【貿易統計で視る】日本の牛肉最大輸出国が"カンボジア"だったって知っていましたか?

2023年11月18日
全体に公開

私は知りませんでした。

久しぶりの投稿になります。Shippioの田中です。

いよいよ貿易統計からビジネスや経済を紐解いていくシリーズを始めていきたいと思います。

初回のテーマは"牛肉"です。テーマを探している中で、日本最大の牛肉輸出国の一つに"カンボジア"が入っているという事実に目がとまり、調べてみました。

まずは、普段なかなか馴染みのない貿易統計について慣れていきながら、核心に迫っていければと思います。

日本の貿易統計は財務省による公開情報

日本の貿易統計は財務省貿易統計のウェブページに飛ぶことで確認することが可能です。ただ、データを処理するには貿易統計に関わるちょっとした知識が必要になります。

また、一般的に取り扱われる貿易統計情報は普通貿易統計と呼ばれるもので、財務省の定義は以下の通りです。

普通貿易統計は、我が国から輸出され又は我が国に輸入された貨物について、金額及び数量を品目別、国(地域)別等に示した統計です。一般に「貿易統計」と言えば、この普通貿易統計をいいます。

財務省

以下のように品目毎にH .S .Codeという番号が振られており、どのような製品がどれくらい輸出入されているのかを識別することができるようになっています。例えばH .S .Code 020130300は「牛肉の骨つきでないばらのもの」と定義されており、このH.S.Codeに基づいて貿易量が確認できるという仕組みになっています。

牛の肉に関するH .S .Code

まずは日本の牛肉輸入をみてみよう

まずは直感的に捉え易い日本の牛肉輸入のデータから見ていきましょう。貿易統計には主に「重量」と「金額」の2つのデータがあります。

上図は日本の牛肉輸入の重量を国別に表したものです。日本に輸入される牛肉の大半は”アメリカ”と”オーストラリア”から輸入していることが明らかですね。輸入重量はここ数年オーストラリア産や米国産が右肩下がりになっており、カナダやニュージーランド産がやや増加している様に見えます。(※2023年のデータは10月までなので年間データと直接比較はできませんが参考までに表示しています。)

輸入量が下がってきている一要因はいくつかありますが、ChatGPTに聞いてみると、次の様な回答がありました。

ChatGPTより

※最近は信頼できる出所のデータも推薦してくれるようになりましたね。

次の金額データを見ることで、一つの主要因にも気づくことができます。

金額データは、各国の輸入量に対して増加しています。これは牛肉に限ったことではありませんが、貿易は為替の影響を大きく受けますので円安の影響による傾向が表れています。2022年の各国の輸入金額はオーストラリアを除きここ10年で最大値をとっています。日経新聞の記事によれば、ミートショックと呼ばれる食肉の供給不足が牛肉だけでなく、豚肉や鶏肉にも発生している様で、これも価格の高騰に輪を掛けています。

また、この重量と金額データを使えば、KG当たりの輸入単価を計算することも可能です。

上のグラフは金額データを重量データで除したデータです。こちらを見ると、フランスやハンガリー、イタリアといった欧州各国から輸入する牛肉のKG単価が高くなっています。

欧州から輸入している牛肉は、アメリカやオーストラリアから大量に輸入している牛肉とは性質が異なることがわかります。事実欧州からの牛肉はフランス料理に使うような仔牛等、相対的に輸入量が少なく希少価値の高い牛肉が対象です。

問題の日本の牛肉輸出を視る

さて、本題です。次のグラフは2014年から2023年10月現在までの牛肉の国別輸出金額を示しています。

お分かりでしょうか?2018年から2021年までカンボジアは日本の牛肉輸出の最大の相手国になっています。

また足元のデータは各国への輸出金額は10月時点で昨年を割っているにも関わらず、カンボジアは既に昨年実績を上回っています。一国だけ特異な動きをしていると言えるでしょう。

調べると直ぐに幾つかの記事が見つかりました。どうやらカンボジアに渡った日本の牛肉は最終的には中国へ向かっている可能性がある様です。(記事1/記事2

確かに市場がありそうな中国が輸出先として統計に出てこないのは意外と言えるかもしれません。全農のWebサイトを確認すると、現在に至るまで中国へ日本産の牛肉を輸出できない状態であると記されていました。

この様な形で、貿易統計を見ると意外な事実を発見することにも繋がります。

貿易統計から新たなビジネスの兆しを見つけ出す

最後に最新の統計から、新たな動きを見つけていきましょう。2023年急激に牛肉の輸出が伸びた国があります。"サウジアラビア"です。

サウジアラビアはここ10年の貿易統計を見る限りは、2023年に初めて牛肉輸出が開始された様に見えます。10月現在でおよそ2.8億円、重量にして26トンとかなりの量です。キロ単価は1万円を超えています。

これも直ぐに記事が見つかりました。富裕層向けに神戸ビーフの輸出が始まったのですね。記事によれば、神戸市の食肉施設で処理され、「ハラール認証」を受けた神戸ビーフが輸出されているそうで、新しいビジネスを切り拓いた努力が垣間見える内容でした。

この様な形で、今後も統計データからビジネスの機会を探って行ければと思います。是非次回もご覧ください。

トップ画像:Canva/pramote-polyamates-images

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