世界のソムリエが注目するのは“ドイツの辛口” 「甘い」イメージを変えた2つの変化
ワインのインポーターとして、お客様であるレストランにドイツワインをお勧めすると、こう言われることが少なからずあります。
「ドイツ? 甘いからいいや」
ドイツワインといえば、こうして「甘口」を思い浮かべる人が多いです。
私がドイツワインの取り扱いを始めた2016年ごろ、日本に輸入したワインのうち8割が甘口か中甘口。辛口を輸入する商社は4社だけでした。
それが最近は、甘口から辛口へのシフト。今回はドイツ発で起きているワイン業界の一つのトレンドをご紹介しましょう。
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温暖化でブドウがよく熟すように
ワインの甘さや辛さは、生産地の気候が影響します。ブドウがよく熟すと甘くなる一方で、寒すぎると糖度が上がりません。
欧州でワイン造りといえば、フランス、イタリア、スペインが有名です。こうした地域より北に位置して寒いドイツは長らく、辛口よりも甘口。ワインの格付けでもドイツから上位に入る銘柄は決まって「甘いワイン」でした。
それが、最近は温暖化の影響で、ドイツでもブドウがよく熟すように。果実味のしっかりのった辛口のワイン造りが進みます。
さらに、食のトレンドやライフスタイルも甘口から辛口嗜好に移り、ドイツでの辛口ワインの生産が増えています。
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格付けもフランスのように
「甘いことがいいこと」だったドイツ国内で、格付けのあり方も変わりました。
それまでは、ブドウの糖度や貴腐(白ワインのブドウで果皮が菌によって糖度が高まり、芳香を帯びること)によってランク付けされ、畑の善し悪しが反映されていませんでした。ドイツでは例えば、「辛口で品質の良いワイン」が埋もれていたのです。
それが、フランスのように畑によって格付けがされる動きに傾きました。
高品質で評価の高い生産者グループによる任意団体「V.D.P.ファウ・デー・ペー」が、信頼に足る格付けを公表。ドイツ国内でバラバラだった格付けも、このV.D.P.による畑ごとの格付けが支持され、2021年にはワイン法に取り入れられて全国区のスタンダードに。2026年には、格付けが法的に義務化されることになりました。
糖度や貴腐にかかわらず、ドイツワインもフランスのように品質のレベル感を見極めやすくなったのです。
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温暖化によってドイツでもブドウがよく熟し、糖度だけにとらわれない格付けも整備されました。食のトレンド変化も追い風に、「ドイツとえいば甘口」だったのが、いまでは約70%が辛口・半辛口が造られるようになりました。
リースリング・クアント / カール・ローウェン 2022
今回は、そんなドイツから辛口の白ワインを1本ご紹介します。
2022 Riesling Quant / Carl Loewen
収穫年:2022年
ワイン名:リースリング・クアント
生産者名:カール・ローウェン
生産地:ドイツ、モーゼル地方
品種:リースリング100%
アルコール度数:11%
残糖:12.5
シャルドネと並ぶ高貴な白ブドウ品種「リースリング」。ドイツは世界最大のリースリング栽培国です。13あるエリアのうち、最も高品質なリースリングができるのが「モーゼル地方」(下の地図上、左のキャメル色)です。蛇行するモーゼル川に沿って広がる急斜面のブドウ畑から、極上のブドウができます。
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白桃のアロマに白いバラの香り、甘やかな果実とキリッと爽やかな酸とのバランスが絶妙。後味は辛口で、後をひく美味しさに思わず笑顔になってしまう。そんなワインです。
生産者「カール・ローウェン」は、世界で高い評価を受ける伝統ある生産者で、エントリーレベルから透明感のある素晴らしいワインを造っています。しかもリーズナブル!
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ドイツの辛口を見つける方法
ここまで読んでいただいて、カール・ローウェンに限らず、「ドイツの辛口」を飲んでみたいと思われたかもしれません。
お店では「辛口」をどう見つけたら良いのでしょう? ラベルや表記に統一した決まりが無いのが悩ましいところですが、ポイントをいくつかご紹介します。
ワインの表ラベル、もしくは裏ラベルをご覧ください。
・「Trockenトロッケン」ドイツ語で辛口表記
・「Dryドライ」英語で辛口表記
・「辛口」輸入者が裏ラベルに表記
・「Classicクラシック」中価格帯の辛口ワインに使われる名称
これらの表記が見当たらなければ、
・ アルコール度数が11%位以上であることが確認できると、辛口である可能性が高いです。
今回は、「ドイツの辛口白ワイン」をご紹介しました。
世界のソムリエたちも注目するトレンドで、ドイツワインは輸出額も過去最高を記録しています。和食との相性も抜群ですので、ぜひ一度、トライしてみてください。
文:古川康子(シニアソムリエ)
編集:野上英文(MIT Sloan Wine Club)
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