足のむくみはこれで解消!快適な日々を過ごすための全知識

2024年3月5日
全体に公開

足のむくみは、特に女性をよく悩ませる問題の一つかもしれません。「最近足がむくみやすくなった。何か病気ではないだろうか。」そんな心配を抱える方もいるかもしれません。今回の記事では、この身近な足のむくみについて考えていきたいと思います。

むくみの生じるメカニズムとは?

まず、そもそもどうやって足のむくみは起こるのでしょうか。これを理解するためには、まず体の中にある「水」について理解をしておく必要があります。私たちの体の中に、水はどれくらいあると思いますか?

実は、人の体の約6割は水でできています(1)。例えば体重が50kgの方であれば、約30Lもの水が体の中にあるということになります。500mlのペットボトルで60本分です。もしかすると、想像を遥かに超えていたかもしれません。体のどこを見てもそんな水があるようには思えないかもしれませんが、実は体の一個一個の細胞も水を溜め込んでいるのです。

水は、細胞の中、血管の中、それらの外にそれぞれ20L、2.5L、7.5Lという程度の割合で分布していて、常にこのバランスが維持されています。しかし、このバランスが崩れて血管及び細胞の外に水が増えてしまった場合に「むくみ」となって現れます。

バランスが崩れて水が外側に漏れ出る仕組みの一つは、水自体が持つ圧力の変化です。これについて、もう少し詳しくみていきましょう。

体の中を走る血管は、全身に水を行き渡らせる水道管の役割をしています。仮に心臓と肺を浄水場だと考えていただくと、動脈はその水を各家庭(実際には各臓器、各細胞)に送り届ける上水道で、静脈は各家庭で使われた水を回収してくる下水道です。

しかし、血管が水道管と異なるのは、血管の壁には無数の小さな窓がある点です。血管は、水が簡単に漏れ出るような構造をしているのです。

ここで仮に、下水道のどこかで目詰まりが起こってしまったとしましょう。すると、どうでしょう。たちまち水道管の中の圧が高まりますよね。圧が高まると、水道管には無数の窓が空いているので、周囲に水漏れを起こします。こうして、むくみが起こることになります。

Gettyimagesより

これに加えて、もう少し理解しておくべきことがあります。それは、血液の中には、塩に含まれるナトリウムやタンパク質も含まれているということです。

血管の中を流れるナトリウムやタンパク質には、水を引き込む力があります。例えば、ある場所にナトリウムやタンパク質が多く存在すると、水はその場所に引き込まれていきます。あるいは、逆にそれらが減ってしまった場所では、水を引き込む力が失われ、水はその場から逃げていってしまいます。こんな風に、水はナトリウムやタンパク質の動きとも連動して動きます。

これを足のむくみに当てはめると、足の血管の外に過剰な塩分が漏れ出している場合には、そこに水が引き込まれ、水が溜まることになります。あるいは、血管の中にあるタンパク質の量が減ってしまうと、血管の中に水を引き込む力が弱まり、水が漏れ出していきます。このような形でも足にむくみが出ることになります。

飛行機でなぜむくみが出やすいのか?

では、続いてどのような病気がむくみの原因になるかを考えていきましょう。これは、これまでご説明してきたメカニズムを考えてみると分かりやすいと思います。

例えば、昔行った海外旅行の時のことを振り返ってみてください。エコノミークラスの座席に座り、10時間のフライトを過ごさなければならなかったとします。この時、数時間したところで足を触ってみると、足のむくみがとてもひどくなっていることに気がつくでしょう。

このように飛行機に乗る事だけでも、むくみの原因になります。ここにはいくつかのメカニズムが関与しています。

一つは、座った姿勢で足を低い位置に保ち続けていることに原因があります。重力の影響で水は体の下に位置する足の方向に移動しやすくなり、血管の圧が高まります。すると、血管の外に水が溢れていくのです。

また、足の動きが少なくなることも原因となります。足を動かすと、筋肉が伸び縮みしますよね。この足の筋肉の伸び縮みは、実は血管にとってポンプの役割を果たします。このポンプの助けによって水が心臓の方向へと汲み出されていくのです。しかし、飛行機でじっとしていると、足の動きが失われ、水を汲み出すポンプが機能しなくなるので、水がたまりやすくなります。

さらに、飛行機の中は気圧の低い環境になります。このため、周囲からの圧を失った血管から、やはり水が漏れ出しやすくなります。

このような原因が重なって、飛行機に乗ると足がむくみます。気圧の影響はありませんが、長距離バスや新幹線の移動でも同様の理由でむくみが起こりえます。

Gettyimagesより

飛行機に関連して言えば、かつて「エコノミークラス症候群」と呼ばれた深部静脈血栓症という病気も、足のむくみの原因となります。エコノミークラスで旅をするとそもそも足がむくみやすいことはお伝えした通りですが、この病気の場合には、静脈の循環が悪くなることで静脈の中に「つまり」が生じてしまいます。このつまりは、血液の塊で、血栓と呼ばれます。血栓ができてしまうと、静脈の行き先が閉鎖されてしまうので、下流で渋滞が生じ、むくみが起こります。しかし、先ほどご紹介したむくみとは異なり、片側の足で起こることが多いので、必然的にむくみには左右の差を見ることが多くなります。また、血栓ができた側の足に痛みが出ることでも区別ができる場合があります。

飛行機以外の原因。薬やピルが原因となることも。

飛行機の話題から少し離れると、足のむくみは、例えば妊娠や肥満でも出やすくなります。これは、お腹の中の胎児や脂肪の重みによって、お腹の中の血管が圧迫されることによります。これにより、下流となる足の血管で圧が高まり、水が漏れやすくなります。

また、足のむくみは薬が原因で出ることもあります。その代表例が、カルシウム拮抗薬と呼ばれる種の血圧の薬です(2)。アムロジピンやニフェジピンというような薬を飲み始めてからむくみが出るようになったという場合、それらの薬が原因の可能性があります。実際、血圧の薬が原因のむくみでご相談にいらっしゃる方は非常に多いと感じます。

加えて、ピルもむくみの原因になります。女性ホルモンには、体に塩分をため込むような作用があるので、女性ホルモンで構成されるピルを飲むと塩分をため込み、むくみが出やすくなります(3)。

これは、生理前の時期にも同じことが言え、排卵前後の時期には女性ホルモンの分泌量が高まるため、むくみが出やすくなります。生理周期に一致してむくみが出やすくなることを感じているのであれば、それは女性ホルモンが原因かもしれません。

また、アルコールもむくみの原因の代表例です。これは多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。飲みすぎた翌日、顔がやたらとむくんでいた。それはなぜでしょうか。

アルコールには、血管を拡張する作用があります。実際、お酒を飲んだ後に顔が赤らむのを感じると思いますが、それはまさに血管が拡張している証拠です。血管が拡張すると、血管の窓が広がり、水が漏れ出しやすくなります。また、お酒を飲んだ日は、塩分の多いつまみやラーメンを食べるといった習慣がある方も多く、そういった習慣も過剰な塩分摂取をへて、むくみを出やすくしているかもしれません。

病的な原因で言えば、腎臓や心臓、肝臓の働きが悪くなることでもむくみが出ます。これは、腎臓が過剰になった塩分や水分を捨てる役割を担う臓器であり、心臓が全身の血液の循環を維持するポンプの役割を担う臓器であることなどを考えればお分かり頂けると思います。いずれも、足のむくみだけで始まることもありますが、その他の症状、例えば肺にも水が溜まり、呼吸が苦しくなるような症状も出てくることで区別されます。

病院では、これらの病的な原因が隠れていないかを探していくことになります。

むくみへの有効な対処法、予防法は?

足のむくみがひどい場合、他に気になる症状がある場合には、まずは病院で原因探しをする必要があります。これはどんな症状にも言えることですが、「原因の特定なくして有効な対処法なし」だからです。しかし、軽い足のむくみだけであれば、いくつか原因を問わずにできる対処法があるのでご紹介します(4)。

先にご紹介したように、下水道の水道管である静脈の流れをよくする工夫によって、むくみは出にくくなります。

例えば、足の体操や運動をして、足の筋肉を使うことでむくみは改善します。それがポンプ機能を果たしてくれるからです。これは、飛行機に乗っている場合にはむくみ予防とともに、血栓予防という意味でも重要です。

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体操をするかわりに足の周囲から圧をかけるという方法もあります。すなわち、マッサージを受けたり、弾性ストッキングと呼ばれる強い弾力のあるストッキングを装着したりすることでもむくみは改善します。

逆に、太腿やお腹まわりに圧がかかりすぎると足の循環は悪くなり、むくみは出やすくなりますので、きついガーターベルトやベルトを避ける工夫も有効です。あるいは、先ほどご紹介したように肥満もむくみの原因になりますので、肥満がある方はダイエットも有効です。

その他に、寝ている間に、足もとに枕を置いて足を高くして寝たり、座っている間に、足おき台を使って足を高い位置に保持したりすることでも、足はむくみにくくなります。重力を活用した対処法ですね。

塩分の話に戻れば、過剰なナトリウムは血管から漏れ出してむくみの原因となりますので、塩分を控えることもむくみには有効です。塩分を摂り過ぎた翌日にむくみを感じることがあると思いますが、その逆をすれば良いのです。

このような方法を組み合わせることで、特別な治療法なしでも、軽いむくみであれば十分によくすることができるでしょう。

どのような時に病院を訪れるべき?

最後に、どのような時に病院を受診すべきかを簡単にご説明します。

まず、足のむくみとともに息苦しさが出た場合には、足だけでなく肺にも水が溜まっている可能性があります。あるいは、胸の締め付けられるような感覚や胸の痛みが出た場合には、心臓や肺の血管に問題が生じている可能性があります。これらの場合には、救急車を呼んで、急いで病院を受診していただく必要があります。

心臓や腎臓、肝臓などにすでに持病をお持ちで、むくみが悪化してきたという場合にも、病院を受診していただく必要があります。あるいは、足のむくみが比較的急速に生じた場合や、赤みが出たり痛みが出たりしている場合には、血栓ができていたり、感染が生じてしまったりという可能性があるので、やはり病院受診が必要です。

最後に、先ほどご紹介したようなセルフケアをしてもむくみが良くならないという場合にも、ぜひお近くの医療機関までご相談ください。

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参考文献

1         EDELMAN IS, LEIBMAN J. Anatomy of body water and electrolytes. Am J Med 1959; 27: 256–77.

2         Russell RP. Side effects of calcium channel blockers. Hypertens (Dallas, Tex  1979) 1988; 11: II42-4.

3         PREEDY JR, AITKEN EH. The effect of estrogen on water and electrolyte metabolism.  I.  The normal. J Clin Invest 1956; 35: 423–9.

4         Trayes KP, Studdiford JS, Pickle S, Tully AS. Edema: diagnosis and management. Am Fam Physician2013; 88: 102–10.

初出/WEBマガジン「mi-mollet」(講談社)

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