ソフトバンクGがステルススタートアップ「Stack AV」を10億ドル超で買収

2023年9月11日
全体に公開

ソフトバンクグループが自動運転トラックを開発する、米Stack AV(スタックAV)を10億ドル以上で完全子会社化したことがわかりました

Stack AVは2023年初頭にステルス状態(非公開)で設立されたばかりで、今回初めて情報公開されました。

設立から間もない同社にこれほどの金額を投じた背景には、自動運転分野でのスペシャリストが集まっていることや、ソフトバンクグループ傘下のソフトバンクが物流事業を強化することが考えられます。

☕️coffee break

トラック運送業界では、日本だけでなく米国でもドライバー不足や運送の効率化、年間50万件以上の衝突事故など、さまざまな課題を抱えています。

そんな課題を解決すべく、Stack AVは​​AI×ロボット工学×クラウド技術を組み合わせた自動運転トラックを開発しています。

同社は排ガスを最小限に抑えたトラックの稼働時間を最大化することで、サプライチェーン全体を変革することを目指しているというわけです。

今回、ソフトバンクグループが高く評価した理由の1つは、創業メンバーです。

  • CEO:ブライアン・サレスキー氏
    10年以上、カーネギーメロン大学やGoogleで自動運転プロジェクトを主導したのち、自動運転スタートアップ「Argo AI」を創業
  • プレジデント:ピーター・ランダー氏
    カーネギーメロン大学、Uberの自動運転部門を経て、自動運転スタートアップ「Argo AI」を創業
  • CTO:ブレット・ブラウニング氏
    カーネギーメロン大学、Uberの自動運転部門、Argo AIなどで20年以上、ロボット工学システムの設計、開発を経験

創業者3名の前職であるArgo AI(アルゴAI)は2016年に設立され、フォードとフォルクスワーゲンから、大型の資金調達を行い、事業提携しながら自動運転車の開発を進めていました。

2021年には配車サービス「Lyft」と、5年で自動運転車1,000台の納入契約、ウォルマートと自動運転車による配送サービスの実証を行うなど、注目されているスタートアップの1社でした。

順調に事業の進捗が見られ、2022年9月には商業配送・ロボタクシー運行向けの製品とサービスのエコシステムが発表されました。

しかし、翌月になると、突如フォードとフォルクスワーゲンが追加投資を行わないことを発表しました。それにより、Argo AIの技術や従業員は両社に吸収され、異例の幕引きとなりました。

そのArgo AIの創業者が再び創業したのが、このStack AVです。業界のスペシャリストとともに運送革命を起こすべく、すでに150人もの社員が集まっています。

🍪もっとくわしく

今回、ソフトバンクGはビジョンファンドからではなく、グループ本体から投資していることは重要なポイントです。

ソフトバンクG傘下のソフトバンクは、大型車両の自動運転システムを開発するスタートアップ、「先進モビリティ」と積極的に事業連携をしています。

この先進モビリティとともに自動運転技術を社会実装すべく、2016年に合弁会社「BOLDLY(ボードリー)」を設立しました。

これにより、自動運転バスや自動運転トラック事業に本格参入したんです。

2017年からはトラックの隊列走行(先頭車両が有人運転で、後続車両が自動運転で先頭車両を追従)の実証実験を開始しました。

2020年には5Gの車両間通信・隊列制御システムを活用して、新東名高速道路で時速80kmでトラック3台が車間距離10mを維持した隊列走行に成功しました。

今回の投資はこの自動運転トラック事業を実用化する上で、技術・人材獲得など、重要な役割を果たすとみられます。

設立1年目ながら、すでに非公開の潜在顧客とともに18輪の大型​​トラックで実証実験を行っているStack AVの進捗は、かなり順調だと言えるでしょう。

ただし、自動運転業界では長期にわたって多額の資本が必要です。

ソフトバンクG傘下で集中支援を受けることで、忍耐強く事業展開を続けて、10年後にはトラック輸送業界を変革することが期待されます。

サムネイル画像:Stack AV

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