中国テックで最も稼ぐ企業が入れ替わる
TikTokを運営するバイトダンスがアリババ、テンセントの利益を初めて上回り、中国でもっとも稼ぐテック企業となりました。
バイトダンスの2022年決算は
・売上高:約11兆3000億円(前年比+30%)
・EBITDA(税引前利益):約3兆3400億円(前年比+79%)
前年の売上成長+70%からは鈍化したものの、中国の厳しいロックダウン下でも力強い成長を遂げました。
テンセントの売上高が前年比-1%減収となったことから、売上高でもバイトダンスはJDドットコム、アリババに続く、3番目に売上高の大きいテック企業に。
今回は、そんなバイトダンスが次の事業の柱を作るべく、急速に事業の多角化を進めていますよ、というお話。
☕️coffee break
バイトダンスの売上高のうち、実はまだ中国事業が約700億ドル(約9兆3600億円)と、82%を占めています。
中国事業での稼ぎの大半は、中国版TikTokのDouyin(抖音)広告事業。
1日のアクティブユーザー数は約6億人と競合の快手(Kuasihou)の3億6600万人を大きく引き離しています。
現在、Douyinは広告事業からさらに手を広げて、食品配達、旅行予約、小売販売などのEC事業を強化しています。
2022年の流通取引総額(GMB)は770億人民元(約1.5兆円)なので、数千億円の収益を稼いでいる可能性があります。
今年度はそのEC事業のGMBがさらに2倍の1,500億人民元(約2.9兆円)を見込んでいるというから恐ろしい。
ライブストリーミングや、ショート動画で商品をそのまま購入できることが人気の秘密で、さらに割引クーポンの提供もできるため、商品の販売だけでなく、飲食店が顧客獲得のチャネルとしても活用できるんですね。
バイトダンスはこのショート動画×EC事業をグローバル本格展開に向けて動いており、東南アジア、ブラジル、スペイン、オーストラリア、さらには一部の州でTikTokが利用禁止され始めている米国でもチャンスを探っています。
バイトダンスにとっては、ダイヤの原石のような事業です。
🍪もっとくわしく
Douying-TikTokもまだまだ急成長していますが、それらだけではありません。
中国外で稼ぎたいバイトダンスは、新規事業を多数立ち上げて拡大しています。
2022年、TikTokを含む海外事業の収益は、前年の2倍以上の約150億ドル(約2兆円)となりました。その柱となりつつある注目事業をリストアップしてみましょう。
• ビジネスツール「Lark」(中国版はFeishu/飛書)
もともとはバイトダンス社内で使われていたオフィスツールで、Google Workspaceや、Microsoft 365のようなオールインワンサービスです。
2019年にシンガポールで法人を設立して、グローバルでの事業展開に動き始め、日本では翌年3月にサービスを公開しました。2022年11月には日本だけで導入企業が9,000社を超えています。
この「Lark」の中国版であるFeishu(飛書)も大成功しており、わずか3年でARR(年間月次収益)が1億ドル(約135億円)を達成するなど、SaaS企業ではグローバルトップレベルの成長スピードで拡大しています。
• ライフスタイル共有SNS「Lemon8」
2020年3月からShareeという名称で、世界に先立って日本で提供を開始しました。
写真や画像を簡単に加工できる機能を使って、ネイル、服のコーディネート、料理、旅行プランなど、あらゆるジャンルでクリエイティブなコンテンツを共有することができます。
すでに日本でのアプリインストールは1600万を超えており、その成功が東南アジアでの拡大、2023年の欧米リリースにつながっています。
• 動画編集アプリ「CapCut」
2018年に買収した「顔萌科技(FACEMON)」が開発したサービスで、ショート動画をより簡単に、リッチに制作することができます。
2023年3月には月間アクティブユーザー数が2年で2億人を突破したと発表しました。
🍫ちなみに
ところで、バイトダンスはグローバル展開に向けて、まずは日本で成功事例を作ることに注力しているケースが目立ちます。
たとえば、Lark、Lemon8、放置少女。
「放置少女」は美少女を育成するスマホRPGゲーム。2021年にバイトダンスが開発する中国のC4games(有爱互娱)を買収して以来、さらに日本展開を強化して、大ヒットに導いています。
いずれも日本で順調に立ち上がり、かなりの投資をして成功事例化したのち、他国にも進出し、事業拡大に動いているんです。
バイトダンスが日本市場をどう捉えているのか、非常に興味深いですね。
サムネイル画像:Unsplash/Henry Chen
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