後に、さまざまなサイトのレビューを確認して回る手間を省きます。商品を検索する際に、YouTubeやRedditでクリエイターがおすすめしている商品を優先的に表示することで、最適な商品発見に導きます(詳細ページ)。

「ヘルスケア」

Sonia Health:音声とテキストの両方を活用したAIセラピスト

👉AI分野のトップカンファレンス「NeurIPS」で9つの論文を発表したMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究者チームが創業。会議でうまくいかなかったり、親しい人との口論後など、日常生活で心の整理がついていないとき、24時間気軽に認知行動療法のセッションを受けられるアプリです(詳細ページ)。

「FinTech」

Givefront:非営利団体(NPO)向け銀行プラットフォーム

👉米国だけで非営利団体は何百万もの組織がありますが、営利企業のようにさまざまな業務課題を解決するサービスは充実していません。Givefrontでは、財務・支出管理、助成金管理、コンプライアンス(年次レポート)管理、離職率管理など、あらゆる業務を一元管理できるソリューションを構築しています(詳細ページ)。

「インダストリー」

Navier AI:リアルタイム数値流体力学(CFD)プラットフォーム

👉SpaceXでロケットの開発に取り組んでいたエンジニア2人が創業。航空機の設計・分析から気象予測、医療機器の開発などにおける物理シミュレーションを、機械学習で1000倍高速化するプラットフォームを開発しています(詳細ページ)。

「行政・公共」

Hazel AI Technologies:AI活用の調達ソフトウェア

👉年間2兆ドルが動く米19,000州・地方自治体に入札プロセス改善サービスを提供。現在、企業は何千もの自治体のサイトから案件情報を見つけて、そこから入札するためにコンプライアンス・契約書作成を行うことに膨大な時間と労力を費やしています。

Hazelは案件公開・契約草案の作成・コンプライアンスチェックまでのプロセスを自動化することで、公共調達をより便利にすることを目指しています(詳細ページ)。

🍫ちなみに

YCは2023年1月に新CEOとして、ギャリー・タン氏が就任。直後に、レイター投資を実質終了する意思決定を下しました。

しかし今、20億ドル(約3035億円)規模のファンド設立に動いており、次の2年間のプログラム運営(採択企業への投資)と追加投資目的の3つのファンドを設立する予定だとForbesが報じています

市況の変動に伴い戦略を見直しましたが、自社で財務ソフトウェアを開発したことで、より効率的に株価の算定と追跡が可能になりました。これにより、再びミドル・レイターで積極的に投資ができる体制構築に動き始めています。

新CEOのもと、過去最大規模のファンドレイズに動くYC。その手腕はいかに?

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