テスラの今後は!? 2024年〜2025年の成長と革新への道のり
こんにちは、トピックスオーナーの前田謙一郎です。
先日のテスラ決算発表は多くの反響があったようでアメリカのテック系、ファイナンス系インフルエンサーたちがライブで解説をしていたり、その後、アメリカの大手メディアでも今後の株価についても多くの議論がされていました。Newspicksでも記事が出され多くのコメントがついており、改めてテスラの注目度の高さが分かったイベントでした。
それが落ち着いてから、今年・来年に起きるテスラの主要イベントについて纏めてみようと思っていましたが、Neuralinkで脳インプラントのニュースがあったり、デラウェアでの報酬パッケージの無効ニュース、その他様々と話題が落ち着くことは今年もなさそうです笑
テスラの将来については色々な憶測がされていますが、自動車だけでなくテクノロジー視点で長期的に見ると、今後もテスラはディスラプティブな変革を引き続き起こし続けるでしょう。
前置きが長くなりましたが、今回はテスラの2024年、25年のマイルストーンとテクノロジーについて纏めてみたいと思います。
2024年は2025年以降の成長の準備期間
「テスラは今、2つの成長の間にいる」イーロンの言葉通り、モデルYが世界を席巻し2023年世界で最も売れたモデルになった今、2024年は今後「Redwood」と呼ばれる一回り小さいコンパクトEVが2025年の後半にデビューするまでの準備期間になります。
このステートメントは非常に妥当であり、CFOのTanejaも生産台数は低くなるだろうと述べていました。しかしながら、Redwoodの立ち上げには様々な技術革新が伴い、これからも多くのイノベーションがテスラから出てきます。
2万5000ドルの次世代コンパクトクロスオーバーEV
以前より噂されていた次世代小型EVは「Redwood」というプロジェクト名で進められていることが明らかになりました。2023年Q4からはBYDの生産台数がテスラを抜いたことで、一気にEVの台数争いの議論が白熱してきました。
BYDが得意とするのはテスラより安価な大衆EVセグメントです。これらモデル3よりさらに一回り小さいセグメントは市場規模も大きく世界中のメーカーがEVの投入を計画しています。EVはイノベーション曲線でキャズムを超えたとされ、世界ではより低価格な普及版EVが主戦場となっていきます。
アメリカのMSM(メインストリームメディア)の常套句であるネガティブなナラティブに惑わされがちですが、世界のEV市場は拡大を続けており、それらはテスラとBYDがリードしています。この次世代コンパクトモデルについては以前、このトピックスで纏めています。
自動車製造に革命を起こす「ギガプレス」の進化
BYDは元々バッテリーの会社でありEVの製造コストの殆どを占めるバッテリーを安価にすることでその価格競争力を実現しています。テスラも同様にバッテリーの強みを持っていますが、更に注力しているのが「ギガプレス」と呼ばれる従来の自動車製造を一新する製造方法です。RedwoodコンパクトEVは車両原価を如何に下げるかが課題です。
ガソリン車には従来3万点もの部品があり、何百点もの部品を溶接やリブ止めする複雑な工程を経て、大きな車体に組み上げる方法が過去何十年も続いていました。しかしながら、テスラは車全体を巨大な一体成形で一つの部品で作り、伝統的な製造に革命を起こそうとしています。
例えば、これまでにも2022年にはモデルYで70個の異なる部品で構成されていた車の後方を立った2つの部品だけで作るような改善がされています。
このギガプレスを更に発展させ、部品点数を減らし、生産ラインを効率化、生産時間も減ることによりテスラは車両全体の価格を大幅に下げること。テスラはソフト分野だけでなく、ハードの製造技術においても、イノベーションを起こそうとしてます。
Ford、GM、フォルクスワーゲンなど多くの従来メーカーがEVを製造していますが、一台のEVを売る事に赤字になっているメーカーもあり、EVで利益を出すということは実は一筋縄でいかないという事が判明しました。
ギガプレスはテスラの躍進にとって必要な技術です。ただ、イーロンもこのギガ・プレスでコンパクトEVと作るためには「We’ll be sleeping on the line」とも述べており、道のりは簡単ではないようです。
自動運転ソフト、FSDのライセンス供与
以前、テスラのスーパーチャージャー(NACS)が北米のデファクトスタンダードになり、世界の殆どの自動車メーカーがNACSを採用することをまとめました。十数年前にテスラのロードスターやモデルSが出た当初は誰が予想できたでしょうか。
将来、これと全く同じ事が自動運転分野でも起こるでしょう。
A lot of car companies should be asking for FSD licensing. Some tentative conversations, but I think they don’t believe it’s real. ー 将来的にはたくさんの車会社がFSDのライセンシングを求めてくると思う。いくつかの会社とは話しているが、殆どの会社はまだ自動運転が実現できると思っていない。
つい先日、アメリカでは多くのテスラユーザーが待ち望んでいたFSD Beta ver.12がリリースされました。FSD12については以下の記事で纏めています。
実際のユーザーの動画からも分かるように音声認識での目的地設定からゴールまで車が実際に自動運転を行なっています。これはモデルSを発売した当時から何億マイルもの走行データや画像を収集・解析し、Dojoなどのスーパーコンピューター、AIの自動学習などにより高度にFSDを発展させてきたからこそ可能なテスラならではの技術です。
このように自社で自動運転ソフトを自社開発し、走行データを持っている車会社は他になく、現在テスラの自動運転技術は何歩も先を行っています。BYDはテスラの競合でありながら、バッテリーをテスラに納入している関係でもあります。今後はテスラがBYDにFSDを供給することもあるかもしれません。
自動運転ソフトでのプラットフォーマーになった際には自動車という概念では括れないテクノロジー企業となるでしょう。
拡大する生産能力:インド工場の発表、メキシコ工場の稼働
テスラは今後もその生産能力を拡大していき、今後はインドやメキシコ工場が稼働していきます。現在、自動車を生産している工場(ギガファクトリー)は以下です。
ギガ・上海・・・モデル3とYを生産、日本向けもここから
ギガ・ベルリン・・・ヨーロッパのメイン工場、バッテリーとモデルYなどを生産
ギガ・テキサス・・・北米のマザー工場。サイバートラック、モデルY、Redwoodモデル
そして兼ねてから建設中のテスラのギガ・メキシコ(Giga Mexico)は、2025年のQ1に車両生産を開始する予定と言われています。当初2024年後半に開始予定でしたが、経済状況を鑑み2025年初めに延期されました。
ギガ・メキシコはアメリカとメキシコ国境から約200km南に位置する4,200エーカーの敷地に建設されます。次世代コンパクトEVの量産はまずテキサスで始まりますが、軌道に乗り次第、メキシコでも生産される予定です。
そしてギガ・インディア(Giga India)に関して、インド政府は2024年1月までにインドでのテスラ工場施設を承認することを目指していると報じられてきました。すでに1月は過ぎてしまいましたが、インド政府はテスラのインドへの投資も議論していたようなので近々何らかの進展が見られると思います。
ちなみにインドの輸入車のに対する関税は高く、$40,000以下の全ての車両に60%、$40,000以上の車両に100%!の輸入関税が課されますので、インド国内で生産するメリットの方が高いのです。
そしてこのギガ・インディアにおいても前述のRedwood、2万5000ドルの小型EVが生産される予定で、インドでの拡販には現行のラインナップではもっとも適したモデルになります。
オプティマスの進化やサイバートラックも
テスラのトピックスは尽きません。テスラが開発する人型ロボット「オプティマス」も今後、進化を続けて行き、2024年には多くない台数ですが出荷されるのではと言われています。
この革新的なオプティマスについては以前にもトピックスで纏めましたが、そこからアップデート版のムービー、洗濯物を畳むオプティマスの動画が出ました。実は完全な自律運転ではなく動作をテスラ社員が指示していたということで賛否ありましたが、これはテスラ流のマーケティング手法と言ったところでしょうか笑
更に、以下はイーロンにより1月30日に公開された更に新しいオプティマスの動画。散歩するとキャプションが付けられています。
Going for a walk with Optimus pic.twitter.com/6mLJCUp30F
— Elon Musk (@elonmusk) January 31, 2024
そして、最後に駆け足になりますが、現在量産が進むサイバートラックは中国でプロダクトロードショーが始まりました。早くもすごい人気のようです。
2024年もテスラの話題は尽きない
ここまで纏めてきましたが、上記のトピック以外にも、48V、4680バッテリーセル、AI、スーパーコンピューターDojoなど話題が多過ぎで一回ではカバーしきれませんでしたので、また別記事でまとめたいと思います。
2024年も1月が終わった時点で多くの話題を振り撒いてくれるイーロンとテスラ。持続可能なエネルギー社会の実現を目指しながら、テクノロジー革新により人類への貢献も行う、こんなにエキサイティングな会社はなかなかありません。
Earning callでの広告についての質問に対し、イーロンはブランド認知が低い地域ではやるべきと発言しており、「Friends in Japan are unaware of Tesla」として特に日本の事を例にしていました。そして以下の通り、早速日本でも広告が始まったようです!
個人的にもテスラの先進性が日本でより注目されれば嬉しいですね。それではまた次回の記事でお会いしましょう。
<2024年セミナー登壇情報> 詳細はこちらから
トピックスオーナー:前田謙一郎
自動車業界アドバイザリー&コンサルタント。テスラ・ポルシェなどの外資系自動車メーカーで執行役員等を経験後、2023年Undertones Consultingを設立。
更新の通知を受け取りましょう
投稿したコメント