42 【手順2】「この国のかたち」を網羅的かつコンパクトに理解する〜明石書店〇〇章シリーズを読む

2023年2月13日
全体に公開

 まず、新書を読んで、「この国のかたち」について、おおよそのイメージをつかめたら、明石書店によるエリア・スタディーズ・シリーズへと読み進めることがおすすめです。このシリーズは、「〇〇を知るための■■章」、という方が伝わりやすいのではないでしょうか。日本人になじみのある、欧米やアジアだけでなく、アフリカや南米なども含まれおり、いわゆる大国だけの扱いではないという、貴重なシリーズです。価格も2000円ほどと、内容を考えればかなりお得です。

 このシリーズの特長は以下5点に集約されるでしょう

①各国・地域ごとに、だいたい、50〜60章前後で作られています。歴史、経済、政治、文化などある程度、細かく、かといって細かすぎない項目立てがされている。

②各項目が3〜4ページとコンパクトでありながらも、知っておきたいことは抑えられている。

③書き手のほどよい多様性とバランス。多くの場合、研究者だけではなく、実務家も入っている。ついでに言うと、男女比も一定のバランスが取れています。

④改訂版が出版されて、内容がアップデートされる。

⑤扱っている国・地域の数がかなりある。アメリカやフランスなど大きな国や、韓国や中国など日本との関係が深い国については、現代、宗教、大統領、政治、文学、などで分冊が組まれている

 例えば、シンガポールは65章で構成され、2021年に最新版の第5版が出版されています。概説書的な書籍は、ほとんど出版された後に改訂版が出される事はありません。なかでも第5版まで出ている国は少なく、シンガポールの需要の高さ、変化の早さを反映しているようです。

 上記のリンク先では「目次」のタブをクリックすれば、65項目をみることができます。他の国・地域も、おおよそ似たような章立てになっています。これだけの項目を、それぞれコンパクトながらも抑えておけば、最初は十分でしょう。そして、書き手は日本国内だけでなくシンガポールの大学に所属する研究者、JETROの実務家、日本語教師など多様性があります。

 アメリカについては、流石に詳しく出版されています。宗教、歴史、現代史、先住民、新時代社会、カルフォルニア、ニューヨーク、大統領、ヒスパニック、21世紀アメリカ社会と幅広く分冊が出ています。

 新書で掴んだ、「その国のかたち」を抑えつつ、このシリーズで網羅的な知識を付ける、という流れになります。電子版も出ていますから、スマホや読書用端末にダウンロードしておき、当該のテーマの話題に触れることがあれば、読んでみる、という活用も良いでしょう。

 さて、次におすすめしたいのが、地域全体像の把握です。例えば、シンガポールについて知るには、シンガポールだけはなく、地域全体のなかでどのような位置づけなのか、ということを意識する必要があります。ヒト・モノ・カネが国境を越えて激しく動く現代社会では、リージョンとして理解する必要があります。

 それならば、ここまで書いてきた手順1と手順2を国ごとにやれば良いのでは?と思いそうですが、そうではなくて、地域全体のダイナミズムを理解するためにはどうするか、が次回の手順3となります。それでは、また次回。

(バナー写真:Unsplash/Z

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