本編ー③ 「日本は1/3資本主義社会?」

2023年11月21日
全体に公開

今回からは、「資本主義を使いこなす」という選択をした我々が、「どのような資本主義社会を目指すべきか?」という事に関して深堀りをしていきたいと思います。まず、資本主義社会において我々個人は労働者、消費者、そして投資家としての側面を持ち、以下のように社会がグルグルと回っています。

この社会の流れ方は、その国の歴史や置かれた状況によって様々で、一言で資本主義と言ってもイロイロな形態が存在しているのが実状です。こちらは私の独断と偏見によるものですが、以下で簡単な分類を掲載してみました。

【米国】

おそらく、史上最強の資本主義国家。個人の自由を尊重し、市場原理に委ねる度合いが非常に高いため、破壊的なイノベーションを生み出す。「成功者が寄付をする」という文化によって富の再配分が一定程度行われてきたものの、最近は貧富の差が大きく拡大し、それが民主主義の機能不全に繋がっている側面も。

【欧州】

完全に市場原理には委ねず政府の関与が一定程度存在する、やや社会主義的な資本主義。税金による富の再配分が比較的機能している一方、国境を接する国からの移民問題が大きな課題。

【中国】

個人の自由には国家による制限があるもの、市場原理をある程度導入する「国家資本主義」とも言える形態。

【日本】

一応、資本主義社会と言われてはいるものの、実態は結構違う気がする。確かに消費市場においては消費者の声が強く(←モノ言う消費者?)、市場原理が働いているために素晴らしい商品がどんどん生み出されてきた。

しかし、労働市場は終身雇用を基本とした雇用制度がいまだ大勢で、従業員が辞める事も少ないため、雇用の流動性が低い。結果的に従業員の熱意が低く(←モノ言わない従業員?)、イノベーションが生まれづらい。

資本市場においては「モノ言う株主」の声を封殺してきた歴史があり、資本市場の鎖国状態。株価上昇への熱意が低い企業が多く、世界中の投資家から有望な投資先としては見られていない。

資本主義社会における3つの市場(労働市場、消費市場、資本市場)のうち消費市場にだけ資本主義が存在している「1/3資本主義社会」とも言える状態。

「1/3資本主義社会」を「3/3資本主義社会」へ

昨今は、行き過ぎた経済活動によって環境問題や社会問題が顕著になってきており、持続可能な経済システムの形を打ち出そうと、世界中の国が競っている状況です。そんな中、日本には大きな可能性があると私は思っているのです。

「利他の心」を持ち、社会と自然の調和をはかるという歴史と文化を我々は持っています。これは、昨今言われているSDGsと非常に親和性が高い考え方であり、持続可能な社会の構築に向けて日本が貢献できる分野はたくさんあるはずなのです。しかし残念ながら、「1/3資本主義社会」であるがゆえに経済力という後ろ盾が弱く、宝の持ち腐れになってしまっているのではないでしょうか?

この「1/3資本主義社会」を「3/3資本主義社会」へ進化させるために、労働市場と資本市場でどのような変革が必要になるのかを、次回は考察していきたいと思います。

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