【冷笑主義とTwitter】イーロンマスク氏はTwitterを「健全な議論の場」にできるのか

2022年11月4日
全体に公開

イーロンマスク氏はTwitter社の買収にあたり、「暴力に訴えることなく、健全な方法で多様な考えが議論されるデジタル空間を作ることが重要」「従来のメディアはクリックを追い求め、社会の分断を助長してきた。対話の機会は失われている」と述べています。

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スマートフォンの普及と共にSNSの利用率は高まり、2000年代後半にはソーシャルメディアこそが民主社会を実現するメディアとして期待されていました。(*1)

しかしながら2010年代後半になると、SNS上における感情的な振る舞い、イーロンマスク氏が言及した社会分断など、ソーシャルメディアのもたらす「害」に注目が集まるようになっています。

社会では「他者に対する信頼」が重要ですが、近年の社会では信頼が失われつつあることが、複数の研究で明らかにされているようです。

ソーシャルメディアと冷笑主義

その要因の1つとされているのが、ソーシャルメディアに溢れる「冷笑主義」。Twitterをよく使っている方なら、ピンとくるのではないのでしょうか。誰かを冷笑する風潮というか、そういう空気が渦巻いているような感じがしませんか。

このような風潮(冷笑主義・cynicism)は、ソーシャルメディアに関するメディア論において、国際的・学術的に、ホットな議論対象となっています。

政治的冷笑主義が育くまれていく背景には、ソーシャルメディアが、社会の問題を熟議する場というよりも、「不作法な」(uncivil)お喋りの場としてしか機能しないためではないか、という点が指摘されています。(*2) 

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こういった議論の流れを、イーロンマスク氏は、知ってか知らずかわかりませんが、「暴力に訴えることなく、健全な方法で多様な考えが議論されるデジタル空間」を目指しているようです。

今後、どのような具体策が導入されるのでしょうか。その策によって、健全な議論の空間が作られるのかについて、懐疑的な声も聞かれます。

 

 

個人的に思うこととしては、、短期的には、大混乱は間違いないでしょう。長期的にはTwitterにおいては、氏のいう理想の言論および広告空間ができる“かも”しれません。

 

しかしながら、一度Twitterの住み心地を覚えてしまった人も多くいるはずで、特にヘビーユーザーは、新しい別の場を探すのではないでしょうか。

きっと、代替の空間を作り出す人、見出す人も出てくるはずです。

その空間が、新たな社会問題を作り出さないように、注意していかなければならないと思います。

  

 

 

 

 

全体的に、こちらを参考に執筆しました。

田中幹人、2020、「ソーシャルメディアとは何か」ソーシャルメディアの動向と課題:科学技術に関する調査プロジェクト報告書

(*1)クレイ・シャーキー(岩下慶一訳)『みんな集まれ!ネットワークが世界を動かす』筑摩書房, 2010、 ダン・ギルモア(平和博訳)『あなたがメディア!ソーシャル新時代の情報術』朝日新聞出版, 2011など

(*2) Shreeharsh Kelkar, “Post-truth and the Search for Objectivity: Political Polarization and the Remaking of Knowledge Production,” Engaging Science, Technology, and Society, 5, 2019, pp.86-106.

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